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出戻り非常勤日記 50 投稿者:新井 明 投稿日:2016/12/04(Sun) 09:37 No.1306

 この日記も50回。
 退職教員の記録であり、教育の現状の記録になるといいなと思いながらもう少し続けてみようと考えています。今回は11月後半の記録。

11月某日
 一日閑居。上智準備などをする。

11月某日
 本日も閑居。夕方、ママが通院のため孫2の面倒をみる。

11月某日
 小石川に出校。
 少し早めに出て、いつもの社会科老人クラブで昼食とコーヒー。授業は国際経済、貿易の個所。必修の授業でも扱っているので、ポイントを列挙するだけで入試問題などを検討する。
 終了後、東京部会のためにネットワーク事務局へ。
 夏の教室で購入した教科書を事務局に運び込んでもらったので、箱をあけて整理する。教科書はどんどん変化してゆき、それをきちんと保存するのは意外と大変。資料として活用できればいいのだが、死蔵されて廃棄ということになってしまわないようにしなければ。
 東京部会は、参加者が少なかったが、逆に全員に一言の報告、近況、取り組んでいることなどを語ってもらった。少人数の場合は、こんなスタイルの運営もいいものだ。

11月某日
 午後から上智講義。
 今回は、倫理の応用、テーマの部分。アイヒマン裁判のロールプレイを行う。映画『スペシャリスト』を編集したNHKビデオを見たうえで、アイヒマンが有罪かどうかをグループで話し合わせるという構成。
 倫理の授業で、検察官がカント、弁護人がニーチェという設定でシナリオを作っているが、リアぺでは、裁判そのものインパクトが強く、倫理的な観点から討議が少なかったというコメントがでてきて、確かにそうだよなと感心した。
 アイヒマン裁判は、企業犯罪、組織犯罪などの事例など現代的テーマでもある。もっと練り直して、教材としての完成を目指したいと思う。

11月某日
 兄より電話。出席した老人ホームの「保護者会」で出た話題を聞かされる。
 要するに、人手不足が深刻化して、入所者の事故が増えているという話である。たしかに、入所以来6年がたつが、新しいヘルパーの方が増えているなと感じている。ベテランになると新規に開業するホームに指導役として出てゆき、その穴を若手で埋めているという状況のようだ。
 入所者も入れ替わりがあり、手がかかる高齢者が増えているとも思う。母も、入所当初はヘルパーの方の手伝いで、タオルの整理をしたり、周りの入所者と話をしたり、車いす生活ながらも結構動いていた。今は、ひねもす本を読むだけで、活動力は低下している。
 母のようなあまり手のかからない、おとなしい入所者はどうしても後回しにされがちある。とはいえ、人手不足が急速に改善されるわけではないでの、訪問回数を少し増やす必要が出てくるかもしれないという話を兄とする。
 それでも、情報公開で、危機的状況の一端を開示してくれただけでもいいのかもしれない。

11月某日
 老人ホームにでかける。
 前日の電話があったからということではなく、予定の日だったが、それでもどんな雰囲気か確認も含めてでかける。
 さすがに、情報公開をした後だったこともあり、しっかり、それなりのケアをしてくれていた。一番それがわかるのは、何を着ているかである。高齢者は寒がりで厚着、着重ねをしている。そのあたりの塩梅、加減は長期に見ているヘルパーでないと難しい。本日は、持ち込んでいる衣類のなかでもうまく組み合わせて着せてくれていた。
 ちょっとほっとして帰宅。いずれは、われわれの姿である。

11月某日
 小石川に出校。45分授業である。
 帰宅して、孫2のお迎え要請がある。ちかごろわからんちんになって、手を焼いている。本日は、道の歩行者用の白い線の上を歩きたいと要求して、危険だからダメと言われたらへそを曲げて動かなくなった。
 こんな時は実力行使だが、こだわりが強い性格はよくも悪くも大変だ。でも、彼らが日本を背負うのだと思うと、エネルギーをつぶさないようにしなければと思ったりする。
 ちょっと大げさか。

11月某日
 一日間居。
 上智準備のかたわら、篠原先生から「これ面白いよ」といわれたポール・オイヤー『オンラインデートの経済学』NTT出版、を読む。
 この本、タイトルは少々キャッチーであるが、内容は、現代経済学のトピックを扱っているしっかりした本。情報の経済学、行動経済学、ゲーム理論などの一端がこれで学べる。離婚後、再婚相手をオンラインデートサービスで相手を探した著者の体験を基にした本である。なんでも挑戦して、それを一書にしてゆく行動力はたいしたもの。

11月某日
 休日。本日も授業準備など。
 夕方に、老人ホーム訪問。行けるときに行った方がよいという判断。ヘルパーに簡単なお菓子の差し入れを持参する。ちょっとした心遣いも必要と思う。でも、なかなかその距離感が難しい。

11月某日
 東京で雪が降る。
 11月に雪が降るのは1962年以来という。その時中1だったのだが、覚えていない。温暖化が逆にこんな天気をもたらすのかとも思う。
 小石川に出校。少し早めにでたので、大きな混乱はない。電車も前日から予報されていたこともあったのか、少しの遅れで走っていた。
 夕方にはあがり、孫2のお迎えをする。夜はおでんであった。冬だなあ。

11月某日
 上智に出講。教室が校舎5階で、その廊下から見た富士山がきれいである。前日の雪もあり、空気が澄んでいたのだろう。夕焼けの富士で、しばし見とれる。
 本日は、いのちの授業。生命倫理の授業の話をする。生老病死、人生にかならずともなう出来事をいかに授業のかたちにするかが問題である。ニワトリを殺して食べたり、豚をかったりというスタイルもある。先端医療、臓器移植などの問題もある。出生前診断などのきびしい選択問題もある。とにかく、内容豊富で整理をどうしてゆくのか、毎年悩む部分でもある。
 今年は、7月に起こった相模原障害者施設の事件も取り上げた。また、前回のアイヒマン裁判に絡んで安楽死問題なども取り上げた。内容のインパクトもあり、今回のリアぺにはかなり深い内容のものが多かった。
 杉田先生曰く。今日のは良かった。

11月某日
 名古屋部会出席のために名古屋へ。
 昼は、名古屋駅ホームできしめん。新幹線ホームの店は満員なので、在来線ホームの店まで足を延ばす。
 部会の前に、弓矢先生とお話しをする。商業科のビジネス経済という科目の内容が経済学そのものでどう教えたらよいかという相談である。
 たしかに指導要領や教科書を見ると、とんでも科目になっている。対応は、わかりやすく教えるために最近の経済学のテキスト(これが結構いいものが出ている)を読み直す、映像など活用できる資料を探す、根本的には指導要領の改変にむけて働きかけるなどの提案させてもらった。
 部会は、13名参加。東京から塙先生もはせ参じて、実践報告が3本あり活発のうちに終了。懇親会に参加して、10時過ぎに帰宅。
 名古屋は近い。

11月某日
 休日。恒例のホーム訪問。
 合間に、森絵都『みかづき』を読む。
 この本、千葉の塾の話。塾の先生と経営者の夫婦とその子供たちの話。正規の学校が太陽であるなら、塾は月であるというところから付けられたタイトル。場所が習志野であり、学校の雰囲気、それに対する個人塾が大きくなってゆく軌跡など、小説敵には面白いものであった。
 ただ、用務員が放課後に子どもたちに教えるなどどこまでリアルなのか、「おちこばれ」というような表現が昭和30年代終わりのところで出てきたり、細かいところが気になった。これも、教員ならではの感覚だろう。
 夫婦や子供たち一族など、人間を扱った小説と読めばよいのであって、教育や塾をめぐる情報小説としてみるとちょっとなあという評価である。

11月某日
 小石川に出校。
 期末考査に出題予定のエッセイの書き方についてレクチャーする。
 最初に結論、論拠を三つ、そしてまとめの3・3の法則で書けばOKと紹介し、具体例としてこれからの世界をあげる。
 これからの世界は分裂に向かうという結論でスタートしたら、生徒から、逆もありますよね先生と突っ込みが入る。なぜ?と聞いたら、情報の発達で、分裂を超える可能性も出てくるんじゃないですかという。若い生徒は、柔軟だと感心。彼が、どんなエッセイを書いてくるか、楽しみ。
 ちなみに、エッセイは事前に出題を教えて、考えておけ、というスタイル。

11月某日
 いのちの授業のリアぺで推薦されていた、小説を読む。
 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』というSF。映画『ブロードランナー』の原作で、推薦者曰く。映画よりこちらの方が人間とは何かを考えさせてくれる。
 映画は見ていたが、原作は読んでいなかったので早速アマゾンで購入。昨日注文したら、その日に届く。これでは普通の本屋さんはかなわない。
 原作は、映画とはちがった落ち着きがある。映画は映像で引っ張られるところがある。「わかもと」の広告などが頭に焼き付いているが、原作はアンドロイドと人間の区別、人間同士の差別などをシンプルに提示をしてある種のわかりやすさがある。
 教材とし使えるわけではないが、古典になるものの面白さがあった。

11月某日
 午後、クルマのディーラーに行く。
 今使っているクルマが10年たつので、もう少し小型のものを買おうかという話になり、そのリサーチ。
 夫婦2人。時々孫と娘。だから5人乗りでいい。普段は家のまわりのみ。だから軽自動車でもいいのだが、帰省で高速を使うことがあるので、エンジンは大きい方がよい。
 なかなかぴったりのものが見つからない。探索コストを少しかけても探してみることができるのがリタイア人間の特権。
 本日、岩波の信山社が倒産との新聞報道。学術書が売れない。アマゾンのようなネット本屋にも負ける。時代がどんどん変化していることがわかる。
 信山社は好きな本屋さんだったので、再開してほしいものだ。





Re: 出戻り非常勤日記 50 新井 明 - 2016/12/04(Sun) 10:00 No.1307

訂正:映画の名前は『ブレードランナー』



出戻り非常勤日記 49 投稿者:新井 明 投稿日:2016/11/19(Sat) 22:17 No.1305

11月某日
 早くも11月。
 ある人から突然の会見を申し込まれて、自宅近くの店で会うことになり、場所と時間を指定したのだが、私が1時間時間を間違えてすれ違う。携帯電話を持たないので、自宅に戻り間違いを確認して再度、指定の場所に出向く。
 こんなすれ違い、昔は結構あったのだろうと思い、ちょっと腹立たしかったが自分自身を納得させる。
 だいたいすれ違うこと自体がボタンのつけ違いで、オファーされた話は結局お断りすることになる。こんなこともあるものだ。

11月某日
 曇りで寒い。娘と孫2が来宅。本日は泊まり。
 孫2のパパが海外出張中で、母子で休日を過ごすのは大変だろうということで、実家に避難してきたもの。妻ははりきり、いろいろと準備をしている。親になったが運の尽きというが、孫がうまれてもそれは続くようだ。

11月某日
 晴天の休日。
 近くの公園に孫2をつれて散歩。公務員住宅の一角に小さな公園がある。そこの住宅の一部が売却されたのか、それまで整備されていた公園が近頃荒れ放題だったが、やっと少しきれいになったので、そこで遊ばせる。
 ついでに、鉄棒にぶらさがったり、滑り台をやったり、ブランコにのったりして童心に帰る。幼児と年寄りは親和性があるのだ。ただし、さすがに鉄棒でぐるりと回ったら目が回りそうになった。これは年寄りの冷や水。

11月某日
 午前中に思い立って床屋に行く。
 いままで通っていた店がもう閉店かとおもったら、建て直し床屋さんのコーナーを再開した。それを知っていたので、そこに行くのが一番だとは思っていたのだが、今回ははやりのチェーン店にゆく。
 カットだけをお願いして900円。いままでの床屋さんにゆくとカットだけというのは申し訳ないのでフルコースにすると3800円。なんだか究極の選択という感じである。今回だけはごめんなさいということで「裏切り」を選択。極めて短時間、安価である。
 出戻り生活で時間コストは安くなったが、生活コストも下げるのが合理的だが、ご近所の好というネットワークも断ち切りがたい。
 午後は、上智に出講。本日のテーマは経済。
 金融知識テストをやり、経済と倫理の話をする。いのちの値段というきわどいが重要な話も入れる。今回も詰め込みすぎ。一つ一つをじっくり語るには半期は短いと思うが、これも経済である。

11月某日
 午後から弘前に。
 社会科教育学会出席のため。新幹線を使う。学会は本日からだが、一日目はキャンセル。夕方弘前につき、風呂をゆっくり浴び、懇親会を終えた杉田、金子両氏と合流。翌日の発表のための打ち合わせ。
 といいつつ、本当は津軽三味線の生を聞きたいがための陰謀会議。若い?女性の弾きてであったが、じょんがら節やよされ節などを生で聞く。脈々と続く伝統を感じる。

11月某日
 弘前。朝から寒く、雪が舞う。初雪だそうだ。
 午前中に発表。作戦ミスで、経済教育のグループに入れられて発表のモチベーションが下がったが、杉田先生の営業努力もあり約20名が参加。私は、はじめて原稿を用意してそれを読むというスタイルで5分の持ち時間を7秒オーバーで終了。金子、杉田先生と続く。お二方とも3人で20分という制約を逆手に取る迫力があるいいプレゼンテーションだったかと思う。
 質問や意見を4人ほどいただき、発表は成功。予稿集の同種の発表を読んでみたが、われわれの陰謀集団のものが、理論、実践の両面で一番ではないかとこれは自画自賛ではなく、本当にそう思う。
 終了後、すぐに弘前駅に移動。レインボーニュースの取材準備で地元の先生とお目にかかる。これも帰りの列車の時間があり、30分で切り上げざるを得ず、帰宅。
 帰りの新幹線は満席。19時過ぎに帰宅。夕食は自宅で食べられる。
 弘前滞在、18時間の旅であった。

11月某日
 晴れて風強し。小石川に出校。
 本日は金融の話。4人全員が出席。

11月某日
 自宅で蟄居。その間にホームに母訪問。
 上智の準備をすすめる。今週のテーマは哲学、倫理。その手の本を書棚から引っ張り出して読み直したりする。
 日本では倫理という名前の科目で哲学史を教えている。それがなぜなのか、哲学はどうして教えられないのか、道徳と倫理とどちらが大事なのかなどの話をするための準備である。
 ヨシタケシンスケという絵本作家の『りんごかもしれない』「ぼくのにせモノをつくるには』という二冊の本を孫2の家から借りてきて、これを素材に哲学の授業が組みたたれれないかなどという話をしようと考える。
 道徳教育が科目化されたり、高校でも道徳をやれという圧力がかかったりしているが、本当に必要なのはしっかりした哲学教育ではないのかというのが現在の心境。とはいえ、おまえに哲学が語れるかといわれたら、アウトなので、高校までの教室で哲学はむりだろうなと思ったり、考えたりする一日。
 そんなことより、今日の夕食何食べる?というのが妻の問いである。

11月某日
 こがらし一番が吹く。
 夕方から上智に行く。教育学科の非常勤講師との懇親会に出席のため。
 懇親会の前に、図書館により昔の経済学のテキストをチェックする。日本では経済学のテキストにいつごろから機会費用概念が登場しているかを確認するため。
 学部学生用に所蔵されている図書を見た範囲では、1970年代の近代経済学の入門テキスト(例えば、千種義人氏のものなど)には機会費用が登場していない。完璧な文献調査ができるわけではないが、1980年代になって、学部教育段階で機会費用がやっと登場するのかなというのがおぼろげながらの印象である。
 懇親会では、教育学科の先生たちや公民科教育法を一緒にやっている同僚の非常勤の先生とお目にかかり情報交換をする。生活算数に関しても専門の先生に教えていただいたり有意義な晩であった。
 アメリカ大統領選挙でトランプ候補当選。「もしトラ」が「まじトラ」になってしまった。世界はどうなるという感じである。とはいえ、堤未果さんの『政府はもう嘘をつけない』を読んでいたので、そういうことも起こるなとは感じでいた。サンダースとトランプはメダルの裏表、サンダース支持者がクリントンに投票しなかったということだろうということで、自分を納得させる。

11月某日
 前日寒かったのでコートを着ていったら、暖かくなり空振り。
 小石川では3時間。金融を語る。
 東洋経済オンラインで朝比奈なおという人が教育困難校のルポを掲載している。実態をよくフォローしているので感心。
 ルポによると、1980年代に高校生だったツッパリ組が今の親になっていて、学校に対しては否定的な感情を持っているという分析をしている。その象徴が困難校の卒業式の親の服装でわかるという。ツッパリ系はその雰囲気で出席。不適応系の親は普段着でひっそりという感じ。不登校系の親は式にふさわしい服装だが低所得層が多いのではという推定をしている。
 子供の貧困が問題になっているが、社会や子供だけに注目するのではなく、世代の継承という点からみると確かにそうかもしれないという感触はある。
 ルポによると、内閣府の『子ども・若者白書』平成27年版に実態分析があるという。これは読まなければ思う。今はネット上で簡単に読めるのでこういうところはありがたい。

11月某日
 上智に出講。本日は哲学。内容を絞り込んだつもりなので、それなりにすっきりした話になったかもしれない。中間レポートを回収。一週間かけて点検、返却をする予定。
 終了後、杉田先生、卒業生と反省会。杉田先生が、倫理を教えるインセンティブを得たと言ってくれたので個人的には満足。

11月某日
 昼に国立高校の卒業生の親の会に出席。
 これは10年前の卒業生の親との懇親会が続いているもの。少人数になったが、それでも毎年一度お目にかかって楽しいひと時を過ごす。生徒たちは31歳になった。
 「まだやっているの」と娘に言われたと参加者の言。もっともだ。子供は卒業したが、親が卒業していないのかもしれない。とはいえ、こんな会が続いているのも有り難い。本日は、昔のクラス通信の一部を印刷して持参。
 高校2年生のクラス日記を抜粋したものだが、結構哲学的なことを書いている。ちょうど前日上智で哲学教育の可能性を話したところなので、特にそんな部分が目についたのかもしれない。
 予定時間をオーバーして話し込んだので、夕方からの陰謀会議には遅刻。公衆電話から杉田先生にかけたのだが、あいにく電車の中だったらしい。それでも公衆電話からの着信があったという記録をみて、これは遅刻だろうなと推測してくれていた。
 陰謀会議、今回は神奈川の黒崎先生も参加。陰謀が少し広がった感じ。弘前の総括、今後の研究、実践の方向を話し合う。さしあたり、私は大学での実践と理論研究、金子先生は財政とリンクする主権者教育の理論と実践を、杉田先生は子供の貧困と選択の経済学の理論と実践に取り組むこととする。三匹のおじさんではないが、三人の陰謀会議、ますます盛んになるか。

11月某日
 はれのちくもり。老人ホーム訪問。衰えはみられるがいまのところ安定。

11月某日
 経済教育学会の学会誌が到着。
 昨年の大会で講演をした北大の橋本努先生が講演のまとめを書いている。そのなかで、「あなたの経済倫理は何型?」というテストをやった結果が書かれていた。経済教育学会の会員はかなりかわった志向のようだ。最後に橋本さんが「近代卓越主義」という最近の若者に多い類型がテスト参加者で一人だけいたと紹介していた。
 実は、その一人が私である。へー、と笑ってしまって、橋本さんの本を引っ張り出してその型を見てみたら、橋本先生も分類に困ってしまっている型のようだ。
 ともあれ、若者に多いということで60代の私がそれに近いものを持っていると知って、正直驚いているし、でもそうなのだろうなという感慨もいだく。
 これからは私のようなタイプが大量に出てくるとすると、先駆者として誇ってよいのか、日本はこれでだめになると思うのか、微妙である。
 午後は、小石川に出校。45分の授業をして、そそくさと帰宅する。

11月某日
 蟄居の日。
 上智のレポートを見る。昨年からはじめた試みであるが、最終レポート一発で評価することに比べると、レポートの質が上がってきていることがわかる。やはり手をいれると若者は確実に成長することがわかる。
 合間に、授業準備。アイヒマン裁判を取り上げるので、先月買ったアーレントの『責任と判断』を読む。アイヒマン裁判は、何度取り上げても切実な思いを抱く。ただし、私はアイヒマンほど「優秀」ではないだろうなとも思う。
 今回はどんな反応がでるか楽しみ。

 これで11月は半分過ぎた。この間借りたり買ったりした本を挙げておく。
 ・宮部みゆき『希望荘』小学館。新たな探偵小説。シリーズで主人公は妻と離婚して探偵業をはじめている。現代の一部を切り取るエンターテイメントだと思う。
 ・朝井リョウ『何様』新潮社。朝井の本は私は読めないが、これは興味深く読んだ。特にタイトルになっている「何様」は面白い。企業の面接官になった人物の思いをえがいたもの。現代の若者、さきほどの「近代卓越主義」の類型の若者の生態と意識が良く書かれていると思った。でも、朝井の小説をお金を出して買おうとは思わない。
 ・長沼伸一郎『経済数学の直感的方法』ブルーバックス。講談社のPR雑誌に紹介があって気になっていた本。図書館がいれてくれたのでぱらぱらと通読。基礎編は面白かったが、その先は関係ないやという感じで眺めた。経済数学を本格的に学ぼうという人間にとってはおおよその見取り図がわかるので便利なほんかもしれないが、生活算数のレベルの新井君には必要なし。
 ・村上由美子『武器としての人口減社会』講談社新書。著者はゴールドマンサックスなどを経て今はOECDの日本のオフィスに勤めている人。人口減は成長のばねにできるというのだが、吉川先生の本とはちがい楽観的なのが気になる。そもそこ投資銀行にいたことをあんなに肯定的にとらえてよいのかというのが根本的な違和感。
 ・小塩隆士『18歳からの社会保障読本』ミネルヴァ書房。社会保障、財政問題などに関してエコノミストの知見と考え方をかなり正直に書いている本。図書館から借りてざっと読んだが、手元に置きたいと思い購入した。関心のある人一読あれ。厚生労働省がやろうとしている年金教育のからくりやおかしさがよくわかる。ネットワークのエコノミストの先生方がなぜあれほど年金教育の欺瞞を憤っているのかを知りたい先生向け。
 ・ハーシュマン『離脱・発言・忠誠』ミネルヴァ書房。数年前に購入していたのだが、本箱の後ろでほこりをかぶっていた本。主権者教育の見直しのために読み直してみたら、実に面白い。内容もそうだが、ハーシュマンの経歴にあらためて注目。
 ドイツ生まれのユダヤ人。ロンドンのLSEに留学、スペイン内戦時にはPOUMというトロッキスト系の組織の一員で戦い、その後イタリアに渡り反ファシズム運動に加わりながら学位を取得。さらにフランス陸軍に参加、ドイツ軍の捕虜になることを回避するためにマルセイユに脱出、そこで亡命者の救済活動を行う。そして、最後には自分も亡命者としてアメリカにわたるという経歴である。
す さまじいの一語。本の中身よりこちらのほうがすごい。とはいえ、本も参考になる。主流派経済学が持つ言説や条件などを見直すきっかけになるような指摘が数多くだされている。政治と経済の関係を考えるうえでヒントが詰まった本のようである。もう少し精読したほうがよいなというのが読後感。
 ・寺井公子、肥前洋一『わたしたちと公共経済』有斐閣。公共経済学の最新のテキスト。初学者向けで記述は丁寧。陰謀集団が依拠する経済理論を確認するにはとても手ごろな本。選挙制度、財政問題、年金問題もしっかり書かれている。これをテキストにして勉強会をやってもよいかと思われる内容。自学自習にも対応できるので、一度手に取って見られると良い。

 出戻りなのに、多忙な半月であった。これがまだ続きそうである。




出戻り非常勤日記 48 投稿者:新井 明 投稿日:2016/11/07(Mon) 09:03 No.1303

 遅ればせながら、10月後半の日記です。

10月某日 芝居を見に行く。
 大学時代のサークルのOB会もかねて、役者を続けてきた後輩が出演するゴーゴリの『どん底』(劇団昴)を見に行く。私が所属していた演劇サークルでプロになったのは彼一人で、何年かに一度観劇をかねてOB会をやる。今回は、岐阜からもメンバーが集まった。
 『どん底』は名前を知っていたが見たことがなかったので、事前に文庫本を買って予習をして臨んだ。劇団の練習場所でのアトリエ公演で、昔のサークル時代の小劇場公演を思い出した。『どん底』は、群集劇でストーリーらしいストーリーがないという評だったが、宿屋の亭主殺しと、宿屋に集まる落ちぶれ者たちのそれぞれのエピソードがつまった劇だった。後輩は、男爵役でいい味をだしていた。
 予習では、ルカという巡礼者に注目していたが、はきだめに舞い降りたイエスのイメージで、救いとなる人物だなあと芝居をみてあらためて感じる。ルカは教師の理想かもしれない。
 劇がはねて、懇親会。楽しい一日だった。

10月某日
 小石川に出校。
 本日は国民所得の箇所。45分の授業であるが、これを教えて何になるかを考えながら教えている。高3なので相当ハイレベルの話ができるが、受験のために受講している生徒たち(一部は単位をそろえるため仕方なくという生徒もいる)にとっては迷惑な暴走かもしれない。

10月某日
 夕方から落語を聞きに行く。
 卒業生の亭主が三遊亭好太郎という落語家で、その縁で時々でかける。今日は妻と一緒。
 落語は、前座の若手の「呑酒器」もおもしろいがやはり若手。師匠の話は、歳の功、研鑽の蓄積の違いだろう、味がある。当日の「心眼」という話は、あとで聞くと語り下ろしだったそうだが、いい話だった。「禁酒番屋」は酒好きの師匠の持ち味が十分出ていた。
 この日のびっくりは「ペーソス」という四人組のバンド。おやじの哀愁をうたうこのバンドは本当に面白いというより身につまされる。なかでも、末井昭というひとは、かつて白夜書房という「あやしげな」本屋の編集者だったひと。むかし、名前を知っていた人物が、このような形で活動しているのに出くわすのも何かの出会いである。のけぞる演奏だった。
 帰りにおもわず販売していたCDを買ってしまった。
 落語流の成熟でご隠居さんをめざすか、ペーソス流の徘徊老人となるか、そろそろその分かれ目だなあと思う一日であった。

10月某日
 風呂場の工事が来る。
 家庭の風呂場(ユニットバス)の床がはがれて気になっていた。全部変えるにはお高いので、修繕をやりますよという広告があった店に依頼して床の張替を頼む。
 張替かとおもっていたら、表面を削って防水塗料を吹き付けるという工法で、結構大事でびっくり。周りを囲い、乾いては塗りを三回繰り返すのだそうだ。朝一で来て、昼過ぎまでかかる。終わったら見違えるようになった。
 家でもそうだが、一度作ったもののメンテナンスは大変。公共財も同じであろう。

10月某日
 一日閑居。
 レインボーニュースの原稿の整理、メルマガ原稿の構想、授業準備などで過ごす。こんな一日があることがリタイア人間のメリットである。

10月某日
 動いた一日。
 午前中に小石川に出向き健康診断を受ける。非常勤講師でも対象としてくれるとのことでありがたいこと。現役の時は面倒だとしか思っていなかったが、リタイア後は、健康診断などは結構な金額だ。それだけ正社員は見えない形で保護されているということがわかる。
 社会科「老人クラブ」と歓談と昼食の後、東洋大学に出向く。栗原先生から、アメリカのJCEEが出したDEEPという経済教育の資料を拝借するため。機会費用の探索のための資料調査である。時間をみて読んでみようと思うが、幸いなことに、矢島鈞次さん(当時東京学芸大学)たちの手で翻訳がされている。それも拝借。英文をよまなくてよくなったが、それでも対照の必要はあるだろう。
 夕方からは上智。講義のまえに図書館により、サムエルソンの経済学の2,3,4版が所蔵されている図書館の検索と紹介状の依頼を頼む。結果として、一橋の経済研究所すべてがあることがわかったが、紹介状はなくてもよいとのことでびっくり。ありがたいことだ。
 講義は、経済の一回目。日本で経済教育が人気がないのはなぜか、経済教育は教育になじむのかなどをグループ討議をさせる。テーマ設定が抽象的だったこと、時間が十分にとれなかったこともあり、生煮えで終わったのが残念。とにかく詰め込みすぎの90分。
 終了後、受講生と反省会。
 一日よく動いた。少々オーバーワークで風邪気味になる。

10月某日
 一日勉強漬けの日。
 午前中に陰謀会議、昼は古本の探索、午後は経済学寺子屋、終わって伝統継承の会。
 陰謀会議では、学会発表の準備、授業実践の生徒の反応と総括など真剣に討議を行う。こんな真剣な討議や検討ができるのはありがたいことだ。
 寺子屋では、ベテランと若手が集まり、財政をテーマとしてレクチャーと質疑を行う。財政ではやはり公債の償還問題、持続可能性の問題が話題となる。経済学の知見をどのように授業で落とし込めるか、課題が見えてくる。あとは、若い先生たちの頑張りだ。
 伝統継承の会は、風邪気味なのではやめに引き上げさせてもらう。月1のペースでのこの種の勉強が続けられれば、ぼけている暇はないなと感じる。

10月某日
 午後から、息子の自宅に出向く。
 孫1の入学祝いの本を持参。まだ本当の入学は先だがランドセルをもう買ったとのこと。小さな子がランドセルを背負うと、背負うのではなく背負わされているという風景。はやいものだ。
 孫1が入る予定の地域の学校は単学級のようで、幼稚園より小規模になりそうだとの話。それっていいことなのか、あまりありがたくないのか微妙な話である。
 風邪気味なので早々にひきあげ、夜は早く寝る。

10月某日
 中間テスト中で小石川は休講。
 エアステーションを購入に行く。老人を食い物にするということで話題になったショップである。いつもここでPC関係をそろえていた。今回いって驚いたのは、店のレイアウトがかわってハード製品を売るコーナーが半減、のこりはPCの相談コーナーになっていた。いまやハードは飽和状態、サービスで生き延びるしかないのだろうと思わせる光景であった。
 エアステーションを変えたら、接続の不安定さは解消した。この間、メールの不具合からはじまり、ずいぶん手間暇がかかったが、これで少しは安定するか。いや、安定してもらわなければ困る時代になった。

10月某日
 天気が悪く一日閑居+老人ホーム訪問。
 メルマガ原稿や、買ってきた本などを読み散らす。上智のリアぺの整理なども行う。ホームの母は、変化なし。この安定がいつまで持つかである。

10月某日
 晴天になったこともあり、国立へ。
 一橋の経済研究所に出向く。国立は10年間かよった場所なのでお隣さんお大学の構内は勝手知る場所でもある。それでも、かつて図書館は紹介状がないとだめ、経済研究所などは恐れ多くて近寄れない感じであった。それがいまやここまで開放されているというのでちょっと感激。
 構内では、大学祭の準備が進行中、看板などがたっていた。兼松講堂の入り口では学園祭実行委員会の面々が集まって準備をしている。学園風景はいいものだ。
 肝心の調査は成功。三冊の経済学のテキストを借り出し、該当箇所を検索。わかったことは、機会費用概念は第4版までは登場せず、第5版ではじめて登場するということ。第5版は1961年出版なので、経済教育のなかで機会費用概念が市民権を得てきたのは、この段階からとわかりかける。あとは、周辺の文献調査で固めることが必要になる。これはゆっくりやればよい。
 経済研究所では、都留重人氏の戦前の資料の展示をしていた。以前やったイベントの部分展示。興味深く見たが、ここまで資料を見に来る人間はいないだろうなと思う。開放してもこんなところがちぐはぐ。

10月某日
 小石川に出校。
 ひさしぶりに授業を行う。2時間クラスは財政から金融に入る。1時間クラスも同じスピード。今日は肩の力を抜いて、受験講座に徹して、授業を進める。死亡者もでるが、このくらいのスピードが生徒が求めているものなのかと思ったりする。
 授業後、神田経由で東京部会へ。
 部会では、年次大会の構想と実践紹介がある。今回は実践が5本でて、全部を検討しきれなかった。実践がこれだけ出てくることは、東京部会は新しい段階になってきたように思う。この勢いを持続できるといいなと思う。
 懇親会はオーバーワークだったので失礼して、終了後すぐに帰宅。

10月某日
 寒い。気温16度、雨。上智の講義。
 経済の2回目で、シミュレーションを二つ紹介する。一つは、おはこのオークション(MV=PT)のもの、もう一つは公共財ゲーム。学生が書いてきた経済に対する疑問に答えたりたり、アベノミクスの解説なども入れたのでやはり時間がオーバー。検討時間が足りず公共財ゲームはもったいなかった。
 それでもリアぺを見ると、体験的学習に対する的確な意見が多く、参考になる。学生はみるところはきちんと見ているのだと思う。

10月某日
 孫2の面倒をみる。パパが海外出張なので休日は母子で実家に避難。
 散歩に連れ出したら、図書館に行きたいと言い出す。歩いて図書館までいって絵本のコーナーに行く。本を読みたいのではなく、本のカバーの色が気になるようで、お気に入りの青の本を引っ張り出してゆく。
 帰りに小学校があり、そこのグランドをみたらサッカーをやっている。見たいと言い出し、グランドへ。グランドのわきにジャングルジムやブランコがあり、それが目に入ったら遊ぶと行ってしまう。保育園の一つ上の子たちがいたので、その子たちも含めて一時間近くそとで遊び、やっと連れ帰る。
 帰宅したら、どこまで行っていたの心配された。寒い中、こどもは元気だが、としよりは大変だ。

10月某日
 本日も孫2のお相手。
 前日の小学校にもう一度ゆきたいというので、連れ出す。本日は野球チームが練習をしていた。それを見ながら、遊ぶ。ただし、今日はお仲間がいなかったので、つまらなそう。子供は同じ子供がいることで楽しさが倍化するのだろう。おとなも同じか。
 夕食をたべさせて、帰宅。嵐の二日間であった。

10月某日
 朝から結構多忙な一日。
 孫2を保育園に連れて行き、娘を駅まで送り、その後、小石川へ。
 授業後、神田経由で、杉並へ。神田では古本まつりをやっていた。買う気はなかったのだが冷やかしをしていたら、二冊ほど注目の本があり購入。それをもって、自然食品の店までゆき、フェアトレードのチョコレートを購入。実物教材である。
 そこから、地下鉄に乗り、杉並へ。お世話になったFPの人たちとの歓談の会が「まん月」というソバ屋であり、そこに出席。前回は夏の会、今回は秋の会で4回目。
 本の話、歌の話、映画の話、ホテルの話、歴史の話、世界情勢の話など話題は尽きない。そんな話と(私はあまり飲めないが)全国の名酒とお蕎麦、ぜいたくな会だった。こんなネットワークもよいものだ。

 これで予想外に動いた10月も終了。最後にこの間読んだ本の一部をメモしておく。
 ・佐和隆光『経済学のすすめ』岩波新書。今回の一番のおすすめ。ご存じ経済学の制度化という言葉を普及させた佐和先生の総括的経済学のすすめの本。とはいえ、日本の中途半端な経済学の制度化の現状、国立大学の法人化を巡るごたごたまでマイナス現象もしっかり書かれている。結論は、人文知と批判精神の復権、モラルサイエンスとしての経済学の復権ということであり、共感を持つ。
 ただし、違和感もある。あとがきにある「ゆがんだ制度化の桎梏から経済学を解き放ち、教科書化された経済学を学びつつ、豊かな人文知と旺盛な批判精神に満ち溢れた人材を育成する」という記述一つとっても、矛盾とつっこみどころ満載である。大学時代に一番知的興奮を感じたのが鈴木鴻一郎の経済原論であるなどの記述はヘーと思ったりした。にもかわらず、この本は面白い。
 ・カルロ・レーヴィ『キリストはエボリで止まった』岩波文庫。神田にいった時に岩波の信山社にはいってふらっと買った本。著者はまったく未知の人物だった。以前、プリ−モ・レーヴィの『休戦』岩波文庫を読んで大変感心していたので、レーヴィという名前で手に取った本だったが、収穫。両者ともイタリアトリノ生まれのユダヤ人であるが、カルロの方は、反ファシズム運動で捕まり、1935年からイタリア南部のアリアーノというところに流刑なる。その時の記録が表記の本である。ここからはイタリア南部問題、そこで生きる民衆の息づかい、古代からの風習などがドキュメンタリー風に、しかしデフォルメされて描写されている。ここでも紹介した、飯嶋和一の『具賓童子の島』とも共通する世界である。いや、逆に飯嶋がこのほんを下敷きにしたのではないかとおもわれるようなところもある。なんだか興味津々になってきた。
 ちなみに、後者のプリーモの方は、ユダヤ人狩りでアウシュビッツに送られ生き延びた化学者の解放から帰宅までの顛末が描かれた本。これもおすすめ。
 ・猪木武徳『増補学校と工場』ちくま学芸文庫。原本は1996年刊行の本。労働経済学の観点から日本の人材育成を追いかけた本。未読だったので購入。参考になる。
 ・ハンナ・アーレント『責任と判断』ちくま学芸文庫。毎年、アイヒマン裁判を紹介する。その時に参考になるであろうということで購入。『イレルサレムのアイヒマン』以降のアーレントの思索と講義、時事問題への評論が入っている。アイヒマン裁判は、きわめて現代的な問題であることを痛切に感じる。
 ・マルクス『ゴータ綱領批判』岩波文庫。これも信山社で購入。以前もっていたが処分してしまっていた。ラッサールをちょっと追っかけたので(夜警国家という言葉)、買ってみた。辛辣な表現は大したものだが、社会主義、共産主義でなくとも実現したものが多い。もう一つ興味深いのは、この冊子が書かれた1870年代には限界効用学派が登場していることだ。現代の経済学はこのような社会主義運動やその他さまざまな社会運動との対抗のなかから出てきているという背景まで含めて経済学を理解する必要ありとも感じた。



出戻り非常勤日記 47 投稿者:新井 明 投稿日:2016/10/23(Sun) 12:00 No.1297

 10月も後半。はやいものであっという間に時は過ぎる。いそいで10月前半の日記を書きます。

10月某日
 東京都民の日。
 平日だったら生徒はお休み。でも今年は土曜日なので関係がない。本日は、むすめが病院に行く間、孫2を預かる。使っていないベッドが気に入り、そのうえをステージ代わりにして独演会をする。

10月某日
 久しぶりの青空。自転車で買い物。
 大容量のUSBを買ってきて、分散している過去のデータを保存する。とにかく、かつてのフロッピー、現在のUSBとどんどん進化、いや変化するのでデータ管理をよほど気にしないと、どこに行ったのか状態になる。また、消えてしまうことも起こる。デジタル時代の怖さだ。

10月某日
 好天は一日限り。本日はくもりから雨。
 小石川に出校。1時間のためにでかけるが、効率より公平ならぬ、役割付与がありがたい。帰宅後、孫2のアッシー役をやる。

10月某日
 また一転、暑くなる。
 上智の講義のための資料作り。今年は、杉田先生が参加されるので、全面的に見直しをやっている。もちろん、全く改訂はできないが、これまで惰性だった部分を見直し、順序をいれかえたり、資料の有効性を再確認している。そんな見直し作業で一日使う。

10月某日
 『レインボーニュース』の仕事でインタビューに立ち会う。
 できてからのお楽しみということで、渡辺マリさんの対談相手の名前は明かさないが、有名な女性キャスターといえばすぐにわかるかもしれない。
 生い立ち、学生時代、社会人としてのスタート、その後の展開、偶然がひらく上昇と下降、そこからのリベンジ、長寿番組のコンセプト、秘密、そしてこれからと、興味深い話がすぐ近くで聞ける。役得。とはいえ、これをどう限られた枠のなかでまとめるか、それを考えると面白さと大変さが同時に来る。
 帰宅して、まずは対談のメモを作成する。

10月某日
 我が家のDVDレコーダーがトラブル。
 妻が趣味の宝塚を録画しようとしたらできなくなっている。最初は機器がもうダメになったのかといろいろ試してみたら、接続が悪いということがわかる。接続は先日来のネットの不具合と電話の新規工事のプロバイダーから派遣された人たち(我が家はケーブルテレビ、ネット、電話がセット)がやったもの。
 妻は、ぜひ取りたいと思っていた番組がとれなかったと怒ること怒ること。プロバイダーに電話をして、事情を説明、責任をとれと息巻く。我曰く「クレーマーだな」。妻曰く「正統な要求はクレーマーではない」。結果として、先方が責任を認めた。
 一連のトラブルを見ていて思う。日本の技術や現場がまだらもようになっている。まだ大丈夫というのとこれで大丈夫?という二つが同時に来ている。現場力が日本の強みだったはずだけれどそれは風前の灯なのか。
 もう一つ、女性は強い。いいかげんな対応は許さない。これは女性というより、我が妻の性格か。おー怖わ。

10月某日
 上智二回目の講義。
 四年前の受講生で、今、高校の非常勤講師をやっている元学生が受講に来る。当時は教師になるつもりがなく、教室の後ろの方で参加していただけだけれど、教壇にたって足りないものが見えてきたので、受講したいという。教師冥利に尽きる、ありがたい話。
 これも伝統継承の一つと思う。講義後、杉田先生とともに反省会。いろいろな来歴を聞いたり、現況を聞く。これから参加したいというので、授業記録のメモと感想、コメントを書いてくれれば歓迎と返答。複数の目で講義を評価してもらうというぜいたくな経験ができそうだ。また、後進に役立つような講義をしたいという意欲がわく。

10月某日
 アマゾンから本が続々到着。
 このところ、飯嶋和一、数学の歴史、機会費用論などこだわりや趣味の調査などがでてきて、アマゾンの古本を注文することが多くなった。クリック一つで安い値段で必要な本が手に入る。アマゾン中毒になりそうである。
 それにしても、必要な本がこんなに簡単に安く手に入る。いい時代になった。でも、それに乗れない書店は苦戦をしているだろう。
 届いたのは、ハーバラーという経済学者関係の本。機会費用の渡米ルートの一つにウイーン生まれの彼がいることがうかびあがったためである。今の人はハーバラーという人物をほとんど知らないだろうが、『景気変動論』などは教科書にある例のキチンの波からはじまる景気変動の波を扱った初期の本を書いた経済学者である。戦前は国際連盟の仕事をやっていたことがわかる。戦後はハーバードの教授として活動をしていた。ちなみに、戦前、ハーバラーの『景気変動論』を大学時代のゼミの先生が翻訳をしている。そんなご縁もあり、名前だけはしっていた人物である。
 サムエルソン『経済学』で有名になった生産可能曲線を使った機会費用の説明は、ハーバラーがジェイコブ・ヴァイナーとの貿易論争で使ったものから来ていることが分かってくる。関連して、リカードの比較生産費説の説明を機会費用から行うのはこの論争のなかからでてきたとも分かってくる。
 一つ一つ、パズルを埋めるような作業であるが、これが面白い。どこまでパズルが埋められるか。これからの楽しみ。

10月某日
 孫1の運動会の予定であったが、グランドコンディションが悪く順延となる。
 時間ができたので、前日届いたサムエルソン『経済学』の初版に目を通す。1948年に出版されたこの本、リプリントで復刻されている。結構お高いが、前日の杉田先生たちとの反省会の費用がこの本に化けた。つまり、反省会費用を杉田先生に負担してもらった機会費用分である。
 偶然、20年ほど前に『経済学』の第5版の古本を手に入れていた。それと比較しながら読む。いや、眺める。
 初版では、生産可能曲線は登場するが、まだ機会費用という言葉は出てこない。5版では、登場する。となると、この間の2から4版の間にテキストに登場することになる。5版は1961年刊。この13年間のどこからか。これは調べる価値ありと思う。
 アメリカでは冷戦の開始、マッカーシズムの嵐の季節である。大戦中の知識人の大量受け入れと反共の嵐のなかの知識人としての生き方、アメリカ社会の変貌など1950年代の分析が必要になりそうだ。どんどん広がるが、どこかで収集をつけなければとも思う。まずは、サムエルソンの『経済学』の各年版を所蔵している図書館さがしからだ。

10月某日
 孫1の運動会へ。
 昨年は一日延期だったが、晴天。今年も一日延期だったが、肌寒い日となる。それでもみんな元気だ。
 孫1の幼稚園は大規模で、下手な小学校の運動会並みである。全員リレーや組体操など、昨年、一年後にこの子ができるのかなと思っていたが、リレーもしっかり走り、組体操も下手な男子どもより小さいけれどよほどしっかりしていた。子供の成長、それを促す教育の力を実感する日となった。
 午後は親子競技があるのだが、昼までで帰宅する。寒い。本日の夕食はなんとなべとなる。

10月某日
 老人ホームへ。
 母は元気。季節が変わってきたが、暑くても寒くても、同じようなものを着ている。暑いときはエアコン対策、寒くなると寒くなったで結構厚いものを着る。自宅にいるのと違い、細かい服装調節などまでヘルパーの人にお願いするのは無理。健康管理は行き届いているので、あとはまあ目をつぶるしかない。
 それにしても、個人の趣味かどうかはわからないが、紫系統のものばかり着たがる。としよりは紫がすきなのか。これからちょっと観察してみようと思いながら帰宅。

10月某日
 小石川へ。本日は、マクロ経済の概説。
 レモンの第二部を一時間で解説をしながら読む。第二部は、石油ショック後のスタグフレーションがテーマなので、現代とは状況は異なるが、経済の動きをストーリーとしてよくまとめているなと毎回思う。
 少人数クラスでは、授業観察があった。非常勤講師に対しても管理職が授業観察をする。ご苦労様。受講者4人のクラスなのだが、2人欠席していて、二人を相手にレモンを経済の言葉で読み解くという部分を対話をしながら進める。受験講座なので、ここはセンターによく出るぞなどの情報もいれながらの45分。

10月某日
 上智三回目の講義。本日は、国際理解、国際関係。
 始まる前に図書館に行き、サムエルソンの各年版の所蔵図書館を紹介してもらう。近くだと一橋大学の経済研究所の資料室にそろっている。さすが一橋である。紹介状を発行してもらおうとしたら、一般人でも閲覧可能ということで、びっくり。敷居がたかかった国立大学もずいぶん開かれてきていることがわかる。すぐに行きたいが、なかなか時間がうまくとれそうもないが、存在を確認できただけでも目的は達成。
 講義は、詰め込みすぎ。それでも、国際理解は日本人の視点からか、それとも地球市民としてなのかで簡単なグループ討議を入れることができた。結果は、日本人派が多かったのが意外でもあった。終了後、反省会。

10月某日
 秋晴れ。孫2の運動会。
 孫2は少人数の保育園でお世話になっている。近くの小学校の校庭を借りる予定が、芝生がはげて養生中ということでせっかくの好天なのだが体育館で実施。
 2歳児クラスは全部で14人。ミッキーマウスの衣装を着せられてダンスをやっている。ちょっと似合わないなと思いながら見ている。それでも、昨年はママから離れたがらなかった子が、走ったり、集団演技をしたり、成長ぶりがみえる。
 徒競走の時は、一人一人の園児が園長先生から紹介されている。孫2は、忍者がだいすきな男の子という紹介であった。
 帰宅して、昼食。昼寝。天気がいいので垣根の手入れをする。赤カナメモチはすぐに目をだして大きくなる。だから生垣にはいいのだろうが、管理が必要。ちょきちょき一時間ほど。床屋と同じで、きれいになると気持ちがいい。
 これでもう半月がたってしまった。

 この間に図書館(大学、高校)から借りて読んだ本の一部を紹介しておく。
・ローラ・フェルミ『亡命の20世紀 二十世紀の民族移動』みすず書房。この本、20年前に読んでいるが、あらためて読み直す。ヨーロッパからアメリカへ、知識人が大量に移動した。多くはユダヤ系である。フェルミは物理学者フェルミの妻。物理学と精神分析学が中心の紹介であるが、経済学者も取り上げられている。どうやってリストを作っていったかなども含めて興味深い本である。
・橘木俊詔『青春放浪から格差の経済学へ』ミネルヴァ書房。ご存じ橘木先生の自伝。いろいろなところで書いたものが多く、新発見はないが、多産の理由がわかる。また、教育にかんする思い入れや実践ぶりがよくわかる。「学者になるよりノンフィクション作家になるべきであったとの悔いがある」と書かれているが、本当にそうかもしれないと感じる本。
・東大EMP、横山禎徳編『東大エグゼクティブ・マネジメント』東京大学出版会。東大の研究者たちをインタビューした本。発生生物学や老年学、中国哲学、物性科学など理系、文系の研究者たちの研究への動機、取り組み、成果などが語られている。すぐれたインタビューワーによってそれぞれの学者の魅力が引き出されている。東大にはこんな知性が集まっているんだとあらためにそのすごさを感じる本。腐っても鯛だ。
・渡辺将人『アメリカ政治の壁』岩波新書。リアルなアメリカ政治の分析書。リベラルのねじれ、保守派のねじれが現在の混迷を招いていることがルポを通してよくわかる。
・西山隆行『移民大国アメリカ』ちくま新書。東大政治学のアメリカ分析の本。歴史的な記述でやはり現状の問題点が整理されている本。
・岡本隆司『中国の論理』中公新書。岩波新書で『袁世凱』、『李鴻章』を書いている中国史の専門家の本。中国がかかえる矛盾を歴史的に解き明かそうという本。中国の社会構造、世界観、近代以降の変化と変化しないものなど、現代中国の理解を歴史的においかけた本。面白い。このような全体像をコンパクトに語る本は貴重。
・岡本真一郎『悪意の心理学』中公新書。社会心理学者の悪口、嘘、ヘイトスピーチなどを分析した本。腰巻に出てくるダークな言葉の羅列がすごい。
・堀内進之介『感情で釣られる人々』集英社新書。宮台真司の弟子の社会学者。若い研究者の本。印象が残らず、あまり感心せず。
・井上智洋『人工知能と経済の未来』文春新書。SFCから早大政経の大学院に進んだ若手研究者の本。飯田泰之さんたちのグループのようだ。これも印象が残らず、あまり感心せず。
 これだけあげてみると、新書が玉石混交であることがよくわかる。それでも岩波新書や中公新書は健闘していると思う。若手は、これからが勝負というところか。



出戻り非常勤日記 38 投稿者:新井 明 投稿日:2016/06/04(Sat) 21:44 No.837

5月某日
 自宅のリビングのドアの調子が悪く、Do-It-Yourselfをすることになる。
 原因は、長年開閉をしていて戸車がすり減ってしまったことで、戸車を変えればよいだろうということで、近所のホームセンターに出かけるが同じものがなく、何軒か探し回る。それでも見つからず、ついに職人の人たち向けの専門店に飛び込む。ここでもいろいろ探してもらったが、メーカに問い合わせてくれることになる。
 専門店は町のホームセンターとは比べ物にならないくらい、部品などがそろえてある。これでは町の個人商店などは対抗できないだろうなと思う。駐車場には工事クルマばかりでちょっと違う世界に迷い込んだ感じだったが、これも社会勉強と思う。
 部品が取り寄せられたら、挑戦だ。

5月某日
 小石川に出講。
 昼に学校に着き、昼休みにはコーヒーを入れて「新井コーヒー店」を開業する。これは非常勤教員時代からの風習。先輩の非常勤の先生がコーヒーを時々入れてくれて、私たちにふるまってくれていた。そのあとを引き継いだというわけである。
 インスタントでも、コーヒーメーカでもなく、ペーパーフィルターの手作業でコーヒーを入れてゆく。この間合いや香りを楽しむ。あわただしい学校だが、少しはこんな余裕も必要と思う。
 ただ、中学の担任になっている先生は、昼休みは給食指導があり、コーヒーも冷めてしまったものを後から飲むことになる。昨年まで中三担任で、今年から四年生(高校一年生)に持ち上がった先生は、顔つきが温和になった。中学生の指導はそれだけ大変だったんだとコーヒータイムに改めて思う。

5月某日
 一日都内某所で会議。
 結局、私は何も貢献しなかったなという思いで、終了。でも、こんなロートルを引っ張り出すのが悪いのだと納得する。それでも、若手の研究者たちがしっかり仕事をやっているのを見ていると、リタイア時期だなと思う。

5月某日
 本日は、孫2のベビーシッター。
 孫2の母親と我が妻は二人で宝塚歌劇を見に行った。孫2の父親は会社の仕事の延長のお付き合いででかけて留守。そこでジジの登場となったわけである。
 子供は外に出すに限ると、お砂場セットをもって散歩に引っ張り出す。暑い日だったが、けなげによく歩いて、近くの団地の公園に到着。そこで砂遊びをさせて、家に戻る。途中で図書館の脇を通ったら、ここに行きたいと言い出す。保育園で来たことがあるらしい。早く帰りたかったが、行きたいというのだから付き合う。絵本を出したりして結構楽しそうだった。図書館から自宅まで、抱っことか、もう嫌だと駄々をこねるかとおもったが、帰りもけなげに歩きとおした。
 帰ってから、昼を食べさせる。変わった子で、甘いものが嫌い、お米やパン、うどんなどが好きということで、本日の昼はうどんを食べさせる。食べて少したったら眠そうになり、横にならせたら、寝てしまう。
 こどもは紫外線をあてて、やりたいことをやらせておけば、あとはコトンと寝てしまうと西原理恵子のエッセイにあったが、本当。そうこうしているうちに、二人が帰宅。べビーシッターは無事終了。
 ああ疲れた。

5月某日
 本日も、ベビーシッター。孫2の母親が買い出しにゆく間、面倒を見る。
 住んでいるマンションの近くの公園でブランコや砂場遊びをさせる。帰りにマンション内にあるキッズルームというところで遊ぶと言い出す。昨日の教訓。やりたいことをやらせれば満足するだろうということで、付き合う。30分近く遊んだあとで、帰ろうと言ったら納得して、家まで戻った。かなり時間がたっていたので、孫2の母親は心配していた。
 なにしろ、携帯電話をもっていないので、連絡のつけようもない。でも、これでいいのかもしれないと思う。

5月某日
 銀行に税金の払い込みに行く。
 社会復帰訓練の一環。税金の管理などはほとんど妻任せだった。昨年から少しずつ自分でも管理をはじめたが、天気がよかったので自転車で銀行まででかけて払い込む。自動振り込みにもできるのだが、そうすると関心をもたなくなるわよと妻。したがって、窓口での手続きとなる。
 今回は、それほど混んでいないのでスムーズ。窓口の女性から外貨預金のパンフレットを渡される。渡すとき、窓口女性はちょっと恥ずかしそうに「渡すようにと言われていますからどうぞ」といった。我々世代がターゲットになっているということなのだろう。

5月某日
 急に思い立ってヘッドフォンを購入。
 仕事をしながら音楽を聴いていることが多い。いつもはスピーカーを使うのだが、なんだかヘッドフォンを使いたくなった。むかし深夜に稲荷ずしを食べたくなったケイコさんのCMがあったがそれに近い。
 アマゾンに注文。高いのから安いのまであったが、当然リタイア人間は安いのを選ぶ。とにかく送料無料で翌日に届く。これでは町の小売店は対抗できないと思いつつ、便利で品数豊富な店を選ぶ消費者はエゴイストということになろうか。

5月某日
 都立武蔵高校に高橋勝也先生を訪ねる。
 高橋先生の転任された武蔵高校は我が家から自転車で15分ほど。わが娘、孫2の母親の母校でもある。本日は、高橋先生の授業案に関する相談。アベノミクスにおける黒田緩和をどう教えるかを一緒に考える。ここでは期待とインセンティブをどう理解し、どう授業に組み込みながら、概念を押さえて現状分析の力にしてゆくかが問題になりそう。
 時間軸をいれた経済理解というのは塙先生の現在価値の授業案(アリとキリギリス)が最初だと思うが、期待をいれた授業案はまだ取り組まれていないので、今後の展開をまさに期待したいところ。
 前日に注文したヘッドフォンが到着。コスパを考えると十分満足。でも、すぐ飽きるだろうな。

5月某日
 注文していた戸車が届く。
 さっそく、二人でドアを外し、戸車を付け替える。ガラスの引き戸なので重いのが原因だったのだろう。とにかくすり減っていた。
 10年以上たつと、メーカでも同じものをつくらなくなっているので、変なところが出っ張っていて大丈夫かと思ったが、なんとか元に戻った。家電製品などは古いものは部品がなく廃棄されるものもあるが、内装品なども同じ運命なのかもしれない。長期に住み続けるというコンセプトがない日本の家屋の宿命でもあろう。

5月某日
 老人ホームへ。本日は風呂上りだった。
 ホームでは隔日にお風呂がある。車いすの老人をお風呂に入れるのは大変な重労働。それにお風呂に入りたがらない老人も結構いるようだ。母もその一人で、そんな入居者をなだめすかしてお風呂に入れるらしい。それでも風呂上がりで気持ちよさそうであった。
 これが家庭介護だったらと思うと、ちょっとぞっとするし、ヘルパーの仕事の大変さを感じる一日だった。

5月某日
 小石川へ出講。
 教育実習がはじまっていて、本日は、二人の学生が見学に来る。受験講座なので役に立たないよといったのだが、小石川にいった年に教えた生徒なので懐かしいということで来たらしい。「レモンと株式ゲーム」はやらないんですかというのが彼らの最初の言葉。一年間経済を教えた学年なのでこの二つの印象は強いのだろう。
 本日のテーマは社会権と新しい人権。そのまえにオバマ広島演説について聞いてみた。新聞には英文が載っていたのに読んだという生徒がいない。受験生なんだから、そのくらい読めよといったが、かなり優秀な生徒でもこういう実態。とても残念。
 授業の本論である、社会権は福祉や労働問題とセットで話したいところ。とはいえ、受験知識の確認と、問題意識の啓発、大学で学ぶ内容への架橋など多くのねらいを同時に達成することは難しい。たんたんと制度や判例の説明で終了する。まだ工夫がたりないと反省。
 学校の図書館から、新着の新書を何冊か借りてくる。なかでも、吉見俊哉『「文系学部廃止」の衝撃』(集英社新書)、と室井尚 『文系学部解体』(角川新書)の二冊が同一テーマで結論は同じなのだが、東大と横浜国大教育系の違いが出ていて面白い。特に室井本は、廃止されるゼロ免コースの教員なのでリアルである。経済系も簿記学校でいいじゃないかという流れも強い。経済学もその真価が問われる時代に来ているなという思いが浮かぶ。さて、われらが経済教育はそのなかでどんな貢献ができるだろうか。

5月某日
 安倍首相、消費増税延期を表明。
 目先の選挙のために、「絶対にかえません」という約束が簡単に破られる。政治の言葉がインチキなのはわかっているとしても、それにだれも異議を唱えない自民党の政治家ってなんだろうと思う。とはいえ、民進党だって消費税の延期を主張し、その間の財源は国債でなどと言っている。これもなんだかねということになる。
 井堀さんではないが「消費増税」が「経済学的に正し」くとも、政治の世界で翻弄されていると思わざるをえない。
 政治家の劣化が進んでいるが、それを支持しているのは国民だから、われわれの劣化が進んでいるということなのだろう。そのなかにもちろん、私もいる。



Re: 出戻り非常勤日記 38 yokoyama - 2016/10/23(Sun) 03:11 No.1296

拙著『マーケット進化論』がご期待に添えず、にもかかわらず、ご教示ありがとうございます。

横山



出戻り非常勤日記 46 投稿者:新井 明 投稿日:2016/10/02(Sun) 17:40 No.1294

 9月後半は、出戻りにしては多忙な半月であった。その記録。

9月某日
 久しぶりにコンサートに出かける。
 ネットラジオを聴いていたら、素晴らしいマーラーの演奏があり、それがエリアフ・インバルの演奏だった。恥ずかしながら、彼が東京都交響楽団で長く指揮をしていたことを知らなかった。80歳になるというので、一度は生で聞かなくてはということで席を確保した。
 会場は東京文化会館。これも久しぶりである。
 曲目は、グリンカ、プロコフェフのピアノ協奏曲2番、バルトークの管弦楽のための協奏曲。最初のグリンカから、いいノリの演奏。オーケストラとの信頼関係があることがわかる。
 のけぞったのは、プロコフェフ。この曲、はじめて聞いたのだが、第一楽章から長いカデンツアがあり、それがすごい。ロシア生まれのアンナ・ヴィニツカヤというピアニストだが熱演。これが作品16というのもすごい。バルトークもよかった。
 得をした気分。ただし、座った場所が悪かったのか、音響はいまいちで、それが残念。でも文句は言うまい。

9月某日
 授業見学のために三浦へ。
 陰謀会議(賢人会議)のメンバーである金子先生の授業を見に行く。
 京浜急行は一番前がクロスシートなので、電車でGOの雰囲気で三浦まで。今にも降りそうな天気だったのが残念。
 金子先生のつとめている農業高校を見学。いいなあという風景であり、実習授業である。校内に牛が二頭。牛舎から外に出されてその間に牛舎の掃除などをやっている。花の植え替えなどもやっていた。
 本題の金子先生の授業、のけぞってしまった。
 生徒との関係ができている。前日のインバルと都響の関係かな。もちろん、多様な生徒がいるのでそれぞれなのだが、とにかく全体としては金子コンダクターの指揮のもと、めいめい勝手でありながらしっかり参加している。
 もう一つ、内容にのけぞる。面白い。何回かの会議を経る中で、どんどん進化しているという感じ。二つの生徒会選挙を通して、現状の多数派に流れるか、時間軸を考慮に入れて未来の若者にかけるかというシミュレーション。
 丁寧にすすめていたので、1時間ではおさまらなかったが、続編での生徒の反応が気になる授業であった。
 終了後、久里浜にでて反省会。おいしくてリーズナブルなお寿司屋さんであった。

9月某日
 ネットの修繕にプロバイダーから人が来る。
 はしごを使うので、垣根のカナメモチを切る。これつい最近きったはずなのだが、強い、強い。すぐ赤い葉を出して大きくなる。
 ついでだから、工事の場所以外もきってゆく。頭とおなじで、散切りでもさっぱりする。
 工事は簡単に終わったが、どうもネットが切断してしまうのは、ケーブルテレビなので、我が家近くの加入者の受像機に古いものがあり、そのノイズが逆流してネットを妨害しているらしいとのこと。
 機材は新しくなったが、原因がつきとめられるまでは中断することがあるかもしれないと言われて、なんだよという気分ではある。まあ、デジタル時代の副作用としてがまんするしかないのかとも思う。
 雨の中、原因がどこにあるかを探っているクレーン車が家の外を回っていた。彼らはそのためだったのだと気が付く。大変な仕事だ。

9月某日
 寺子屋開催の日。
 本日の寺子屋は篠原先生がいらっしゃることになり、陰謀会議は12時神保町集合となる。休日だがやっている古本屋もあり、何冊か100円本を仕入れる。昼は、ソバ屋。座り食いの店だが現代のファストフードである。
 寺子屋篠原ゼミは、受講者6名。贅沢な講義を受けることができた。
 経済学のイロハ部分から、ミクロ、マクロのエッセンスを2時間、たっぷり聞かせていただいた。記録はネットワークのHPにアップ予定。
 終了後、反省会。一日よく勉強した。

9月某日
 休日。また、ネットが不安定になり、プロバイダーから人が来る。三度目になる。機器は問題なしということ。やはりノイズが原因らしい。相変わらずクレーン車がまわっている。
 篠原先生の講義メモを起こす。

9月某日
 雨の中、木村雄一先生のお話を伺うため日大商学部まで伺う。
 木村先生はLSE関係の経済学者の研究家である。経済教育学会でご挨拶をして、無理に時間をとっていただき、私の質問に答えていただくことになった。
 質問は、オーストリア生まれの機会費用の概念がどうしてアメリカに渡ったのかということで、そのキーパーソンに木村先生が研究されているロビンズがいるのではという内容である。
 答えは、ロビンズサークルは一つのルートであり、ほかにも可能性があるということで、何人かの経済学者やそれにかかわる文献を紹介していただいた。
 また、ある概念は、出す方と受け入れ側の両方を見てゆく必要ありということで、アメリカの経済学の教育に関していえば、サムエルソンが大事だろうけれど、ナイトやガルブレイスなども注目してみるとよいとのアドバイスもいただいた。
 1時間ほどの質疑であったが、成果がたくさんあった。思い切ってコンタクトを取ってよかったなというのが感想。
 これから、昔読んだ本や文献を整理して、ある程度の見通しを立てて行ければと思う。

9月某日
 『レインボーニュース』の取材のため。授業見学に名古屋まで。
 今回は中学校。途中新幹線で、辻善之助『田沼時代』岩波文庫を予習として読む。この本、大正時代に書かれた本だが面白い。田沼再評価の原点になる本だと感心。
 名古屋駅在来線ホームでで「きしめん」を食す。うまい。
 学校はJR駅から歩いてすぐのところ。大きな団地の近くにあり、学区も広く1学年8クラスある大規模校だそうだ。
 授業は、二年歴史の時間。江戸時代の改革をとりあげて、その経済的な意味を、だれにとってプラスなのかマイナスなのかを考えさせ、改革のスローガンとどの指導者が一押しなのかを理由とともに考えさせるという、歴史と経済を融合させた結構高度な授業である。
 ここでも、先生が生徒をしっかりつかんでいる様子がうかがえた。
 生徒も取材陣が何人かいて最初は戸惑っている様子だったが、だんだんのってきて、グループ学習では、いろいろな声が聞かれた。
 授業内容は、11月末発行の『レインボーニュース』でご覧あれ。
 授業後検討会。そのあと、すぐに帰宅。夕食までに帰ることができた。

9月某日
 小石川は行事週間なので講師は自宅研修。
 やっと一息つける。授業記録をまとめたり、本を読んだりの一日。閑居の日。

9月某日
 陰謀会議(賢人会議)メンバー杉田先生の授業見学に習志野まででかける。
 杉田授業ものけぞった。
 ここでも生徒をしっかり把握している。クラス経営と授業が一体化しているのに驚く。私など、自分のクラスで授業をやるのが苦手だった。生活指導でやいのやいの言うというフォーマルな人間を演じているのに、授業ではリベラルなことを語る、そのかい離に恥ずかしさを覚えて、クラスの授業はいやだったのだ。
 そのかい離がないのが杉田授業の特色。
 あとで、「高度な内容を小学生的な手法で説いている」と杉田先生にはメールしたが、まさにそうだと思った。
 授業内容は、経済的な見方を確認したうえで、選挙の現状を見る。その結果がどうなるかをシルバー民主主義という概念でくくり、その背後にある世代間格差に気付かせ、選挙制度の枠組みの問題をどう動かしてゆくのか、動かせないとすると突破口はどこにあるかを考えさせるという構成である。
 こんな授業を高校1年生がしっかり受け止める。やっぱりのけぞるなあ。
 授業後の検討会でもう一度のけぞった。金子先生の生徒観察が鋭い。すぐれた授業者はすぐれた授業観察者であるということなのだろう。
 放課後は、習志野で懇親会。

9月某日
 孫1が来宅、老人ホームに連れてゆく。
 母は、孫(ひ孫)1がホームに来るのがとても楽しみ。大阪生まれの孫1は大阪文化を受け継いでいるのか、人懐こく、ホームのほかの入所者からも歓迎される存在。芸は身を助けるという感じである。
 ただし、今回は、ホールに男性が多かったせいもあり、かつてのような歓迎ぶりではなかった。高齢男性は孤立しているというが本当。
 女性軍は、小さな子が来るとことのほか喜ぶのだが、こんなところにも性の違いか、ジェンダーなのか差が出てくる。
 午後は、孫2家族も集まり、にぎやか。

9月某日
 休日。家で授業準備など。
 連日の外出で、私としてはオーバーワーク。骨休めの一日。

9月某日
 二週間ぶりに小石川へ。
 4名クラスで1名欠席なので、3名相手の授業。
 一時間でレモンを読み、その内容を教科書に即して解説。受験知で細かい暗記より、こちらのイメージつくりの方がよほどあとあと効いてくるはずと思うが、さすがにこの時点のレモンの授業はずれているかとも思うが、これが私の生きる道とばかり、授業を続ける。
 帰りに図書館から、何冊か新しい本を借り出す。

9月某日
 一日閑居して、上智の授業準備に入る。
 基本はできているが、毎年バージョンアップを試みている。今年は、動き出した学習指導要領の改訂作業に焦点をあてながら、公民科の歴史を押さえる構造にしようと考え、情報収集をする。
 今は、ネット時代なので、文科省のHPから中教審に配布された資料なども見ることができる。便利な時代だが、情報過多で何が問題かがわからなくなる恐れもある。
 時代の大きな流れを押さえる講義にしたいと思うが、うまくゆくかな。
 本日、ネットワークのHPからこの「オープン討論室」に入れなくなってしまった。検索ページからは入れたのだが、原因がわからず。
 このところ、ネット環境の不安定さに翻弄されている。

9月某日
 『レインボーニュース』の取材で長野に。
 今回は、キノコの会社の取材。やはり百聞は一見に如かず、工場でキノコが生産されているようだが、生き物で、どろくさくそのキノコと付き合ってきたので今があるのだという担当者の言葉に感動。
 興味深い話をいろいろ伺うことができた。
 これも内容は、11月末刊行予定の『レインボーニュース』32号をご覧あれ。
 取材を終え、帰宅19時半。夕食を自宅で食べられた。

9月某日
 小石川出講。
 本日は、午後3時間。20人のクラスでは、レモンと市場メカニズムまで進む。高3だとグラフの読み方や注意はしっかり理解できるようだ。
 それにしても、使用している教科書は丁寧によく書いてあるわいと自画自賛。そこは私が担当したところです。

9月某日
 上智授業開始。
 少し早めに出て、図書館により、『サミュエルソン経済学体系』を三冊ほど借り出す。
 この部分は、サムエルソンの経済学観や、アメリカにおける経済学教育に触れている文章が多いので、機会費用論のヒントがえられるのではという思いで借り出した。
 この種の文献は、読むのではなく、関連の箇所を探し出すという読書法になる。はたして成果はあるか。
 今年の登録は59人。昨年が69人からスタートしているから、ちょうど10人減。
 相変わらず、情報が億詰め込みすぎて、90分には入れ込めなかった。
 今回から、杉田先生が聴講。授業記録と感想をメモしていただけるという。ありがたいことだ。
 伝統継承という点ではいよいよ私も大詰めに近くなっているということだろう。
 講義後、何人かの学生さんから声をかけられる。ネットワークでの知り合いの先生の教え子たちである。次世代もしっかり育てなければと思う。
 四谷で反省会。

 予想外に多忙であった9月もこれで終了。よく歩き、よく飲んだ9月だった。

 ちなみに、この間、読んだ本で面白かったのは以下のようなものである。
 ・田中、山口『ネット炎上の研究』勁草書房。これは素晴らしい本だ。ネット炎上の計量分析と文明論的な分析をふまえ対処法まで言及している。二人はともに経済学部の出身。経済学の方法が社会現象にも適用できるという例である。ちなみに、炎上に参加するのは0.5%という数字は衝撃的。情報教育のテキストに使える本だ。
 ・海堂尊『ポーラースター☆ゲバラ覚醒』文芸春秋社。上智の講義でゲバラを紹介しているので手に取った。海堂という作家ははじめて。内容はよくかけている。でも、映画の『モータサイクルダイアリーズ』の方がいいなあ。
 ・門井慶喜『家康、江戸を建てる』祥伝社。江戸時代に関心をもってるので借りたが、これはダメ。内容がゆるい。もっと人物や状況を書き込まなければ。
 ・高島俊男『漢字と日本語』講談社新書。講談社のPR雑誌『本』に連載中から読んでいたので、再読ということになる。ちょっと保守的な漢学者のうんちく本。連載中はよみおとしていたのだが、大岡敏明『武士の絵日記』が紹介されていた。これには共感。
 
 以下は、趣味の機会費用論を考えるうえで読み返した本。
 ・サムエルソン『経済学と現代』日本経済新聞社。この本は、本棚から引っ張り出した。早稲田の山岡先生が蔵書整理のときに好きなのもってゆけということでいただいた本。読み返すと面白い。アメリカの経済学の状況がサムエルソンと同時代的に理解できる。欠点は、古本なので読みだすとセキが止まらなくなるので、マスクが必要なこと。
 ・福岡正夫『経済学の考え方』泉文堂。これも山岡先生本。福岡先生は慶応の日吉で長年経済学を講じていた先生。生粋の新古典派の真髄が出ている本として読み直した。
 ・塩沢由典『近代経済学の反省』日本経済新聞社。これも山岡本。特に、第三章でロビンズを批判している箇所を中心に読み返す。30年前の本だが、批判は生きているだろう。それを正面で受け止める力量はないが、念頭に置きたい批判だ。




Re: 出戻り非常勤日記 46 新井 明 - 2016/10/02(Sun) 17:43 No.1295

訂正:杉田先生の学校は津田沼。反省会も津田沼です。ごめんなさい。



商業高校で経済理論を教えるための工夫 投稿者:弓矢 伸一 投稿日:2016/09/26(Mon) 17:10 No.1292

拝啓 新井明先生、私は三重県立四日市商業高等学校の教員、弓矢伸一でございます。
9月17日(土)名古屋部会で篠原先生から新井先生の活動の一端を紹介されました。
この表題に書きましたように、商業高校の3年生に経済学の理論を教えるためには
どういう実践が良いのか試行錯誤しております。
9月22日の名古屋部会で、アダムスミス、マルクス、ケインズまでの経済理論を
時代順に説明するイラスト教材を紹介しました。
高等学校の社会科や商業科の教科書のどこにも経済理論が記載されていないとの認識
を持っておりますので、敢えて市販の「池上彰のやさしい経済学」から理論解説の
イラストを抜出したことも述べました。
商業科の教科書は経済理論を教える内容ですが、上記3人の理論記載はされておりま
せん。この現実にどのような教材を選択すれば良いのでしょうか、また、どのような
指導法が有効なのでしょうか、ご教授頂けましたら幸いに存じます。
なお、京都学園大学の絹川様より名古屋部会で発表しました私の教材データを、新井
先生に送付頂きますので、ご査収ください。 
今後ともご指導を宜しくお願い申し上げます。             敬 具









Re: 商業高校で経済理論を教えるための工夫 新井 明 - 2016/09/27(Tue) 22:46 No.1293

弓矢先生

 新井@非常勤です。ネット環境が不安定で、返事が遅れたことをお詫びします。
 先生の授業案、イラスト教材も拝見しました。
 また、商業の学習指導要領のなかの「ビジネス経済」の解説、教科書の目次も見てみました。
 これらを調べたり、読ませていただいたりして、先生のご質問は難問だ、と頭をかかえてしまいました。

@基本的に、指導要領の「ビジネス経済」にはびっくりしています。
 これは大学の初年級の経済学概論そのものですね。
 たしかに、「現代社会」や「政治・経済」でも似たような構成をとっていますが、公民科の方は、これらの概念や理論を理解したうえで、現実を解いてみよう(もちろん高校生ですから本当に解けるわけではありませんが)という指向をもって構成されています。
 それゆえに、「経済的な見方や考え方」を育てるということが教科の目標になっています。
 それに対して、「ビジネス経済」も「具体的な経済事象について経済理論と関連付けて考察する能力と態度を育てる」とは書いてありますが、構成や解説を読んでも、それが具体化されているとは思えません。
 これにこだわっていると、ほとんど生徒は内容を十分に理解しないまま、経済学の一知半解な理解で高校を卒業することになりそうです。

A方向は二つ、思想史で迫るか、現実を読み解くか
 先生のイラスト授業案を拝見すると、先生は経済思想史を中心に経済を教えたいという気持ちをおもちかと推察しました。
 その路線をとるのであれば、「ビジネス経済」の枠の中では無理でしょう。かろうじて、第一章の1節の7にある「市場経済と計画経済」の箇所を膨らませてやるしかないと私は思います。それが一つの方向です。
 もし、「ビジネス経済」の教科書を使って、授業をすすめるなら、経済理論をそのまま教えるのではなく、現実の経済問題をとりあげ、それを理解するには、教科書のここの部分が役立つというような、現実読み解きスタイルで進行するしかないのではと感じました。
 これがもう一つの方向です。

B経済史および経済思想史では
 世界史Aの教科書の経済関係のダイジェストと「現代社会」、もしくは「政治・経済」の経済のあゆみの箇所の理解があれば高校生としては十分ではないかと思います。特に、公民科の教科書では、先生が取り上げたいと考えている、スミス、マルクス、ケインズは必ず取り上げられていますので、その点では無理なく授業が展開できると思います。

C事例をもとにした経済学の授業では
 これは難物ですが、日々事例を集めてゆくことが最もふさわしい取り組み方かと思います。例えば、現在、じゃがいもやニンジンが高騰しています。なぜなのか、それを市場メカニズムで解いてみるなどが考えられます。この種の事例のストックを項目別に集めてゆくことが必要かと思うのです。
 事例のストックを使ったうまいテキストはないかという質問をされそうですが、なかなかこれ一冊というのはでてきません。少々古いのですが、伊藤元重さんの本などは、具体例と理論をうまく組み合わせている者の冷夏と思います。吉本佳生さんの本もよく現実と理論を組み合わせていると思います。河原和之先生のネタ本も事例から入る経済教育の例です。その手の現実から入るテキストをさがしてゆくなかで、ストックが出来上がると思います。

D経済学を教えるのではなく経済の仕組みを理解させるのだ
 これは篠原先生の常に言っている言葉です。「ビジネス経済」の内容構成からは、経済の仕組みの理解は生まれないと覚悟を決められたら良いと思います。
 そこから、生徒に必要な経済知識とはなにかが逆に浮かび上がるのではと思います。
 指導要領や教科書の枠組みから、すぐに抜け出すのは容易ではありませんが、先生の健闘を期待します。

E東京での経済学寺子屋に関して
 東京で少人数でやっている経済学寺小屋は、教壇に立つ教員がどの程度の経済学の知見をもつべきか、それを探るための経済学の勉強会です。
 経済をどう教えるかは、部会などでの実践報告で検討してゆくことになっています。名古屋の部会でも、実践例や実践報告を皆さんでたたきあうなかから、使える教材やすぐれた実践がうみだされるのではと期待しています。

Fおわりに
 先生のといかけに直接、うまく回答ができませんでした。拝見した資料のコメントなどは、また別の箇所でコメントしたいと思います。



出戻り非常勤日記 45 投稿者:新井 明 投稿日:2016/09/19(Mon) 09:11 No.847

 なんだかんだといってあっという間に9月も半ば。9月前半の出戻り日記です。

9月某日
 9月になる。
 夕方からNHKへ。通信高校講座の録音。
 毎回、これで最後といいながら、今回も改訂のための録音で出かける。
 事前に原稿を作り、修正を受けながら本番に臨む。慣れている人だと、すぐにスタジオ入りをするのだろうが、読み合わせのために少し早めにでて、ディレクターと読み合わせ。その後、NHKに向かい、スタジオにという手順。
 今回の収録は、企業。音あてクイズや生徒役のアシスタント(彼女は現役の高校三年生)との対話風に話は進む。
 原稿があるので、どうしても不自然だが、原稿があるから、時間内で終わらせることもできる。そのあたりが授業の臨機応変とちがうところ。この放送は、今月下旬にオンエアされるが、いまはネットでいつでも聞ける状態になっている。
 勉強しようと思うと、便利な世の中になった。

9月某日
 ネットワークの理事会に出席。
 理事である大杉先生から、経済教育へ三つの宿題をいただいた。
 一つは、主権者教育への貢献。二つ目は、新しく登場する必修の地理への貢献。三つめは、厳密な社会科学に立脚するのかキッチンサイエンスでいいのかの検討。
 それぞれ取り組みがいのある宿題。最初のものは、中老年陰謀集団(別名賢人会議)でのとりくみがはじまっている。三番目も寺子屋での検討の中からでてくるかもしれない。

9月某日
 東京部会に出席。
 前日の理事会に引き続き。今回は、東京ではめずらしい土曜日開催。京都からこられた先生方も参加。
 夏の教室の総括のあと、授業案の検討を行う。新しく参加した若手による「原子力発電」を巡る授業実践。方法としてのジグソー法、内容としての合意形成が話題になる。特に、合意形成では、テーマ設定が議論になり、なかなか面白かった。
 若者よ、世間を恐れることなく、挑戦せよという感じである。

9月某日
 ひさしぶりに孫1に会いに息子宅へ。
 幼稚園の年長さんになって、おしゃまになった。今の興味はトランプ。一人っ子なので、普段は二人でやっていて、ゲームにならないのだが、今回は5人でやって楽しそう。

9月某日
 小石川に出講。
 久しぶりとはいえ、夏には補講をしているので、それほど間があいたという感覚はない。
 2学期は、経済。本日は、経済的な考え方の箇所。機会費用などの話をする。ただし、生徒は4名。

9月某日
 一日蟄居。
 このところ外出続きで、疲れた。昼寝、夜寝と寝てばかり。その間に、教育法の原稿書きをする。これは、上智の教育法を文章化しておこうというもの。
 経済学寺子屋と同じように伝統継承を念頭に置いた試み。記録を残すことを考える歳になったということ。

9月某日
 老人ホームへ。
 今回も、兄と一緒になり、近くの駅まで送りながら情報交換。母は、今のところ安定しているので、話題は日本史の話。江戸時代の統治機構などの話を聞く。渡辺尚志という一橋の先生の本を読んでみたらとアドバイスされる。

9月某日
 小石川出講。
 台風が接近していて、警報がでていれば午後は休校の連絡があったが、台風がそれたらしく朝、生徒が登校しているので授業ありとのメールが入る。教師だけでなく、生徒もまじめだ。
 授業は、2時間連続の1クラスと、4名の1クラス。計3時間。
 2時間連続クラスは、経済学史までやってしまう。これは受験で出ているよという言い方をしながら、どこまで経済学の面白さを伝えるか、なんどやっても苦労する。
 図書館からまた本を大量に借り出す。

9月某日
 レインボーニュースの秋号の打ち合わせ。
 取り組み始めて5回目になるので、コツがすこしずつわかってきたが、小さな冊子でもやくにたつ情報をいれるために、いろいろ工夫をこらしてゆくところが大変だけれど面白い。
 11月末発送の予定。乞うご期待。

9月某日
 学会参加のために神戸へ。
 少し早めにでて、ホテルに荷物を預け、会場ではなく、映画館に行く。
 見た映画は「シン・ゴジラ」。話題になるだけあり、実に面白かった。
 危機管理の話とも読めるし、原発事故のパロディとしても読める。また、破壊の美学としても読めるし、兵器おたく向けの映画とも読める。庵野秀明のすごさだ。
 庵野の「エヴァンゲリオン」は教材として使ってきた。はたしてこのゴジラが教材になるかという視点も見ていた。このあたりが教師目線なのだろう。
 あと、音楽の伊福部昭の隠れファンなので、映画音楽的にも楽しめた。
 映画をみたあと、学会へ。
 学会では、シンポジウム、懇親会、二次会といろいろ情報交換ができた。韓国からのキム先生ともお話しできてよかった。キム先生は、ネットワークのメルマガを読んでいたので驚き。

9月某日
 学会二日目。
 自由研究で、算数・数学教育について発表。
 分科会が、高大連携だったので、聞いてもらいたい中高の先生方がいなくて残念。それでも、司会の大坂先生や質問してくれた桑垣先生などとも交流ができ、それなりに満足。
 ほかにも、日大の木村先生や新潟大の柴田先生の発表も聞くことができ、有意義だった。
 午後は失礼して、早めに帰宅。

9月某日
 小石川は行事週間になり、授業は10日間お休み。出校せず。
 数学の原稿を手直ししたりして一日自宅にいる。夕方、娘より「仕事おわらないので孫2のお迎えたのむ」の連絡。アッシー爺の出動と相成る。

9月某日
 教育法の原稿などを書く。一日やはり蟄居。借りてきた本などを読む。
 ちなみに、この間に読み散らした主な本は以下の通りである。
 井出栄策『18歳からの格差論』東洋経済。話題の本。生きづらい分断社会を終わらせるとのスローガンがキャッチ−。内容はベーシックインカム論をベースとした再配分論と読んだ。
 倉地克直『江戸の災害史』中公新書。これは面白かった。江戸時代の災害を地域、藩、幕府がどう対応したのかを通して、「徳川システム」の「公共」構造を見てゆこうとする本。新科目「公共」のヒントにもなるし、幕藩体制という江戸時代像への新しい視点も提供しているという感じを持つ。今、はまっている飯嶋和一の小説の理論的な背景なども考えられる本だ。
 松田馨『残念な政治家を選ばない技術』光文社新書。取り組んでいる陰謀集団(賢人集団)の関心から手に取った。期待外れ。投票率をあげるにはマスコミで取り上げればよいなどはたしかにそうなのだろうが、選挙制度まで踏み込んだ問題提起には程遠い。高校の主権者教育を普及するためには、入試問題で取り上げろなども本質的な回答になっていないと思う。
 小林美紀『ルポ看護の質』岩波新書。内容は、想像通りだが、著者小林さんに注目。この方、かつて毎日新聞の『エコノミスト』の編集部にいて、若者の雇用問題に取り組んでいた。そのころ『エコノミスト』を購読していたので、「娘、息子の悲惨な職場」という派遣社員や過労死をまねくようなブラックな労働現場をルポ、特集を組んでいたのを覚えている。その時の編集者である。あるテーマに問題関心を持ちづけ、それを地道に追ってゆく。ジャーナリストとしての活動に頭が下がる。
 深町英夫『孫文』岩波新書。若手の研究者による孫文の評伝。おぼろげながら知っている孫文という人物のルーツや活動ぶりなどが通してわかる。なぜハワイなのか、東京ではどうなのか、現地中国での動きはなどあらためて知ったことも多かった。「稀代のトリックスター」というところが新鮮。対華21か条要求時の中国側の動きなども興味深い。
 村井章介『分裂から天下統一へ』岩波新書。歴史の流れより、この時代の経済、それを支えた度量衡の統一や検地、貿易などに関心。『塵劫記』の背景となる部分に注目した。
 小島寛之『無限を読み解く数学入門』角川文庫
 柳谷晃『時そばの客は理系だった』幻冬舎新書
 吉沢光男『数学的思考法』講談社現代新書
 神永正博『食える数学』角川文庫
 いずれも、数学関係の教養本。学会発表の何かの参考になるかと思って借り出す。きちんと読むのではなく眺める本。これらの本を生徒が結構借り出しているのに感心。ビブリオバトルにも取り上げられた本もある。

9月某日
 ネットトラブル発生。
 ネットが接続できなくなってしまった。これは困った。携帯はもたないで済むが、メールがつながらないと仕事にならない。
 早速、プロバイダーに連絡。何とかしてくれと依頼。今日はみんないっぱいだが、夜までの仕事の間に来るということになる。その間、接続したり、切断したり。
 修繕の人がきたのが夜7時。一時間ほどかかってモデムを変えたり、引き込み線を点検したり。何とか復旧したようだが、まだ不安定なので外のボックスを修繕することになる。これは準備がかかるので、後日となる。
 ネット時代の落とし穴である。



出戻り非常勤日記 44 投稿者:新井 明 投稿日:2016/09/03(Sat) 08:43 No.846

8月某日
 本日は終戦記念日。
 くもり、我が家では気温28度。こんなすずしい8月15日ははじめて。
 終戦記念日と書いたが、終戦ではなく敗戦。でも、敗戦を記念するということはないので、終戦記念日とマスコミ用語を使ったが、落ち着かない。
 7月26日のポツダム宣言発表から8月15日までに起こったことを書き連ねると、敗戦までの指導層の無責任ぶりがわかる。必ず授業で扱うこだわりの箇所だ。
 式典の天皇の言葉と安倍総理の言葉の微妙な差も気になる。
 そんなことを考えていたら、久しぶりに外食でもしたいと妻。記念日だからというわけではないが、本日は外食。

8月某日
 台風接近。孫2が発熱との連絡が保育園よりあり。
 夕方、娘を駅でピックアップして、保育園、お医者さんと回る。熱はあるけれど、悪い病気ではないから大丈夫ですよとお医者さんが言ってくれたそうだ。薬もださないという。こういう時のお医者さんはありがたい。

8月某日
 孫2を一日預かる。
 熱が保育園では預かってくれるレベルに下がらなかったので、我が家が保育園。
 熱がある割には元気で、外に行きたいという。おとなしくしろと言ったってむりなので、様子をみて、散歩に連れ出す。
 さすがにいつもの元気ぶりはないが、それでも健気に歩く。帰宅して、手を表わせたら水遊びをはじめた。すこしやらせたあと、テレビを見せ、お昼をたべさせたら、コトンと寝てくれた。
 起きたらパソコンでYOUTUBEを見せる。今のお気に入りは「ニンニンジャー」で一緒に踊る。この子のどこが病気なんだというところまで回復。
 一日小さな子を預かるとこちらが疲れて、熱がでそうだ。

8月某日
 夏の教室、東京高校がはじまる。
 今年で9回目。私もそろそろ卒業しなくてはという思いがある。
 内容は、大変充実したものだったと思う。リサーチも、実践もほかの研究会などできない、エコノミストと現場のコラボがよくとれていたものだと感じる。
 鹿野先生の講演も、基本をおさえて現状を紹介するわかりやすいものだった。
 篠原先生の歴史講義も、明治初期の経済政策の筋道がはっきりわかるもの。
 当初の目的が達成できていることが実感。
 チラシの配布をお願いした上智の学生さんも来ていた。歩留まりはわるくとも広報は必要だと感じる。

8月某日
 夏の教室、二日目。
 鈴木さんの講義、入試問題と続く。
 入試問題の西村先生の国民所得計算のモデルは、授業で使えるぞと思う。
 大竹先生の講演は、事例は何回か伺ったものだが、話し方、運び方が格段にうまくなっている。テレビ出演の効果は大きいななどと失礼な感想も抱く。
 大竹先生とは、事前の打ち合わせでの雑談でも、役立つ情報を教えていただいた。それ質問してもよいですかと聞いたら、準備がないからNoと言われたが、個人的にはありがたい情報だった。
 中川先生の「中川クン」「中川少年」の話で、無事終了。
 充実の二日間だった。
 終了後、教職に就いた上智の卒業生と納め会。金子、杉田両先生にも参加してもらい、両先生のエネルギーとパワーを注入してもらう。

8月某日
 夏の教室の記録整理。
 ちょうど生徒が授業ノートを整理して、頭に入れるのと同じ作業。資料とメモを見ながら、文章にまとめてゆくと、時間はかかるが勉強になる。

8月某日
 夏の教室、中学の初日。
 東京は台風接近で、大雨、大風。
 自宅を出るときに、コートと濡れてもよい靴をはき完全防備に近い形で出かける。
 会場について、着替えて準備。記録係なので気持ちは楽。
 こんな天気だと欠席者が多いかと思ったけれど、ふたを開けたら100名以上の参加者があり、日本の先生のまじめさがよく出ている。
 このまじめさが裏に出ると、頑張りすぎで燃え尽きたり、指導のし過ぎで問題になったりなどになるのかと思ったりする。
 講義は順調。ただし、質問がほとんど出ずに、淡々と進む。これはもったいないと思う。

8月某日
 夏の教室、中学二日目。
 昨日の反動もあるのか、本日は少ない。
 高校入試や教科書分析、実践紹介など、貴重な報告がたくさんあるのに大変もったいない。日程と気候にやられたなという感じである。
 最後の新聞を使ってのワークショップもしっかり取り組んでいて、もう少し人数がいたらいいのにな、と思う。
 新聞の教材化では、どの記事を選ぶのかにそれぞれ個性がでていたようだ。また、記事を出発としてひろげるかたちで教材をつくるか、それとも解説記事をよみとくような授業展開にするかで二つの取り組み方があるということが、先生たちの発表からわかった。
 ちなみに、私はヘイトクライム事件の記事から、いのちの授業(いのちの値段)を構想したが、これは飛躍でありすぎたようだ。

8月某日
 中学の記録を整理する。
 午後は、ホームへ。兄と一緒になる。
 「息子二人が来てくれるなんて幸せだろ」と私。母は、特別に反応は示さなかったが、たぶん、こころのなかではにやにやしていたのではなかろうか。
 にわか雨で豪雨となり、クルマで兄を駅まで送るついでに情報交換。今読んでいる、飯嶋和一の本をめぐって、島原の乱や江戸初期の位置づけなどを質問する。彼は、元日本史教師だったので、結構的確に回答してくれる。また、芋づる式の読書がはじまりそうだ。

8月某日
 小石川に出講。夏の補講である。
 非常勤講師が補講をやるのは異例のようだが、勝手知ったる学校なのでやらせてもらっている。事務から、「交通費が出ないんですけれどいいんですよね」と聞かれた。
「まあ、趣味ですから」と私。別に、教師のかがみなんてことはいいません。
 出席者は一ケタだけれど、理系で選択授業が取れない生徒が半数いて、なかなかしっかり聞いてくれる。聞き手がよいとこちらも頑張るという感じで、3時間楽しくやる。
 教師百まで授業忘れず、か。

8月某日
 小石川夏の補講2日目。
 水道橋で、ビッグイッシュー販売のおじさんと久しぶりに会い、この間の4冊を購入。
 講義は、前日と同じで快調。日本経済の諸問題を語る。労働も、福祉も彼ら彼女らの直面するリアルな問題。「受験勉強からもしっかり世の中のことが学べるんだ」と言ったら、うなずいていた。
 本日、小石川の図書館より新書を9冊ほど借り出す。借りた本は以下の通り。
 宇野重規『保守主義とは何か』中公新書。リベラル派が保守主義を論じた面白い本。
 伊藤元雄『元老』中公新書。京大政治学がとらえた政治史。大隈の対華21か条の失政と元老の動きが興味深かった。
 西田武臣『ペリー来航』中公新書。当時の絵画などを豊富に紹介した生活史的歴史像。
 立山良司『ユダヤとアメリカ』中公新書。ユダヤ人とは何かの定義と、ユダヤ教が三つの流れにわかれているなど参考になった。世界で1400万人のユダヤ人の影響力の大きさよ。
 神田千里『島原の乱』中公新書。
 外山幹夫『長崎奉行』中公新書。この二冊は、飯嶋和一の小説の背景を知るための本。島原の乱はキリシタン弾圧からはじまったという見方は半面しか見ていないということがわかる。そもそも、天草四朗なのに島原の乱とは変じゃないかと思わなくてはいけないのだ。
 稲葉振一郎『不平等との闘い』文春文庫。ピケティ本から生まれた、結構しっかりした本。稲葉氏は現在日経新聞の「やさしい経済学」に不平等論を執筆中。
 宮下喜久郎『ベネチア』岩波新書。ベネチアに旅をしたので、その思い出の確認。
 池内了『科学者と戦争』岩波新書。日本も産軍複合体がでてくるか。その時の科学者の動きはモラルだけでは済まないはず。広島大学が大学として軍事に関するひもつき研究費には手をあげないというのは、見識。
 今回は、中公新書の勝利。いつも思うが、この本の配列から見て、この人は何に興味があるのだろう。

8月某日
 飯嶋和一『出星前夜』読了。
 島原の乱のイメージが変わった。飯嶋は素晴らしいが、欠陥というか、鼻に突く構図もわかりかけてきた。だから、これだけの作家なのにあまり話題にならないのだろうと思う。
物をかくというのは難しいものだ。

8月某日
 休日だが、都内某所で会議。
 一つの文書をだすのに、こんなに検討するのだという記録になろう。部屋のエアコンが寒くて難儀。

8月某日
 一日家で仕事。
 本日は、二学期の授業のテキスト作り。昨年のものを見直してバージョンアップを目指す。結構おもしろい作業で、一歩も外に出すに過ごす。

8月某日
 台風直撃の予定だったが、東京はそれてくれたようだ。(その分、岩手や北海道は大変な思いだった。)
 前日の仕事の続き。少し工夫して、補説でカーブを投げてみようと4つのテーマ(思想家と経済、ミクロ経済の考え方を活かす、アベノミクス総括、文明論的に現代を考える)のプリントをつくる。授業で説明などしなくとも、受験生がこんなカーブに興味をもてば成功。打ち返してくれればもっとよいが、そこまでは期待しない。

8月某日
 台風一過。ひさしぶりの青空。湿度も下がり、快適な一日。
 午前中は、妻と買い物。母が秋に着るものを購入。
 午後は、ホームにそれを持参。
 これで8月も終了。夏の教室で名古屋に出ただけで、旅行も家族サービスもほとんどしない夏だった。退職教員にはふさわしい過ごし方かもしれない。




夏休みの経済教室ありがとうございました。 投稿者:力丸  剛 投稿日:2016/08/20(Sat) 13:01 No.844

夏休みの経済教室ありがとうございました。
8月18日(木)の『夏休み経済教室』での塙先生の発表について、お願いします。
私は、「電車の運賃が、需要と供給という市場で決まるなら、鉄道会社からすれば,利用が多い朝や、夕方の料金を上げ、また、利用の少ない昼の運行本数を減らすなどすれば効率的だよね(悪徳独占鉄道社長!?)。しかし、例えば、これをやられたら高校生は、どうなる?大変な負担になるよね。収入のある大人だって大変だ。公共性の高いものにおいては、国民生活の安定のために効率と公平はいつもバランスを考える必要があるね。そのいい例が、学生用の定期だよね。大人と同じ料金だったら「それ不公平〜」という声が聞こえてきそうだ。」
と教えてきましたが、今回、手鉄道について規模の経済から効率性に触れられていたのは、私には、今までになかった捉えで新たな視点を授かることができました。このように、優れた「見方や考え方」を従来のそれに重ね合わせることで、「見方や考え方」がより成長し、深い学びが達成されていくのではないでしょうか。
一つだけ教えてください。「効率性と公正(公平性)」のように、書かれていましたが、私は、対立から合意に至る鍵は、「効率と公正と公平の調整にあるんだよ。」と従来教えてきましたが、公正と公平を併記するなどまた、何度か同じように説明されていたように思いましたが、この点についてお願いします。
 














こちらこそ、ありがとうございました 塙 枝里子 - 2016/08/23(Tue) 23:25 No.845

先日は発表をご清聴いただき、またコメントと質問を頂戴し、誠にありがとうございます。今回の実践報告は公共料金を切り口に、経済学の基本的な見方・考え方(効率性と公平性)を通して政府の役割や失敗まで考察させることがねらいでした。自身には背伸びした内容でしたが、先生に噛み砕いて考察いただき、光栄です。
さて、ご指摘の通り、今回の発表では「公正」と「公平」を区別して用語を使用しておりません。なぜなら、経済学ではefficiency(効率性) なのか、the others(その他)なのかで議論されることが多く、今回の授業開発の出発点がefficiency(効率性)の観点にあったためです。先生がご指摘されているように、教育の文脈においては通常、区別して使う用語ですが、少々乱暴ながら区別せず用語を使用しました。(実は、この点、経済教育ネットワーク東京部会でも議論があり、「公平」よりも「公正」の方が先生方には馴染みがあるというご意見も頂戴し、このような運びとなりました。つまり、経済学では公正性、公平性はあまり区別して使われていないようです。ちなみに、公共というとまた定義が難しく、主題である公共料金の定義は加藤一誠先生のコメントにある通りです。)
まとめると、経済学では「公平」と「公正」はあまり区別して使われないが、学習指導要領上では「公平」と「公正」は違い、教員にとっては後者を考えさせることが命題であると私自身はは認識しております。以上が回答になりますが、いかがでしょうか。ご質問いただき、自身も理解が深まり有難く思います。今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。

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