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地方都市の苦闘(旅のメモ,授業のネタヒント) 投稿者:新井 明 投稿日:2010/04/20(Tue) 19:29 No.349

今春,仙台から松島方面に旅をしました。海をみて温泉につかってこようと言う純粋な旅行です。

ところが,どうしても職業柄か観察をしながらということになってしまいます。

旅の中でとても興味深かったのは,石巻市の風景です。石巻は,宮城県では仙台に次ぐ第二の都市です。でも,仙台との差はかなり開いているというのが実感です。ビルが並び建つ仙台は大都市ですが,石巻はまさに地方都市そのものという感じです。

松島をみて,仙石線の石巻駅を降りて駅前に不思議な建物がありました。ピンクの6階立ての商業ビルのようなのですが,看板に市民駐車場とあります。また,ビルの壁にには,「おいしい石巻産かき」「魅力満載石巻」という垂れ幕が下がっています。

奇妙なビルでした。着いた日は,すぐにそこからホテルへのバスが出発するので,翌日仙台に戻る時に時間を取り,街を歩きながら確認してみました。そしたら,そこはなんと市役所だったのです。

どうして駅前の商業ビルが市役所か。受付で説明を受け,謎はすぐ解けました。そのピンクのビルは,撤退したデパートだったのです。

石巻では,ご他聞にもれず街中はシャッター通り化しています。郊外には,大きなイオンモールが進出していますし,ヨーカ堂をはじめとしてロードサイド商店が展開していました。高速道路はフリーウエイでした。

駅前は旧市内からも少し離れていて商業地ではありません。それでも,駅前に進出していた「さくら野」というデパートがあったのですが,売り上げ不振で撤退。撤退にあたって,その建物と2億円を石巻市に寄付したのだそうです。

石巻市は,立替計画が進行していた新市庁舎計画を変更して,5億円でその土地を購入。(ということは「さくら野」は寄付をしても差し引き3億円はプラスとなったということでしょう。なかなかの経済合理性ですね。)それまで積み立てていた基金と地方債あわせて28億円(土地代込)をかけて市役所を移転したとのことでした。私が行ったのは丁度新市役所が開所して,業務開始した直後,まだ式典前のほやほやの状態だったのです。

市役所内部は,役所というよりデパートの売り場が寄せ集まったという感じが強く,ロビーやトイレなどは商業施設の特徴が色濃く残っていました。これは,よく言えば新しい試みですが,悪く言えば,ちょっと無理しているなという感じでした。

近くの人に「これで少しは人の流れは変わりましたか?」と聞いたところ,「そうですね,まえは切ないくらいでしたから,少なくとも今は駅の周辺は人が動くようにはなりました」と答えてくれました。

多分この動き,地元では大きな話題だったのかもしれませんが,東京では全く知らないニュースでした。偶然とは言え,百聞は一見に如かずです。地方都市の苦闘がここにあると思いました。

石巻市の挑戦がどう功を奏すか,それとも郊外化の流れは阻止できないのか,ぜひその後の推移をみたいと思いました。

ちなみに,市役所の一階はスーパーマーケットが入っていて,買い物ついでに市役所に行くことができるようになっています。市は大家さんということなのでしょう。これも新しい冒険かなと思いながら,フロアーを歩いてみました。

ほかにも,仙石線の車内の高校生の風景(腰パン高校生,ミニスカ女子高生)や,仙台郊外の広がりとその特徴(緑のない宅地化,マンション)など,面白い発見がありました。遊びながら見てしまうのは,職業病ですね。



書評:根井雅弘著『入門 経済学の歴史』 投稿者:TM 投稿日:2010/04/15(Thu) 10:32 No.348

書評:根井雅弘著『入門 経済学の歴史』(ちくま新書、2010年4月)

高校の経済に関する教科書で、経済学説史が取り上げられる場合に、出てくるのは、せいぜいスミス、リカード、マルクス、ケインズ、シュンペーターくらいであろう。しかも、そのような学説史が、教科書で後に出てくる経済分析や応用問題と関連づけられることはほとんどないといえる。
それに対して、本書でもっとも有益ともいえる部分は、いわゆる「限界革命」の学説をわかりやすく説明し、しかも経済分析的に位置付けている点である。これは入門レベルでは異例のことであるが、高校レベルでも十分教えるに値するものである。
具体的には、「限界効用説vs生産費説」から「マーシャルの価値論―需要と供給の均衡」に至る部分(p. 74-79)で、まずアダム・スミスが提起した「価値のパラドックス」の現象から説明を始めている。

「最大の使用価値をもつ物(例えば水)が、しばしば交換価値をほとんどまったくもたないことがあり、これとは反対に最大の交換価値をもつ物(例えばダイヤモンド)が、しばしば使用価値をほとんどまったくもたないことがある」

この現象を、生産費に注目する古典派の学者たち(マルクスをも含む)は説明できなかったのに対して、限界革命を担った学者たち、つまりイギリスのジェボンズ、オーストリアのメンガー、フランスのワルラスなどが、いとも簡単に説明してしまった。それは、「水は総効用は高いものの、希少性がないために限界効用が低く、交換価値をほとんどもたない。反対に、ダイヤモンドは、きわめて希少なので限界効用が高く、交換価値もきわめて高い」(本書、p. 75)というもの。
これに対して古典者の学者たちは、市場価格が生産費によって規定される「自然価格」から乖離する可能性があることは認めるが、それが一時的であるとして無視しようとした。

そこでイギリスのアルフレッド・マーシャルという「聡明な研究者」が出てきて、「この二つの学説は、時間の長さを明確にすることによって、『需要と供給の均衡』という枠組みのなかに包摂することができる」(p. 77)と主張したのである。
つまり、短期には財の供給は一定で、供給曲線が垂直となり、価格は需要曲線の位置(つまり需要曲線の縦の高さである限界効用)で決まる。それに対して長期には生産が調整され、自由な参入と競争が行われる結果、供給曲線が水平に近くなり、需要曲線にかかわらず、供給曲線の位置(つまり限界ないし平均生産費)が価格を決めることになる。
このような説明は、教科書の需要曲線と供給曲線の分析を応用して行うのがもっとも分かりやすく、それとの関係で需給曲線のシフトなどを説明すればよい。

さらに実際問題への応用でよく出てくる議論でも、このアプローチを活かすことができる。例えば、なぜジュースは同じものでも山の上のほうが下よりも高いのかという問題について、よく需要側の説明がなされることがある。つまり、山の上ではのどが渇くため高くても買う人がいるので高くなるという説明で、それをさらに供給側の独占的な要因で追加的に説明するという解説書がある。
しかし、これらは短期的説明で、長期的にはもし山の上のほうが下よりも価格がかなり高ければ、長期的には自由な参入と競争が起こり、山の上と下の価格差は結局供給側の費用の差(つまり山の下から上に運ぶ運送費)だけとなる。これが正解である。

つまり、高校の教科書や参考書の中でばらばらに説明されている経済学説史、需要供給分析、価格の応用問題などを、一貫した枠組みで説明できるというヒントを本書は与えてくれる。それに加えて、古典派の「セーの法則」とそれを否定するケインズの分析(p.229~232)といった大学入試に出た問題なども分かりやすく説明しており、いずれにしても一読に値する本といえる。
以上
TM



書評:大竹文雄『競争と公平感』 投稿者:TM 投稿日:2010/04/14(Wed) 06:08 No.347

大竹先生の最新著書の全般的な紹介については、すでに新井先生が書き込まれており、その内容に全面的に賛同します。ここでは中高で教える際にこの本をどう利用できるかを考えてみました。

書評:大竹文雄著『競争と公平感』(中公新書、2010年3月)

読みやすく面白く役に立ち、しかも最新の研究やデータを紹介している本はめったにないが、この本がまさにそれである。また伝統的な経済学と最近流行(?)の行動経済学を無理なくブレンドしてあくまで現実の経済の理解を深めようとする著者の態度にも敬意を表したい。
さて、それではこれをどう中学高校で経済を教える際に活かすかを考えたい。
まず、何といってももっとも重要な問題提起「市場経済にも国の役割にも期待しない」日本人は国際的にみて「特殊」という点を取り上げよう。
なぜ日本人は自由な市場にも国にもあまり信頼を置かないのかを、今の高校生に聞いてみて議論させるのは非常に面白いであろう。
おそらく著者が推測するような、日本社会の助け合いの習慣や高度成長期の勤労の価値観を指摘する学生はあまりいないのではないだろうか。
むしろ、予想できるのでは、市場に関する質問は、自由市場イコールアメリカ型資本主義で、日本がアメリカにようになっていいのかという質問と同じと考える学生が多いのではないか。そうであれば約半数がノーと答えたのは無理からぬことかもしれない(他の主要国はノーが3割程度)。
他方、国に関する質問は、貧困者の面倒をみる国の役割について、貧困者という点よりも国の役割という点が強く意識され、これまでの国主導(官僚主導?)でなく、これからはできるだけ国に面倒を見てもらわないようにやるのが望ましいという一般論が学生の頭に浮かぶ可能性があるのではないか。そうであればやはり半数近くがノーと答えたのはある程度理解できる。
最後の「不公平」については、日本は全体として平等主義が支配的であるが、これは世代によってかなり意識が違うと思われるので、これも高校生の意見を聞いてみることはそれ自体として興味深いのではないだろうか。

いずれにしても、著者が「学校教育の影響?」(p. 71-78)で指摘しているように、社会科の教科書で市場経済のメリットを教えていないことが、単なるマスコミ的、社会評論家的な意識で市場を見るという多くの日本人の態度に影響を与えていることは確かであろう。

最後の「経済学って役に立つの?」は、まさに中学高校レベルで経済、特に金融経済学を教える立場からすると非常に重要で興味深いテーマである。残念ながら短いエピローグで、あまり多くの点が取り上げられていないが、それでも正統的な経済学を勉強することで、行動経済学が指摘する「非合理」で損をするような行動を自ら正すことができるかもしれないという点は、学生に伝統的な経済学と行動経済学の両方を教えることができる便利で有用な方法を示唆しているといえる。
以上



授業に役立つ本 58回 投稿者:新井 明 投稿日:2010/04/04(Sun) 10:29 No.344

3月末で第一次リタイアをしました。4月1日から非常勤教員ということで新しい職場に出始めています。そのため,前任校と自宅の後片付けや家族サービス(お互い長い間ご苦労さんでしたということです)に追われ,このところ毎週書き込むことを目指していたのですが,1週飛んでしまいました。

大竹先生の新著は既に入手して読了していたのですが,紹介するのが遅れてしまいました。先生すみません。

大竹先生の新著『競争と公平感』は,中公新書での『経済学的思考のセンス』の続編となりますが,内容的には,筑摩新書の『こんなに使える経済学』とも関連があります。

内容は目次が大竹先生によって紹介されていますから,そちらをご覧下さい。大きく,競争,公平感,働きやすさの三つのテーマにくくられていますが,それぞれ小項目ごとに扱う素材が異なっており,一つ一つの素材を独立の項目として読み,利用することもできます。

例えばTの「男と女,競争好きはどちら?」や,Uの「夏休みの宿題もうすませた」などを授業の導入のエピソードとして使い,そこから授業の本論に入ることができます。私たち現場の人間の読み方の一つです。

それぞれの章の全体像と問題意識は各章のトビラの裏にまとめられています。Tでは,なぜ日本人は競争が嫌いなのか?競争の好き嫌いは何で決まるのか?競争のメリットとはなんだろうか?と三つの問題が提起されています。ここでの私たちに一番関係するのは,三番目の競争のメリットを扱った箇所です。

小項目6の「市場経済のメリットは何か?」で,日本が資本主義の国であるにもかかわらず,市場競争に対する拒否反応が強いことが示され,その原因の一つに学校教育の問題が取り上げられています。学習指導要領を紹介しながら,市場のメリットを教えることより,市場の失敗が強調されること,政府の失敗についての言及が少ないことなど,現在の指導要領や教科書の問題点がズバリ指摘されています。

なお,ここで紹介されているのは,高校では現行の指導要領です。新しい指導要領が発表され,それにもとづく教科書が編集執筆されはじめています(小学校ではすでに検定が通過しています)。大竹先生の指摘がどのように改善されてゆくのか,また問題をどう克服する実践をどうすすめてゆくかを,現場の私たちもしっかり読み取ってゆくとよいと思われる箇所です。

Uでは,競争は格差を生む。その格差の感じ方に差が出るのがなぜか?価値観や選好は,経済のパフォーマンスにどう影響するか?が問題提起です。

ここでは,神経経済学や行動経済学の成果を紹介しながら,経済学ではいままでブラックボックスだった人間の意思決定のしくみを興味深く紹介しています。また,日米のアンケート調査などから文化の差や年齢層などの要因が公平感に大きく影響することが紹介されています。

後者の問題では,団塊の世代が政治的に大きな影響力を持ち,それが所得配分の公平と関連することが説かれています。団塊の世代の私にとっては,関心のあるところです。政治の授業では,君たちが投票にゆかないと,おいしいところはみんな私たちが取ってしまうのだから,這ってでも投票所に行く人間になりなさい,と生徒には常に言っていますが,若者の投票率は低迷しています。政治教育の失敗だと私は思っています。ひょっとすると経済教育の問題より,こちらの方が深刻かもしれません。

Vでは,競争と公平感は,私たちの働く環境にどのような影響を与えているか?働きやすい環境を作るポイントとは何かです。

ここは大竹先生のご専門の労働経済学の知見が,具体的にやさしく説かれています。非正規労働者の問題,余暇や働き過ぎの問題,最低賃金制の問題,外国人労働者の問題など労働問題を考える上でのヒントがつまっています。

エピローグでは,金融リテラシーの欠落の問題を提起されて,人間はきちんと勉強しないと合理的な経済的意思決定をすることができないと指摘します。そこから,経済学を学ぶ意味を説かれていますが,納得の議論です。

この本,先にも書きましたが素材がたくさん詰まっていますから,それぞれの関心や生徒の状況などで使い方多様です。ぜひ,授業で活用してみるとよいと思います。私も,新しい職場で,生徒たちに問題提起をしてゆきたいと思っています。

ちなみに,我が家では,コラム@「薬指が長いと証券トレーダーに向いている?」が話題になりました。家族の薬指を見せ合い,早速調査しました。結果は,…,やめておきましょう。ご想像に任せますが,あたっていたことだけは事実です。



Re: 授業に役立つ本 58回 大竹 - 2010/04/04(Sun) 16:07 No.345

新井先生、すばらしいご紹介ありがとうございました。今回の本は、ネットワークでの議論をずいぶんとりいれさせて頂きました。でも、確かに新指導要領にも言及すべきでした。これからもいろいろ教えて頂ければ幸いです。



競争と公平感 投稿者:大竹 投稿日:2010/04/02(Fri) 19:45 No.343

「競争と公平感:市場経済の本当のメリット」(中公新書)を出版しました。経済教育ネットワークでお話させて頂いた内容を含んでおります。自著の宣伝になってしまって申し訳ありません。

目次

プロローグ 人生と競争
I 競争嫌いの日本人
 1 市場経済にも国の役割にも期待しない?
 2 勤勉さよりも運やコネ?
 3 男と女、競争好きはどちら?
コラム1 薬指が長いと証券トレーダーに向いている?
 4 男の非正規
 5 政策の効果を知る方法
 6 市場経済のメリットは何か?

II 公平だと感じるのはどんな時ですか?
 1 「小さく産んで大きく育てる」は間違い?
 2 脳の仕組みと経済格差
 3 20分食べるのを我慢できたらもう一個
 4 夏休みの宿題はもうすませた?
コラム2 わかっているけど、やめられない
 5 天国や地獄を信じる人が多いと経済は成長する?
 6 格差を気にする国民と気にしない国民
 7 何をもって「貧困」とするか?
 8 「モノよりお金」が不況の原因
 9 有権者が高齢化すると困ること

III 働きやすさを考える
 1 正社員と非正規社員
 2 増えた祝日の功罪
 3 長時間労働の何が問題か?
コラム3 看護師の賃金と患者の死亡率
 4 最低賃金引き上げは所得格差を縮小するか?
 5 外国人労働者受け入れは日本人労働者の賃金を引き下げるか?
 6 目立つ税金と目立たない税金

エピローグ 経済学って役に立つの?
競争とルール あとがきにかえて



授業に役立つ本 番外編 投稿者:新井 明 投稿日:2010/03/21(Sun) 18:53 No.342

昨日,ネットワークのシンポジウムが無事終了しました。連休の初日でしたが,北は北海道,南は熊本まで(だと思いますが),予想以上に先生方や出版社,予備校関係の方などが参加され,関心の高さが反映されていたかと思いました。

入試問題プロジェクトも,一区切りがついたとちょっとホッとしています。内容やこれまでの報告は別途まとめたいと思っています。

さて,役立つ本は番外編です。入試問題プロジェクトに取り組んでいる間に読んだ本で,面白かったものを紹介します。

紹介する本は,武藤康史『旧制中学入学試験問題』(ちくま文庫)です。

武藤さんという人は,肩書きを見ると評論家となっています。文学部,大学院修士終了という学歴からみると国文系の人のようですが,映画関係の翻訳をしたりひろく文化現象を追いかけている人のようです。

この本,大きく二部に分かれています。前半は,明治35年からの国語と算術(算数)の旧制中学,女学校,軍関連学校の入試問題と,その年に受験をした有名人のエピソードが紹介されています。科目は,途中から,歴史・地理,理科が加えられます。

後半は,「あの人が受けた入試問題」と題して,宮沢賢治から中村稔まで16人の受験時の問題が集められています。

前半は,とにかく昔の小学生(中学受験生)の国語力はたいしたものだったということがわかります。明治35年の鹿児島県立中学校の問題は,典売,浪費,矛盾などを読み意味を書けというものです。実はこのほかにも難読の言葉があったのですが,変換できずあきらめました。

最初の典売がくせもので,坪内逍遥編集の『国語読本』という教科書に「西班牙の皇女イザベラ,深く,コロンブスの志を憫み,宝玉類を典売して,巨額の金額に代へ,之れを,コロンブスに賜ひけり」とあるのだそうです。

こんなエピソードが詰まった本で,たしかに昔はすごかったということになりそうです。

算数,いや算術の試験には,こんな経済に関連する問題も出ています。大正6年の石川県女子師範学校第一部予備試験です。ちなみに師範の一部は,高等小学校を卒業してから受ける部門だから,今で言えば中学2年くらいのレベルかもしれません。

問題:「大正五年九月我ガ国ニテ募集シタル露国大蔵省証券ハ一箇年ノ後ニ償還セラルルモノニシテ割引歩合年六分トシテ割引ノ方法ニテ発行セラレタリ,此ノ利廻ハ如何程ナルカ。」

武藤さんの調べでは,本当にこの条件でロシアの国債が発行されていたのだとのこと。それにしても,算数の問題とは言え,なかなか経済チックではないでしょうか。ひょっとすると今の経済学部生でも出来ないのがぞろぞろいそうですね。

後半の個人別の入試では,さすがに経済学者はひとりも上がっていません。社会科学系では,政治学者の丸山眞男さんが取り上げられていて,その受験校,東京府立一中(日比谷高校)と,旧制第一高等学校,それと東大法学部の問題が掲載されていて興味を引きます。

府立一中の算数では,「額面100円株券ヲ120円デ買入レ此ノ株カラ年一割五分ノ配当ガアルト利廻リハ幾ラカ」という問題が出ています。先の石川女子師範の問題に似ていますね。定番の問題なのかもしれません。

とはいえ現在より,よほど経済教育的算数が教えられていたのだということがわかります。

第一高等学校と東京帝国大学の受験では,丸山さんは,問題を覚えていて,英語ではこんな問題が出来くて浪人したとか,帝大の作文では,こんな風に文章を書いたと座談で発言しています。

碩学にしても入試問題が一生残っているわけですね。良くも悪くも入試の問題は,その人の人生に影響を与えていることがわかります。

その意味でも,入試の出題者は,自覚をもって一生のこるようなインパクトのある問題を出題すべきでしょう。でも,こんなこと書いたら,某大学のとんでもない悪問を,一生記憶に残る問題だから良いじゃないかと言われそうな気がして,怖いですけれど。

ちなみに,私は大学入試では結構落ちましたから,出来なかった問題をいくつか覚えています。丸山さんと同じだなと変なところでうれしくなりました。みなさんはどうですか。



授業に役立つ本 56 投稿者:新井 明 投稿日:2010/03/14(Sun) 10:46 No.340

国立大学の前期入試が終わりました。週刊誌では,東大を筆頭として高校別ランキングが大々的に発表されています。

このランキング,大学が出身高校を発表しなくなってからの方が,狂騒的になったような気がします。合格者を出しそうな高校には事前に,何日の何時までに集計数を教えてくれとの依頼が来ます。予備校からも,在籍者のセンター得点などが寄せられ,その日を待つわけです。

こんなに無理をするなら,大学も出身高校を発表してしまったほうが,よほど平穏ではないかと思うのですがどうでしょう。

新聞なども,ダブルスタンダードじゃなくて実態をさらすという意味では良い様に思います。

さて,今回の役立つ本,またまた役立たない本の紹介になりそうです。

その本は,宇野弘蔵『恐慌論』岩波文庫です。先月,岩波文庫で文庫化されて刊行されました。

私と同世代の先生方なら,宇野弘蔵の名前とその影響は知っていると思います。日本のマルクス経済学の泰斗です。また,いわゆる宇野経済学の総帥として,東大社研や経済学部で大きな影響を持ち続けた学者です。

私は,大学でマルクス経済学を学んだ人間だったので,学生時代にこの本をかじったことがあります。その後,考え方を変えてから,マルエン全集を古本屋に叩き売った時に,宇野さんの本も一緒に全部売ってしまっいました。

今回,センチメンタルジャーニーとして,もう一度読み直してみようと思い,購入してみました。また,今の不況の原因となったサブプライム恐慌の分析に役立つかなという思いもありました。結果は,面白かったけれど,やっぱり「役立たない」というものでした。

「役立たない」ということには,二つの意味があり,一つは,サブプライム恐慌の分析や処方にはダメということだし,もう一つは経済教育の点では,役立つところもあるけれど無理かなというところです。

前者では,恐慌の根本的原因を,資本主義経済に内在する「労働力商品化の無理を矛盾の根源とする資本蓄積の現代的動態」(解説の伊藤誠氏)とする見解では,大きすぎて何も言っていないと思うからです。

もちろん,『恐慌論』では,賃金高騰による利子率と利潤率の乖離,そこにおける商業信用や銀行信用の問題が書かれていますが,それが現代の問題の解明に対して役立つかは疑問です。

なにより,恐慌を資本主義経済における必然として捉える姿勢は,そこにおける人間行動が抽象化され捨象されている(物象化されているため)ために,なぜ,人間がそのような行動をしょうこりもなく起こすかを考える契機がなくなっているように思います。その意味では,対策,処方の仕様がないということになります。

革命を起こして,労働力の商品化をやめればよいという論理が最終的にでてきますが,それがどのような結果をもたらしたのかは,歴史が証明しているのではないでしょうか。そんなことを改めて,確認させられました。

経済教育の点では,役立たないと書きましたが,全面否定ということではありませんでした。

宇野経済学というのは,マルクス経済学の中でもある種異端です。マルクスの方法に学びながら,原理論,段階論,現状分析という三段階で経済は分析すべきという主張をしています。この方法は,私が学んだ正統派のマルクス主義経済学からはずいぶん批判されてきたものですが,結構面白いし,役立つと思うのです。

つまり,経済教育でも,経済をみてゆく基本的な原理が一番底におかれて,それを踏まえて,歴史的現象に対しての理解や,現状をみてゆくという方法がとられるべきとと思うのです。

これまでの経済教育では,不況なら不況の現実を出して,それをなんの理論的な道具なしに説明して,だから世の中だめよという形のものが多かったと思います。悲憤慷慨社会科です。

それでは,経済ぎらいを増やすだけだし,意味はない。一方,悲憤慷慨社会科の反動として,身近で役立つものを学ばせれば良いというプラグマティック極端派も生まれてきます。これも,経済を学べば世の中で役立ちそうというイメージだけが先走ることになりかねません。宮尾先生が紹介している東大生の本などがそれに近いかもしれません(未読ですが)。

必要なのは,しっかりした原理的思考を踏まえて,現実を分析してゆくこと,その方法を学校で学ばせてゆくことではないかと思うのです。その方法のヒントを宇野三段階論は与えてくれるなと思いました。

ただし,宇野理論の全体像は,現理論で恐慌の必然性を論証し,段階論で戦争の必然性を,そして現状分析で革命の必然性を論証するのだといわれていましたので,私たちの経済教育とは異質ですが,その方法的精神は役立つと思うのです。

そういえば,方法的精神といえば,宇野さんはまだ社会主義ソ連幻想があった時代に,スターリン批判論文を書いていましたから,自分で考えるという点では筋金入りではありますね。

『恐慌論』に話を戻すと,とにかく読みにくい本です。解説の伊藤氏によれば,「弁証法的否定を重ねて積極的主張をひきだしてゆく,独特の口調」と評価していますが,結局この人は何を言いたいの,命題だけを抽出して逆にそれを論証すればよいのにと思ったりします。

このような宇野理論が,なぜ頭脳優秀な東大生に受け入れられていたのか,不思議です。難解そうにみえるから魅力だったのかとも思いました。

その延長で,小幡道昭『経済原論』東京大学出版会,という本も購入してしまいました。小幡さんは,東大経済でマルクス原論を講じている,私と同世代の,宇野派の「残党」のようです。「はじめに」と「おわりに」が面白かったので,買ったのですが,私には無駄でした。

要するに,何でこの問題を考えているかがわからないのです。宇野さんの『恐慌論』はそれでも時代と切り結ぶ切実感がありますが,小幡さんの本は,教科書でもあるせいもありますが,論理をこねているだけという感じで,無残です。

3400円損をした。でも,無駄であることを確認した意味では役立つ本だったかもしれません。ただし,「はじめに」と「おわりに」はマルクス経済学を学んだことのある人には面白いから,立ち読みをしてみるのもよいかもしれません。



Re: 授業に役立つ本 56 新井 明 - 2010/03/14(Sun) 10:53 No.341

また間違えました。57回です。(実際にこれまでの投稿分をカウントしてみたら58回になっていましたが,どこかでカウントを変えなければいけないと思っています。)



経済入門書の問題点(書評2題) 投稿者:TM 投稿日:2010/03/11(Thu) 16:11 No.338

経済入門書の問題点(書評2題)

最近発行された以下の2つの経済入門・解説書を取り上げて、いくつかの問題点を指摘したい。

1)小暮太一『子供に教える「経済学」:世界一やさしい経済の授業』
(青春出版社、2010年)
2)東京大学株式投資Agents 『東大生が書いた「」まずはこれだけ!世界の経済』
(大和書房、2010年)

経済学の基礎をきちんと学ぶことは、子供であろうと大人であろうと東大生であろうと同じく重要である。日本でそれがどうもうまくいっていない大きな理由は、一つには長年にわたるマルクス経済学の影響がいまだに残っていることがあり、もう一つはマスコミ・レベルの経済ニュースの知識を知ることが経済を学ぶことと勘違いされていることがある。
この二つの問題を例証するのが、ここで取り上げる2冊の経済入門書である。

1)まず最初の『子供に教える「経済学」』は、その題名どおり非常に平易に分かりやすく経済学の基礎と現実への応用を教えようという意図はよくみてとれる。たとえば、最初に需要曲線や供給曲線などを分かりやすく説明しているところはよい。
しかし問題は、その需給で価格が決まった後に、「需要と供給だけじゃなかった!もうひとつの原則」として、そのモノがもっている「価値」という概念を入れて、価値の違いは「売る人がそれを作るのに必要な手間と費用が違う」ことからくるのであって、その価値の上で、「需要と供給の関係で値段が多少上下する」という議論で締めくくっている。
このような議論は、おそらく労働価値説のような発想から出てくるのであろうが、子供でも大人でもよく理解できないと思われる。
その他、必要以上に「独占」の概念を強調したり、「利益率の平準化」や「低下」といったマルクス的な用語を使ったりしている点も気になるが、何といっても極めつけは、「商売をする時に・・・大きく考えると2種類のルールがあります。ひとつ目は『資本主義経済』、もうひとつを『社会主義経済』といいます」として、さらに囲みでこれを説明して、「資本主義経済は、日本やアメリカなど多くの国で採用されているルールで、国民のみなさん、どうぞ自分たちが思うように自由に商売をやってくださいというものです。一方の社会主義は、国が決めた計画に従います。誰がどんな商売をし、どのくらいモノを生産するか、国が決めてしまうんです」と述べているが、このような社会主義は今地球上に存在するのだろうか?
これを子供に教えると世界経済を間違って理解してしまいそうである。

2)二つ目の『東大生が書いた「」まずはこれだけ!世界の経済』は、主に大きなバブルの発生および崩壊として知られている事象の説明に大半が割かれている本で、Part1ではアメリカの事象、Part2では日本を含むアジアやヨーロッパの事象、そしてPart3ではバブルとは直接関係ない有名投資家たちのエピソードなどが取り上げられている。
確かにこの本では「東大生が書いた」を標榜(?)するだけあって、よく知られている古今東西のバブルのほとんどのケースが取り上げられ、それに関する説明がある程度なされているので、知識を得るには適当な本である。たとえば、「南海泡沫事件について説明せよ」という問題が出た場合に、この本を読んでおけば多少の答えは書くことができるであろう。
しかしこの本には基本的な問題があり、それはそもそもバブルとは何か、なぜ起こるのかの説明がほとんどなされていないことである。説明らしきものは、「チューリップバブル」の章で、その商品が希少であること、商品規格が標準化されており流動性が高いこと、現物取引以外の先物取引やオプション取引などが可能で、しかもレバレッジをかけることができることなどに言及している点だけである。しかしそれらがまったく不十分であることは明らかである。
そもそも、この本の中で、「キャピタルゲイン」(資本利得)という言葉が一度も出てこないのはなぜか理解に苦しむところ。インカムゲインに対してキャピタルゲインがいかに厄介な代物か、そこに投資家の期待や予想が入り込むために、常にバブルが発生する可能性を秘めていること。それ以前に、そもそもインカムゲインとキャピタルゲインの両方の合計を収益として考えるのは、時間を越えて耐久的な商品でいつの時点でも取引が可能という特性(主に金融商品がもつ特性)が必要といった基本的な説明がこの本には欠けている。
この本を読む時間があれば、むしろキャピタルゲインに対する投資家の「アニマルスピリット」がいかにバブルを生むかを分かりやすく説明した以下の本を読んだほうが100倍ましであろう。
ジョージ・アカロフ、ロバート・シラー『アニマル・スピリット』(東洋経済新報社、2009年)

TM



授業で役立つ本 56 投稿者:新井 明 投稿日:2010/03/08(Mon) 02:20 No.337

目下,期末テスト最中。そのせいか,電車のなかでも高校生が直前暗記(朝漬け)をやっている風景がみられます。これから学校は,学年末の慌しさにつつまれます。

今日紹介する本は,依田高典『行動経済学』中公新書です。

何でこの本かというと,今年の入試問題をみていたら,早稲田の法学部で期待値を計算させる問題とリスク問題が出ているのを発見したからです。

この20日には,昨年からの継続の入試問題プロジェクトの総括のシンポジウムが開かれます。その準備もかねてリサーチをしていて発見しました。

期待値の計算は,数学Aで学ぶ範囲です。数学の計算を「政治・経済」でやらせていけないことはないのでっすが,定義も紹介しないでいきなり期待値の計算は,ちょっと問題と思っています。

そんなこともあり,依田さんの最新刊の新書を購入して読んでみました。

この本,面白い本です。

内容は,タイトルどおり行動経済学の紹介本ですが,なにより依田さんの研究史がそこに書かれているからです。なぜ,行動経済学を取り組んでいるのか,その「なれそめ」から,現在の到達点まで,こんなに研究者の楽屋話まで書いている本は珍しいと思いました。

そこには,ネットワークのセミナーで講演していただいている,西村周三先生なども登場しています。

また,この本は,行動経済学が経済学の歴史のなかでどう位置づけられているかが,しっかり書かれている本です。したがって,経済人仮説にもとづく新古典経済学との対比される行動経済学の理論前提や,そこから得られる知見などが見通しよく書かれて,感心しました。これ一冊で現代経済学の動向がすべてわかるということではありませんが,少なくとも,新古典派経済学のパラダイムシフトが進行していることが理解できます。

それをどのように受け止め,新しい経済教育に組み込むかが,これからの課題だと思わせる本です。

また,前回,生徒は経済より哲学に感心や共感をもっているようだと書きましたが,この本で扱われている,経済学と時間の箇所など,物理的時間論,哲学的時間論とならんで経済学時間論の射程距離や,深さ(浅さ?)がよくわかります。生徒に紹介すると面白い箇所かもしれません。

取り扱われている項目は,概説,時間上の選択,不確実性下の選択,アディクション,ゲーム理論と利他性などで,高校生でも導入やエピソードで使える内容となっています。

つまみ食いでもいいから,使えるところをうまく既存の学習と組み合わせて生徒に考えさせてみるという試みのヒントがたくさんあります。

また,アノマリーでは禁煙が取り上げられていますが,緊急の課題となっている薬物教育などにもこの部分は参考になると思います。

さて,先ほどの早稲田の問題。出題者の期待値はどうだったのでしょうか。きっと期待は裏切られる(ほとんど出来ない,だから意味がない問題だった)ということになろうかと思うのですが,そんなことは織り込み済みの問題だったのでしょうかね。

とにかくリスク回避型なのか嗜好型なのかまで判定させる設問まではいっているこの問題。シンポジウムでも取り上げてみようかと思っています。



授業に役立つ本 55 投稿者:新井 明 投稿日:2010/03/01(Mon) 00:26 No.335

チリでの大地震。その後の津波警報と揺れ動く世界です。

2月も逃げ,いよいよ3月になります。卒業など区切りの季節です。私も,第一次リタイアを目前にして,区切りに入ります。

そんな気分のなかで,本日紹介するのは,増田悦佐『内向きの世界帝国 日本の時代がやってくる』NTT出版刊です。

なぜここでこの本を取り上げるかというと,著者の増田(ここは敬称略にしておきます)が,私と高校の同期だったからです。同じクラスにはなりませんでしたが,在学中からその存在を認知していた人物が,こういう本を書くのだという,ある種の感慨があるからです。センチメンタルジャーニーの一つかも知れません。

彼は,奥付けを見ると,現在,ジパング経営企画室シニアアナリストとなっています。要するに,現在は多分フリーの経済(証券)アナリスト,物書きを職業としています。

彼は,高校在学中は演劇をやっていて,大学に入って,活動家の一人として母校の高校紛争の黒幕として在学生を指導していたとうわさされていました。その後,どうなったのかと思っていたら,アメリカにわたり,歴史を学び,アメリカの大学教師から,日本に戻りアナリストとして幾つかの証券会社を渡り歩いて,現在になっているという経歴です。

彼の名前を認知したのは,10年ほど前に,毎日新聞の『エコノミスト』などで建設,不動産分野のアナリストとして登場したからで,私たちの世代の一つの典型的軌跡かなと感じていたからです。

何が典型かというと,大学紛争,その後のある種の転向,そして証券アナリストという時代の先端?をゆく職業へと,「華麗」な転進というところでしょうか。

この本,その視点から読むと,私たちの世代が持つ独特なにおいが漂ってきます。

目次は次のようになっています。

第1章 この金融危機を本物の大恐慌にしたかったら
第2章 経済覇権交代の法則
第3章 先進国を周期的に襲う「どん欲」症候群の不思議
第4章 ナンバー・ツーであることのファンが,愚策を採用させる
第5章 単一言語が覇権を呼び寄せる
第6章 経済覇権国の性格が激変する
第7章 ピンチはチャンス,チャンスはピンチ

最終章が内容を象徴しています。結論は単純で,要するに日本がダメだといわれているものが,実はこれからの世界では覇権を取る可能性があるという逆説が成り立つということです。

彼はその実例として,鉄道のシステムを残した日本の優位性が,都市機能の優位性になり,世界を巻き込む新製品開発の原動力になると言います。

ほんまかいなと思うところもありますが,それなりに面白くは読めます。各章にあるデータなども利用できそうです。でも,三つ子の魂ではありませんが,大学闘争世代の尻尾がいたるところに残っています。

例えば,日本農業の優位性の例として,『軌跡のりんご』を取り上げた箇所。「全共闘無頼派のような組織論で勝手気ままに,なんらかの農作物を育てていけばよい話だ」と書きます。まじめに政策などを実行するとだめになるという一種のアナーキズムです。

また,後書きには,「前回の世界大恐慌から80年,自分の誕生から60年,日本の学生運動・反戦労働者運動のピークから40年,日本の不動産バブルの絶頂から20年という重要な節目の年のうちにこの本の出版を間に合わせることができてホッとしている」とも書いています。学生運動などを書いているところは,正直です。

アメリカのネオコンが,ベトナム反戦運動転向派が多かったことが指摘されています。また,それ以前では,『経営者革命』という本を書いたバーナムが,トロツキストだったことは有名です。

彼はこの本でも,「私は,他人の思想にはどこかでいちゃもんをつけなければ気がすまない因業な性分に生まれ付いている」と書いています。その点では正直なやつです。

時代の精神というものがあるなら,全共闘無頼派の精神と,彼個人が持つ性向のミックスの本といえるのがこの本(また,彼の一連の著作)と言えるでしょう。多分,この本そんなに売れるとは思いません。なぜなら,全共闘無頼派的ポーズは,面白いけれど,それで世論を動かすことができるとは思わないからです。

何かがかけている。なんだろうと考えていたら,それは誠実さかなと思いつきました。

誠実が良いとは思えません。なぜなら,「地獄への道は善意からなりたっている」という言葉があるからです。でも人を動かすには,何かの誠実さが必要かと思うのです。

彼は,前書きでこう書きます。「知的エリートのおためごかしの忠告や提言には一切耳を傾けないことだ」と。でも,これって「クレタ人は皆うそつき」というクレタ人と同じじゃないかな。

その意味では,似たような軌跡を辿りつつも,ベストセラーを生み出している内田樹さんとの違いはどこにあるかを比較しながら,読むのも一興かもしれません。

役立つ本のはずが,役立たない紹介になっています。これも,センチメンタルジャーニーのなせる業でしょう。ちなみに,私は彼に印税を払いたくないので,この本は図書館から借りて読みました。

これも三つ子の魂なんでしょうね。

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