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教科書は間違いだらけ 山川出版社 『詳説政治・経済... 投稿者:菅原晃 北海道江別高校教諭 北海道高等学校政治経済研究会 投稿日:2009/06/17(Wed) 12:50 No.247

教科書の間違い 山川出版社 『詳説政治・経済』2009.3.1 p150 

日本の輸出が増え、経常収支の黒字が続き…日本の通貨「円」に対する信頼が高まり、為替相場は円高・ドル安になる。しかし、円高になれば、外国でドルを使用して購入する日本製品のドル建て価格は高くなり、日本の輸出品への需要は減少する。さらに円高はドル建てで購入する輸入品の価格を安くし、輸入量を増やす結果を招き、外貨が多く流出する。その結果、貿易収支の黒字幅は縮小する。その反対に円安・ドル高になれば、輸出が好調になり輸入が減少し、貿易収支は黒字に向かう。

では、検証してみましょう。同教科書p150の、円高・円安のグラフを見てください。
@85年(底値)から87年にかけて、「円高・ドル安」
A90年(底値)から94年にかけて、「円高・ドル安」
教科書の説明によれば、貿易収支の黒字幅は縮小するはずですが・・・

数字出展JETRO
実際には・・・
@85年(底値)から、87年にかけて貿易黒字は拡大。
A90年(底値)から94年にかけて貿易黒字は拡大。

教科書の説明は、まったくのでたらめであることがわかります。

貿易黒字拡大→円高→貿易黒字縮小(均衡)といった、経済の古典的解釈は、現代ではまったく通用しません。貿易黒字の振幅は、カネ(資本)の貸し借りで生まれるのです。
 
三面等価の図を見て見ましょう。
 我々が、消費せず、税金にも回さなかったお金を、貯蓄Sと言います。その国内のS(貯蓄)が、I(企業の投資)、(G−T:公債)、(EX-IM:輸出―輸入:経常黒字:海外への資金の貸し出し)になるのです。S=144兆円、それがI93兆円、G−T32兆円、EX-IM18兆円に回るのです。EX-IM18兆円は、海外へのお金の貸し出しなのです(外国債・外国株・外国社債などの購入や、外国への貸付額がEX-IM18兆円)。
 われわれが消費せずに貯蓄を増やす(S増)と,企業はモノ・サービスが売れないので,生産を縮小したり,値段を下げたり,新たな投資を控えます(I減少)。GDP(国民総生産)が減ります。GDPが減るので,我々の所得(給料)も減ります。所得が減ると,ますますお金を使うことが出来なくなります。社会全体の経済が縮小します。これを不況と言います。
貯蓄超過 = 公債 +経常黒字
(S-I) = (G−T)+(EX-IM)
 増える     増える

 左辺が増えると、右辺も増えます。不況になる(S-I増加)と、国債発行額と貿易黒字額は増えるのです。
これが、経済学の「掛け算の九九」に相当する基本中の基本、「貯蓄投資差額」「ISバランス論」です。
 教科書の説明が誤りなのは、この原理を抑えていない人が教科書を執筆しているからです。つまり、経済学をまったく知らない人が、教科書を書いているのです。

下記のブログで、このことを取り上げています。ぜひご参照ください。
『高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門』http://abc60w.blog16.fc2.com/です。



資料集は間違いだらけ 帝国書院『アクセス現代社会20... 投稿者:菅原晃 北海道江別高校教諭 北海道高等学校政治経済研究会 投稿日:2009/06/09(Tue) 19:58 No.246

帝国書院の資料集で検証してみましょう。P90 三面等価の原則が取り上げられています。

しかし、大切なのは、表面ではなく、その中身ISバランスです。三面等価の図を見て下さい。
これを載せないから、いつまでたっても、間違い記述が出てくるのです。
(S-I) = (G−T) + (EX-IM)
貯蓄超過= 財政赤字 +経常黒字
国民が貯蓄したSが、@企業投資Iであり、A政府消費・投資(G−T)であり、B(EX-IM)経常(貿易)黒字なのです。
と同時に、@企業Iへの貸付であり、A公債(G−T)への貸付であり、B(EX-IM)海外への貸付なのです。
だから、@企業投資I=国民の貸付、A公債(G−T)=国民の貸付、B(EX-IM)経常(貿易)黒字=国民の海外への貸付なのです。
これが、マクロ経済学上、最も大切な「ISバランス」式です。

そうすると、A公債=国民の財産、 B貿易黒字=資本収支赤字(海外への資本移転)となります。「貿易黒字はもうけ、貿易赤字は損」「国債は国の借金」が、根本的に成り立たないのがわかります。

国民が、所得をすべて使わず、貯蓄する(貯蓄超過)と、財政赤字と、経常(貿易)黒字は必ず発生するのです。
ここが理解できないので、同社資料集では、次のような記述になります。


「アメリカの『双子の赤字』による景気後退が世界経済に混乱を与えるp94」
「財政赤字と貿易赤字という『双子の赤字』を抱え、特に対日貿易赤字は突出p238」
「 『双子の赤字』といい、アメリカ経済を表すことばとしてたびたび用いられるp239」

 こんなことを書くから、『双子の赤字』は「悪いこと」としか理解できなくなります。これは全くのでたらめ です。「景気後退」どころか、「双子の赤字を抱え、アメリカ経済は未曽有の経済成長(GDP増=国民所得GDI増)をしている」のです。「双子の赤字」は、経済成長とは無関係なのです。

(S-I) = (G−T) + (EX-IM)
貯蓄超過= 財政赤字 + 経常黒字
 ゼロ  =  プラス + マイナス
マイナス1= プラス1 + マイナス2

「双子の赤字」とは、こうなるだけです。それは、レーガン政権下、クリントン政権前半、昨年の金融危機以前も、いつも成立していました。しかし、その間、アメリカは日本を突き放してものすごく経済成長(GDP増=国民所得GDI増)している」のです。

ポ−ル・クルーグマン『経済政策を売り歩く人々』ちくま学芸文庫2009p223
「財政赤字は一般に想像されているような怪物では決してない のであるp244」

GDPは、次のように算出されます。
@労働力×A資本×B労働生産性=GDP(=国民所得GDI)
さいころをイメージして下さい。経済成長はこのさいころを大きくすることです。
「双子の赤字」と、サイコロは、どこに関連があるのでしょうか?逆に「貿易黒字」はこのさいころのどこに関係があるのでしょうか?
「双子の赤字」も、「貿易黒字」も、サイコロの表面図であり、「サイコロ」を大きくする要因ではない のです。結果として「双子の赤字」・「貿易黒字」になるだけのことです。

帝国書院編集部に訂正を確認しようとしても、全く理解しようとしません。なぜでしょうか?

下記のブログで、このことを取り上げています。ぜひご参照ください。

『高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門』http://abc60w.blog16.fc2.com/です。



無題 投稿者:書評:「経済心理のワナ50」 投稿日:2009/05/25(Mon) 10:12 No.243

書評:「経済心理のワナ50」(「出社が楽しい経済学」再々訪)

このオープン討論室で、以前4月6日(No. 234)に、「出社が楽しい経済学」のマンガ版(宝島社、4月14日発行)を取り上げ、「囚人のジレンマ」の扱いについて、「繰り返しゲーム」の考え方を取り入れた点を評価するコメントを書きましたが、その後、同じ出版社から門倉貴史編著「経済心理のワナ50」(6月15日発行)が出版されたので、そこでの「囚人のジレンマ」を中心に内容をチェックしてみました。

門倉氏はBRICs経済研究所代表として、分かりやすい本をいくつか書いているので、期待して読んだところ、「世界的金融危機と『ナイトの不確実性』」、「結婚における『情報の非対称性』」、「小室哲哉と『ラチェット効果』」など、少々マスコミの風潮に流されている感はあるものの、学生が日常的に興味を持ちそうなエピソードを使って、経済学のいくつかの考え方を面白く説明しています。

しかしながら、「囚人のジレンマ」については、残念ながら「出社が楽しい経済学」のマンガ版以前のオリジナル版と同じ1回限りのゲームのレベルで、「サービス残業と『囚人のジレンマ』」(p. 98-99)において、2人の社員がお互いを出し抜いて「サービス残業」を結局やってしまうという話しを取り上げ、さらにこれが2つのライバル企業がお互いを出し抜いて値下げ競争をしてしまう問題と同じであるという説明で結んでいます。その上、この章の付録でもさらに「三角関係と『囚人のジレンマ』」で、お互いの約束を破って彼女に誕生日のプレゼントを送ってしまう2人の男の話しが取り上げられています。どうも「囚人のジレンマ」は、この程度のエピソードでお茶を濁すことが定着しそうです。

それではこの本の中で、公共財とフリーライダーの問題がどこで説明されているかを調べてみると、50もエピソードがあるにもかかわらず、そのどれにも出てきておらず、最も近いテーマは、「高速道路料金1000円と『コモンズの悲劇』」(p. 92-93)で、そこでは高速道路の過剰利用による混雑で、経済的損失が出るというストーリーになっています。さらにその章の付録でも「家族カードと『コモンズの悲劇』」で、クレジット(ETC)カードを家族で共有したために合計を使いすぎた悲劇が取り上げられています。

もちろんこれは基本的に、公共財とフリーライダーと同じ問題ですが、学生に分かりやすく説明するためには、ここからもう一歩進んで、公共財そのものを正面切って取り上げてほしかったというのが正直な感想です。道路などの公共財を、自分たちの負担がない限りで、できるだけ多く欲しがる地域の体質や、自分で負担すると分かるや否や一切の公共的施設の建設を拒否するNIMBY(Not-In-My-Backyard)現象など、「囚人のジレンマ」や「コモンズの悲劇」で取り上げるべき公共財の問題はたくさんあるのではないでしょうか。

もちろん、このことは本書「経済心理のワナ50」が、テーマの選び方や使い方によっては有益な参考書になることを否定するものでないことはいうまでもありません。
以上、ご参考までに。
TM



日経の社説も、でたらめ・・・ 投稿者:菅原晃 北海道江別高等学校教諭 投稿日:2009/05/17(Sun) 21:51 No.242

日経の社説でさえ、経済学を踏まえていない、「トンデモ経済」を述べています。

日本経済新聞社説 H21.5.14 
 2008年度の国際収支速報で…貿易黒字は9割も減った。海外への直接投資や証券投資による収入も減少した。外で稼ぐ日本が二重の打撃を被った格好だ。…貿易収支は28年ぶりに赤字に転じた。日本の代名詞だった「黒字大国」の座が揺らいでいる。
…米国の過剰消費のおかげで日本や中国は輸出を拡大し、巨額の対米黒字を続けてきた。その日中は米国債購入などで資金を還流させ、米国の赤字を穴埋めしてきた。…まず「外で稼ぐモデル」を再構築する必要がある。…輸出構造を見直し、成長力の高いアジアなどになどに照準を合わせたビジネスの展開をさらに進めるべきだ。…国内では…海外からの投資をもっと日本に呼び込む必要がある。日本国債を安定的に海外投資家に買ってもらうためにも…。

一見、正論のように見えますが、書いていることはめちゃくちゃです。

正しい経済学にのっとって、順番に説明してゆきましょう。
(1) 輸出は、稼ぎである。
(2) 黒字は稼ぎではない。
(3) 貿易黒字を伸ばすと、資本収支は赤字になり、海外資産が増える。
(4) 貿易黒字を伸ばすのと、海外からの投資を増やすのは、両立できない。

さて、(1)〜(4)について、続きは、以下のブログを参照下さい。「ジャーナリズムはウソ、経済学はホント」という例です。

『高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門』http://abc60w.blog16.fc2.com/  です。



無題 投稿者:菅原晃 北海道江別高等学校教諭 投稿日:2009/05/13(Wed) 22:24 No.241

次から次へと、経済新聞が、経済的な間違いを書くのですから、いったいどうなっているのでしょう?

(R)『国債入札、無難な再開 マーケット ウオッチャー 』 日本経済新聞 H21.5.13
(1)…日本は国債を増発しても、経常黒字でため込んだ国内での貯蓄で吸収できる点が強みだ。(間違い)


(2)だが経常赤字の月が出始めるなど、「貯蓄の超過幅が急縮小しており、国債増発の影響が強まるかもしれない」 (東海東京証券の斎藤満チーフエコノミスト)。(正解)

 新聞記事の前半(1)は間違い、(2)斉藤さんは正解です。

(1)「経常黒字でため込んだ国内での貯蓄」についてです。
 再三指摘しているとおり、経常黒字=資本収支赤字なので、経常黒字額=外国債、外国株、外国社債、直接・間接投資額など、外国への資金の貸し出しのことです。ですから、「経常黒字」は儲けではないので、「ため込む」ことは不可能ですし、「国内の貯蓄」には絶対になりません。 「国内の貯蓄」が「経常黒字」に回る のです。

 三面等価の図を見て見ましょう。
 国内のS(貯蓄)が、I(企業の投資)、(G−T:公債)、(EX-IM:輸出―輸入:経常黒字:海外への資金の貸し出し)になるのです。S=144兆円、それがI93兆円、G−T32兆円、EX-IM18兆円に回るのです。新聞は全く反対に書いています。

(2)経常赤字の月が出始めるなど、「貯蓄の超過幅が急縮小しており、国債増発の影響が強まるかもしれない」というのは、次のことをあらわします。三面等価の式です。

貯蓄超過= 公債 + 経常黒字
(S-I)  = (G−T)+ (EX-IM)
プラス     プラス    プラス
 ↓       ↓      ↓
減少      影響    マイナス(経常赤字)

ということです。左辺=右辺なので、右辺・左辺両方が減る中、公債を増発しても、公債に回るカネが少ない=国債価格下落→長期金利上昇→金利急騰になる可能性を指摘しているのです。

国債価格の下落=(長期)金利上昇とは、以下のことを表しています。

 満期の額面100万円の国債があります。この国債は、市場で常に売買されます。今、国債が98万円で売れたとします。利益率は、2万÷98万×100=2.04%、これが、国債の金利です。国債の人気が下がれば、98万円では売れません。(需要<供給)です。
例えば95万円に値下げして売られるとします(国債価格の下落)。そうなると、1年後に100万円手に入る国債を95万円で買ったのだから、その利益は5万円、金利は、5万÷95×100=5.26%になります(金利上昇)。
 国際価格下落=長期金利上昇とおさえておきましょう。

 ブログのネタを提供していただけるのはありがたいのですが、日経さん、しっかりして下さい!!!

以上の内容が、本日のブログ記事です。下記のブログにアップしています。

『高校生からのマクロ・ミクロ経済学入門』http://abc60w.blog16.fc2.com/  です。



金融と企業に関する2冊の本 投稿者:TM 投稿日:2009/05/06(Wed) 11:54 No.240

金融と企業に関する2冊の本

このところ経済教育ネットワークの各部会で議論されている「企業」および「金融」という2つテーマに関係する問題点が含まれている以下の2冊の本を読みました。
1)キャッシー松井『子供にマネーゲームを教えてはいけない』(講談社+α新書:2009年1月)
http://www.jbook.co.jp/p/p.aspx/3707525/s
2)『アクセス現代社会2009』(帝国書院:2009年2月)
http://www.teikokushoin.co.jp/materials/supplementary/index28.html

最初の(1)の新書本は、そのタイトルが示す教え(「子供にマネーゲームを教えるな」)を、逆説的にも投資銀行の雄であるゴールドマン・サックス証券のキャッシー松井が自分の子供のころにカリフォルニアのサリナスの農場で働く親を見て育った経験にもとづいて、子供に対して説く経済教育論を展開しているもので、その中で以下のように述べています。
『アメリカでは最近、「いかに早く金儲けをしてくれるようになるのか」を、親が子供に期待する傾向が強まっています。しかし私は、この考え方は誤っていると思っています。人間は・・・・体を使って「働くこと」が最初にあるはずです。・・・・・働く前から報酬を狙うようなやり方は間違いだと思うのです』(p. 48)
これは、特に「ものづくり」を大切にする日本では多くの人を納得させる議論だと思うのですが、その一方で、著者自身が一種のジレンマに悩んでいます。それが「企業」と「金融」の両方の問題にかかわる問題です。
それは、会社での親の働きぶりをその子供たちが見学するゴールドマン・サックス社の「チルドレンズ・デー」の後で、著者の息子が以下のように言ったとのことです。
「お母さんはいいなあ。1日中テレビを見ていてパソコンで遊んで、友達と電話で話しているのだから」(p. 50)
そして著者は、「多くのビジネスマンの仕事、とりわけオフィスワークは、幼い子供の目には、何をやっているのかよくわからないというように映るのではないでしょうか」と述べています。これは金融の分野で特にあてはまることは確かです。
したがって、金融を生徒たちに教えるのはかなりやっかいで、企業や産業を説明しても会社に見学にいっても、なかなかうまく実感をもって理解させることが難しい分野であることを教える側として認識する必要があると思われます。

次に(2)の帝国書院の「現代社会」の参考書についてですが、この中の「経済」の部分では限られたスペースながら、かなり企業と金融に関する教科書的説明やエピソードが取り上げられています。
しかし、その中でいくつかの重要な問題点があるようにみえます。もちろん篠原先生が強調されるように、市場の取引を円滑にする金融の機能といった側面が指摘されていないといったもっとも基本的な問題がありますが、それ以外にも以下のような問題点があります。

A)最初の「企業の役割と責任」の部分で、企業について、主に生産を担当しているのが企業であると述べた上で、「企業は利潤追求を目的として活動している。しかし、それには社会のルールを守ることが必要であり、社会的責任を果たすことが求められている」としている。
ここまではよしとしても、「企業活動と社会的責任」のエピソードとして「マネーゲームと企業の倫理」と称して「ライブドア事件と村上ファンド事件の教訓」を1ページにわたって説明している。その結論として、これらの事件の「功」の部分としては、株式市場を活性化したこと、ものいう株主として経営陣に業績を向上させたことなどを指摘する一方、「罪」の部分としては、「法の抜け穴的手法によって、株取引の利益を得ようとしたこと。うその発表をして、これらの情報を信じた投資家をあざむいたこと。そして企業利益のためには法を犯すこともいとわなかったこと。私たちにあらためて企業倫理とは何かを考えさせる事件となった」と結んでいる。
この結論は二重の意味で大きな問題をはらんでおり、一つはこれが「企業」の倫理の問題なのかどうかという点(生産を担当するのが企業という定義からすると、これは投資家や資本市場側の問題)、もう一つはまだ最高裁で有罪が確定していない抗争中の事件についてあたかも特定の個人を犯罪者のように描いている点(これは倫理の問題というよりも、法律の問題)。

B)最初の「GDP」の説明のところで、「フローとストック」を、水道の蛇口から出る水のフローと入れ物にたまった水のストックという形で説明しているが、そこでの具体的なストックとして、日本の国富が土地と住宅機械などの合計として示されているだけで、金融資産はネットで考えているのでまったく言及されていない。
それはよいとしても、後半に出てくる「金融の役割と責任」の部分では、フローとストックがまったく区別されておらず、通常は貨幣の役割で、フローとしての交換手段に対してストックとしての価値保蔵手段という形で教えられるところが、まったくこの部分の説明が省略されている。これは「マネーサプライ」の説明で、混乱を引き起こす原因となっており、「マネーサプライは、お金の流通量を表す指標」といいながら、「2008年6月からは、マネーサプライはマネーストックとして名称と定義が変更された」という説明になっている。

C)金融についてあまりに初歩的な説明の誤りが目立つ。例えば、日本銀行の金融政策で、金融政策とは「好況の時、市場に出まわるお金の量を減らす。不況の時、市場に出まわるお金の量を増やす」となっているが、ここで「好況・不況」は、「インフレ・デフレ」とすべき。
また、サブプライムローム問題(これが「経済」ではなく、「国際」の部分で説明されているという問題点はさておき)に関して、以下のような説明をしている。
『サブプライムローンは、借り手が返済能力の低い低所得者であるため、比較的高い金利となっており、貸し手が資金を回収できないリスクが大きい。そのため、銀行などは証券会社を通じてその債権を証券化し「サブプライムローン関連商品」として世界中の金融機関や投資家に販売してリスクを分散しようとした』
これでは、サブプライムローンが先にあって、後で証券化が考え出されたような誤解を生み、証券化が危機の原因の一つという誤った理解をもたらす恐れがある。

まだまだ指摘したい点が多くあるのですが、長くなるので今回はこれまでにしておきます。
以上、ご参考までに。
TM



授業に役立つ本 35回 投稿者:新井 明 投稿日:2009/04/29(Wed) 18:18 No.239

新学期のあわただしさもあっという間に過ぎ、ゴールデンウイークが近づいています。私の方は、母の介護問題でばたばたして、精神的にあわただしい日々でした。

ほんの少しだけれど、介護問題も見通しが立ったので、本の紹介を再開します。

今回は、ハロルド・ウインター著の『人でなしの経済理論』バジリゴです。この本は著者より訳者に注目です。山形浩生さんです。彼の訳本は、この欄でも紹介していますが、最近は精力的に経済関係の本も紹介しています。

山形さんの訳本だから紹介したわけではなく、実は、この本の原本を持っていたからです。昨年、上智大学の図書館で原本である“TRADE-OFFS”という薄い本を見つけ、借りて眺めていたら面白そうだったので、アマゾンで購入していた本だったからです。

「人でなし」というタイトルは山形さんか、編集者が付けたのでしょうが、上手い付け方というより鬼面人を驚かすたぐいで、ちょっとあざといなという感じです。

さて、この本、要するに経済的な見方で、生活上の問題や微妙な倫理問題を取り上げ、ばっさばっさと切ったものです。このような見方を一貫してとったのは、シカゴ学派のベッカーですが、本書の原本がシカゴ大学の出版会から出されているのは、ちょっと象徴的です。

取り上げられている内容は、人命の価値、喫煙・禁煙の是非、臓器売買、著作権保護、日照権を巡る争い、製造物責任などです。

この種の問題は、正面切って議論をするには幅かれるか、ヒューマニズムで押し切られるかのケースが多いのですが、著者は「冷静」にいい悪いではなく、希少な資源をいかに効率的に配分するかという経済学の発想で、費用・便益分析を用いて問題を腑分けしてゆくわけです。だから、「ひとでなしmonsterの経済学」となるわけです。

経済と倫理問題は、シカゴ学派では当然の議論だったわけですが、高校までの教育でもそれが提唱されて、旧NCEEでは“Teaching the Ethical Foundations of Economics ”という授業書が出版されていて、臓器売買などがテーマとして取り上げられています。その意味では、どれほど人々が納得しているかは別ですが、かなり普及しているテーマだろうなと判断できます。

しかし、この本の中にも書いてありますが、アメリカでも、著者ウインター氏が、母親から「ひとでなし」と言われたように、倫理問題を「人の神経を逆なで」して経済学者が分析することに対しては、日本ではもっと反対が巻き起こるだろうと思います。

実際、私(新井)が大学生に、「キミのいのちの値段はいくら?」という質問を書いてもらったところ、半数近くが、書けない、値段は付けられないと答えています。これを心情に流されるダメな議論とするか、それともこれが当然とするかで、社会問題へのアプローチは相当変わるだろうと思います。

ちなみに、シカゴ派ではなく、リベラル派でもこの種の議論はやむをえないけれど、冷静な議論として提示されています。例えば、スティグリッツは『公共経済学』(翻訳は東洋経済新報社刊)の「費用・便益分析」の箇所で、人命の価値の計算方法を留保つきですが、紹介しています。

経済学者には、「暖かい心と、冷静な頭脳」が必要だと説いたのはマーシャルですが、はたして、この種の問題は、どんな心と、頭脳で取り上げるべきなのか、皆さんが考えてみて欲しいテーマです。また、生徒に議論させるのには格好のテーマにもなるはずです。

最後に、その手の問題を一つだけとりあげ、本書の紹介をおしまいにします。
「500万ドルをかけて、昏睡状態の子供を一人、最大一ヶ月生かしておける。あるいはその500万ドルを、10人の子供にふりわけて、彼らの命を助ける手術を受けさせることも出来る。どっちを選ぶ?」



介護問題に直面して 投稿者:新井 明 投稿日:2009/04/21(Tue) 23:55 No.237

継続は力といいながら,本の紹介を一ヶ月近くできずに申しわけありません。

私事になりますが,母88歳の体調が思わしくなく,介護問題が急浮上して,ばたばた暮らした一ヶ月でした。

この間,日曜日ごとに老人ホームの見学に行くなど,知識としては持っていたけれど,いままで見えなかった(見ようとしなかった)現実の一面が見えてきました。

有料の老人ホームがいかに急増しているか。自宅の近くにこんなに沢山のホームがあったとは,問題に直面するまでは気付きませんでした。そこがほとんど満杯であること,慢性的人手不足であることなどもだんだんわかってきました。

また,ホーム経営には,福祉法人だけでなく異業種からの参入も多く,規制緩和との関連も見えてきます。

母の問題は,まだ解決の方向が見えませんが,この間の経験をまた,報告したいと思います。



Re: 介護問題に直面して 新井 明 - 2009/04/29(Wed) 18:12 No.238

今週の週刊「ダイヤモンド」が「介護地獄からの脱出」という特集を組んでいます。

早速購入。一読,よく調べてあると思いました。私が実感したこととほとんど同じです。

この雑誌,中学入試をあおっていろいろ情報を流していましたが,今度は団塊世代の親向けの介護問題ですか,と思うと少々癪ですが,役立ちました。

88歳にこんな情報を見せてよいのかと思いつつ,入院中の母に差し入れてきました。中間報告まで。



金融リテラシーに関する2冊の本 投稿者:TM 投稿日:2009/04/20(Mon) 11:24 No.236

金融リテラシーに関する2冊の本

最近発売された以下の2冊の本にざっと目を通してみました。
1)勝間和代著『勝間和代のお金の学校』日本経済新聞出版社(4月14日)
2)藤田勉著『はじめてのグローバル金融市場論』毎日新聞社(3月30日)
なお、それぞれ副題は、(1)「サブプライムに負けない金融リテラシー」、(2)「金融リテラシーを身につける」となっていて、いずれも「金融リテラシー」が強調されています。さらに、この2つの本の共通点は、竹中平蔵氏がからんでいることで、(1)では1時間目(第1章)の先生が竹中氏で、(2)では本の監修者として竹中氏の名前を冠しています。

さて、この2つの本の大きな違いは、同じ「金融リテラシー」という言葉を使いながら、それが「狭義」と「広義」の意味に分かれている、あるいは(1)が「ハウツーもの」に近い意味であるのに対して、(2)では「金融市場の仕組みの理解」という意味に近い点で違っています。

具体的に、(1)の勝間和代著の本では、竹中氏が「世の中の大きな動きの中での金融」を論じている1時間目以外の時間(章)は、「投資信託を使う資産運用」、「株式投資術」、「金融から未来を考える(投資でのCSR評価について)」といった内容になっているのに対して、(2)の藤田勉著の本では、「米国金融危機」、「地球規模のバブル経済」、「日米バブル比較」、「資本市場と企業経営」、「金融資本市場の必要性」といった金融資本市場や金融制度の仕組みや働き(またその問題点)などを説明しているといった明らかな違いがあります。

この違いを、(2)の本の中で、著者の藤田氏が、「狭義の金融リテラシー」(金融に関わる専門知識や専門的分析手法)対「広義の金融リテラシー」(経済全体を含む金融市場に関わる総合知識)として分けてとらえており、さらにそれらを説明する上で、竹中平蔵氏の議論を引用して、前者を「天井のある勉強:人生を戦うための武器としての勉強で、一定の水準の達成が目標」に対して、後者を「天井がない勉強:人間力を高めるための人と人を結ぶための勉強で、到達すべき目標が明確でない」として対比させています。

もっと簡単にいえば、(1)の狭義の金融リテラシーは、いわゆる「パーソナル・ファイナンス」という授業で教えられるべき「ハウツーもの」の一部であるのに対して、(2)の広義の金融リテラシーは、「経済学」や「金融論」で教えられるべき「社会科学」の一部であるといえるのではないでしょうか。
したがって、小中高校で教える資産運用や株式ゲームなどは、それがパーソナル・ファイナンスの一貫としての「ハウツーもの」として教えられるのか、後々きちんと経済全体の仕組みを学ぶための準備として現実の経済に興味を持たせ、経済的な考え方や発想を育てるために行われるのか、という教える側の姿勢が重要と考えられます。その、それぞれについて、どの段階でどのように教えるべきか、それとも教えるべきでないかといった議論が必要と思われます。

TM



「出社が楽しい経済学」再訪:マンガ版について 投稿者:TM 投稿日:2009/04/06(Mon) 12:42 No.234

「出社が楽しい経済学」再訪:マンガ版について

2月15日(No. 223)に大竹先生が以下の本について投稿されました:
「出社が楽しい経済学」(吉本佳生編、NHK出版、2009年1月10日)
その後、この本の内容をもとに、以下の解説本が出版されたことは皆さんお気づきのことと思います。
「マンガでわかる!出社が楽しい経済学」:別冊宝島(吉本佳生監修、宝島社、2009年4月14日)

通常は、マンガ解説本の内容は、元になった本よりも少ないか悪い場合が多いのですが、このマンガ版の内容には、少なくとも一つ例外があります。
それは「囚人のジレンマ」の章(第9話)で、元の本では、具体例として「僕と先輩がA子ちゃんに誕生日プレゼントを贈ることについて、2人とも贈るとお互いに相殺しあって無駄になるので、2人で約束して何も贈らないようにするが、抜けがけでどちらか1人が贈ればそのプラスが大きいので、結局は約束は守られず、2人ともプレゼント代だけ損をして終わる」という、どうも無理な設定であまり感心しない例だけが強調されています。
これに対して、マンガ版では、上の例は簡単に説明した上で、むしろ主な例としては、弁当を売るライバルの2社が値下げをするかどうかを検討するストーリーで、結局「同じ業界の末長い付き合い」を重視して、値下げをしない決断に至るという例が取り上げられており、その解説として、繰り返しゲームの状況では、「しっぺ返し戦略」をとるのがベストであるため、最初は協調して約束を守り、もし相手が約束を破ったら、その次にはこちらも破ることで報復するという戦略をとるべきという説明がなされています。
この説明は元の本でも簡単に文章でなされているのですが、マンガ版ではこれを具体例にして強調しているのが評価できると思います。

さて、以上の例の意味することですが、経済教育ネットワークで広く取り上げられている「公共財ゲーム」について、マンションの修繕の例がどうも先生や生徒の間で理解が難しく、しかも実際にやってみてもどうもうまくいかない場合も多いとの意見が出されています。例えば、以下の経済教育ワークショップ「福岡」(2009年3月)の要旨:
http://www.econ-edu.net/modules/news2/article.php?storyid=67
ここで、新井先生によると「模擬授業では、ゲームの仕組みを理解すればするほど、フリーライダーが増えるという、当初の予想とは異なった結果となったが、参加の先生からは、フリーライダーになることによる損失額をもっと強調したらよい等の意見をいただいた」となっています。

このような結果になった一つの可能な説明は、もともとこの公共財ゲームの例は、マンションの住民の間でのゲームという設定なので、先生も生徒も一回限りのことでなく、末永くつきあう設定の中で起こることと考えがちで、繰り返しゲームの「しっぺ返し戦略」をとるためと考えられます。
つまり、まずとりあえず協調してみて、様子を見るという戦略をとるので、マンションのように永く付き合わなければならないコミュニティでは自然な選択と思われます。
それを無理やり(?)一回限りで「食い逃げ」的にただ乗りできるゲームの説明をしても、具体例がマンションの修繕なので、行動は変わらないのではないでしょうか。

したがって、やはり具体例として、顔の見えない不特定多数が構成する社会での公共財の例(例えば、広く社会一般のために警察や橋や下水を作る)を考えれば、よりフリーライダー的な行為が出てきて、公共財と政府の役割を理解しやすいかと思われます。
その上で、マンションの修繕の例を取り上げ、なぜ行動の違いが出てくるのかを生徒たちに考えさせるというステップを踏めば経済社会現象に対する理解が格段と深まるのではないでしょうか。
以上、ご参考までに。
TM

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