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大竹先生の新著『経済学的思考のセンス』 投稿者:TM 投稿日:2007/02/10(Sat) 23:56 No.36

皆様
今週、書店で大竹先生の新著を見つけたので読んでみました。もしかするとこの週末に新井先生が「授業で役立つ本」のシリーズで取り上げるかもしれませんが、とりあえず私の簡単な感想を書いておきます。

大竹文雄著『経済学的思考のセンス:お金がない人を助けるには』(中公新書)
これは本当に面白い本で一気に読んでしまった。この中には学校で使える貴重な材料やヒントがふんだんに詰まっている。ただし、これは見かけによらず経済学の先端的な成果を取り入れており、難しい問題提起をしている本であるともいえる。
実際に、イントロでは小学5年生の「お金がない人を助けるには」という質問に対して分かりやすく答えているところから始まり、最初の1、2章は多くの読者が興味を示す「イイ男や美人」の例、あるいは「ゴルフや野球」の例などを使って、人が金銭的や非金銭的なインセンティブにどう反応するか、また何が原因で何が結果かについて経済学的に「センス」のある話しを興味深く提示しており、一見するとやさしい経済学の入門書で、少なくとも部分的には小中高のレベルでも参考書として使える内容のように見えるかもしれない。
しかし、次の3、4章と読み進み、雇用や年金に関する制度や慣行を論じるところまでいくと、大学レベルの経済学的な基礎がないと理解が難しくなる。そして、いよいよ話しが佳境に入り、大竹教授一流の「格差論」を展開するところでは議論がかなり複雑で、これまで「大竹説」になじみがなかった読者はおそらくついていけなくなるのではないか(逆にいえば、なじみの読者にはこれほど面白い部分はない)。
もちろんそうはいっても、最終的な結論は分かりやすく納得的で、「(欧州のように)機会の不平等や階層が固定的な社会を前提として所得の平等主義を進めるべきなのか、(米国のように)機会均等を目指して所得の不平等そのものをそれほど気にしない社会を目指すべきなのか」という究極の選択を読者に迫る内容になっており、それが現在の日本政府の基本的な政策の方向性を浮き彫りにしていることは確かである。
つまり、この本全体は非常に興味深い経済学的な分析と内容がふんだんに盛り込まれているが、それをどこまで理解して、どのように使って経済学的センスを磨くかは、読者の経済学の素養や準備のレベルに大きく左右されるのではないだろうか。



上の投稿について Re: 大竹先生の新著『経済学的思考... TM - 2007/02/11(Sun) 00:25 No.37

上の投稿で取り上げた大竹先生の著書はよく見たところ2005年初版で新著ではありませんでした。
また新井先生が「授業で役立つ本」の第一回目ですでに取り上げていることにも気づきました。
大変失礼しましたが、それでも私の感想が何かの役に立てばと思い削除しませんでした。ご了解ください。



Re: 大竹先生の新著『経済学的思考のセンス』 大竹 - 2007/02/11(Sun) 17:29 No.38

宮尾先生、

拙著への書評、ありがとうございました。

ご指摘のように、
私の本は読者の対象を小学生からスタートして
だんだん引き上げていく構成にしています。

すべて同じレベルで書いていくべきか、
ゆっくりと坂道を上っていって、
体力をつけた段階で一気に急な坂道も
上りきるかたちにすべきか、
どちらにしようか、
ということで考えた末、
後者の方法をとりました。
(もとになった原稿をどこまで書き換えるか
という作業量の問題もありましたが)

途中で力尽きる人もいると思いますが、
勢いで読んでしまう人もいるでしょう。
そういう人に専門的な経済学や実証分析に興味を
もってもらえれば、と思った次第です。

高校生が読んでくれれば、
経済学部を目指してくれるかもしれません。
経済学部以外の学生が読んでくれれば、
大学院で経済学を専攻してみたいと思って
くれるかもしれません。
そういうことも目指してみました。

経済教育には、
「経済を学ぶことが役に立つという点を強調する」のと
「単に経済の勉強は面白いことを伝える」
という両面があると思います。

天文学や古生物学の多くは、
役に立つというより「面白い」という側面が強く、
啓蒙書の多くもそういう書き方になっていると思います。

教育という上では、「生きるために役に立つ」
という側面を強調しないとだめですが、
「知的好奇心をもたせる」ための本も
あってもいいのではないか、と思って
この本を書きました。

ところで、同じ中公新書から出ている
梶井厚志さんの
「故事成語でわかる経済学のキーワード」
もお薦めです。

宣伝になりますが、
「週刊エコノミスト」に「よく効く経済学」というシリーズを
阪大社会経済研究所のスタッフで連載しています。

過去の掲載分は
http://www.iser.osaka-u.ac.jp/index.html
にアップされています。

内容は高校生にも理解できると思いますし、
分量も見開き2ページなので授業の題材に
なるかもしれません。

一読頂ければ幸いです。



授業の小ネタ 投稿者:栗原 久 投稿日:2007/02/08(Thu) 16:30 No.34

 2007年2月8日付日本経済新聞「長野経済」の頁に,「初詣での賽銭3割増・県内景気,心理面も明るく」との記事が掲載されていました。
 日銀松本支店の調査では,初詣での賽銭が,昨年にくらべ,30.5%も増加したそうです(1人当たりの賽銭額は108円。昨年は93円)。
 「天候がよかったことの影響もあるが(初詣の参拝客数は,昨年にくらべ約8%増),景気回復が心理面の明るさとなって,賽銭額が増えたのではないか」というのが,日銀からのコメントです。
 ちなみに,一万円札での賽銭は,前年比,なんと59.8%の増加!

 景気動向指数(DI)というのがあります。
 最終需要財在庫率指数や鉱工業生産財出荷指数,完全失業率などが指標に含まれています。
 賽銭額は,もちろん含まれていません。
 もし賽銭額を指標に入れるとしたら,先行系列?,一致系列?,遅行系列?
 



授業に役立つ本 その4 投稿者:新井 明 投稿日:2007/02/05(Mon) 01:19 No.32

このタイトルもシリーズ化したいと思っています。日曜日に1冊づつというのが理想です。

第四回目は、徳田賢二著『おまけより割引して欲しい』ちくま新書です。

著者の徳田さんは、団塊世代、元長銀マンで現在は専修大学の先生をなさっている方のようです。専攻は地域経済論。とにかくよく世の中を観察していて、新書のこの本でもたくさんの事例が上げられて、目の付け所が違うなという印象を受けます。前書きのところにでてくる、制約のなかで満足を求める若者たちという最初から、現代の大学生の行動を「いまどきの若者…」という観点でなく、厳しい制約(お金、時間など)のなかでバランス感覚を持って生きていることが紹介されます。その点で、実務家出身の研究者であり、かつ大学で教えているという著者の経歴がうまく生きている本です。

この本の目玉は、二つあると思います。

一つは、値ごろ感の公式(値ごろ感=価値/費用)という公式を縦横に使い、日常の私たちの消費行動の原理を説明しているところです。その切れ味は、おぬしやるなというくらいなかなかのものです。

もう一つは、先にも書きましたが事例の多さです。例えば、ベストセラー、iPod、駅弁、コンビニでの買い物、カードの誘惑、すし屋の時価、アウトレット、グリコのおまけ、フリーペーパーなどなど私たちが日頃行っている消費活動が分析の対象としてあがってきています。それだけでなく、突然タクシーを使う大学生や電車のなかで化粧する女性なども対象になっています。

サブタイトルが経済心理学となっていますが、経済学の原理をきちんと踏まえていますから、消費行動だけでなく経済全般、さらには人生の行動原理の分析まで拡張できる可能性を持っています。経済学の原理などとちょっと大げさに言いましたが、値ごろ感を支える二つのファクター、価値と費用がまさにそれです。

価値は、効用です。限界効用逓減の法則がミクロ経済学の最初に出てきますが、ここでは効用をいかに高めるかが値ごろ感の上昇に影響します。価値=効用に関しては本書ではその1「おまけより割引して欲しい」で説明されます。

もう一方の費用は、目に見える費用だけではく、目に見えない費用、機会費用と埋没費用です。本書ではその2「棚ぼたの好もしさ」で説明されます。機会費用や埋没費用などの費用をきちんと理解させるべきであるというのは、評者ら(新井)の年来の主張であり、その点ではこの部分はとてもわが意を得たりの部分でした。

その3「うまい、安い、はやい」では、価値と費用の相互関係で値ごろ感が上昇することが説明されます。

このような原理的説明を踏まえて、以降のその4「ベストセラーの秘密」、その5「どうして衝動買いをするのか?」、その6「ついでに買わせるコツ」と消費をめぐる具体例が分析されます。

授業では、本書にでてきた事例をもとに生徒になぜそうなるかを考えさせたり、経済的なものの見方や方法をもっているとこんなに世の中が見通しがよくなるという話の素材に利用することができるはずです。

さて、おまけと割引、どちらを私たちは望むのか?その答えは本書のタイトルに現れていますが、皆さんはどっちを希望しますか? 



授業で役立つ本 第3回 投稿者:新井 明 投稿日:2007/01/28(Sun) 22:32 No.29

第3回は、ピエトラ・リボリ著『あなたのTシャツはどこから来たのか?』(東洋経済新報社)です。

この本は、ジョージタウン大学のビジネススクールで金融と国際経済を教えている、リボリ女史が身近なTシャツを素材として、アメリカ、中国、アフリカの現地取材を通して、グローバリゼーションの多面性をえぐったすぐれた本です。私(新井)が、最近読んだ経済の本のなかでは出色のものとして取り上げたいと思いました。

グローバリゼーションに関しては、世銀の副総裁を経験した批判派スティグリッツ氏と、肯定派バグワッティ氏が対照的な本を出しているように、肯定、否定論が渦巻いているテーマです。

リブロさんは、勤務先のジョージタウン大学でのグローバリズムを告発する集会での「あなたのTシャツはだれが作ったものですか?」という女子学生のアジ演説に触発され、Tシャツが誰によって作られ、それが最終的にどうなるかというTシャツの一生を、三つの大陸をまたにかけて取材をおこなってこの本を書き上げています。その点では、この本はジャーナリストが書くルポのように見えますが、筆者はそれを「人と政治と市場経済の物語」と位置づけています。

経済学は、モデルを作って演繹的に理論を証明したり、多くのデータをもとに統計的手法で自説を証明する方法をとることが多いおですが、筆者の方法は、事例研究、ひとつの素材をとおした物語的手法をとっています。彼女自身が書いているように、この方法は経済学の主流の方法ではありませんが、成功すれば、素材とした人ないしものそのものの本質を見ることができるだけでなく、それをとりまく世界を照らすことができる方法です。この本は、それに成功していると思います。

さて、この本は、大きく4部に分かれています。第一部では、Tシャツの原材料であるコットン(綿)の歴史と現在が描かれます。歴史では、産業革命のきっかけをつくった綿工業の歴史と原材料を提供したアメリカの奴隷制も含めた歴史が取り上げられます。現状では、テキサスの綿農家ライシュ農園が紹介されます。ライシュ農園で作られた原綿は、補助金によって武装されて主に中国に輸出されてゆきます。

第二部は、輸出された原綿が綿布になり、Tシャツとなる製造過程が描かれます。そこでは低賃金を比較優位にした搾取工場の現実が描かれますが、「農村のくらしよりずっとまし」という事実も同時に押さえられています。さらに、搾取工場の告発が逆に底辺の競争へむかう力学も紹介されています。

第四部は、作られたTシャツがアメリカに戻って、消費され、廃棄されてゆく過程が描かれます。そこでは、自由貿易を世界に強要するアメリカのダブルスタンダードが告発されます。しかし、アメリカ繊維産業のロビングによる関税障壁と割り当て制が、本来消滅するはずの生産者を守るだけでなく、意図せざる結果として少数の割り当て国の産業発展に結びつくという複雑な現実も同時に紹介されます。

第五部は、廃棄されたTシャツの行方です。中古品も分類することで、立派な商品になります。レアものは日本などに、大量の中古品はアフリカの最貧国に、衣類にならないものもウエスや繊維に分解して再利用されます。アフリカに渡ったシャツはミトウンバとよばれ、さらに分類されて市場にだされます。その市場は、経済学で言う完全な自由競争市場に近く、需要供給の法則がほとんどそのまま当てはまる世界です。

こうして、Tシャツの旅が終わりますが、ジョウージタウン大学の集会で告発発言をしていた女子大生に対して、著者は「熱意と善意はあるが、なにも分かっていない」と書き、その回答がこのほんであるとも書いています。

告発型のルポ、それを素材とした授業は結構あります。我が国で有名なのは、バナナとえびですが、ナイキのシューズなどの搾取工場のものも結構教室では使われます。

グローバル化の問題に関した、実態をきちんと調べたうえで授業を行うことはほとんど不可能です。そうなるとルポなどの二次資料を用いての告発型授業に傾斜しがちです。この本は、ルポと経済史の記述、さらに経済学の知見とそれをゆがめる政治的な動きなど、グローバル化の多面的な現実を丁重にすくいながら記述がすすめられています。

私(新井)は、この本を読んで、これを授業で扱ってみたいと思いました。たぶん、NHKなどでもこの本を素材としてルポが作られると思います。お涙頂戴でない、悪役探しではない授業をつくるためにきっと役立つ本だと思います。ちなみに、アメリカでは高校の教科書(副読本?)として採用されているそうです。



Re: 授業で役立つ本 第3回 栗原 久 - 2007/01/30(Tue) 20:25 No.30

『あなたのTシャツはどこから来たのか?』,私も読みました。
おもしろい,やられた,という感じの本ですね。
「今日の経営学や経済学の研究では『物語』という手法ははやらない。…今日の研究者はより多くのデータ,より速いコンピュータより洗練された統計的手法を用いるようになったが,反面,自分なりの観察をほとんどしなくなった」。
「農村女性の経済的,社会的解放をもたらすきっかけは,綿工場をはじめとする搾取工場だった」。
「アフリカの繊維産業は,…『バッドガバナンス』の問題に悩まされているのである」。
私にとって,印象的なフレーズです。
それにしても,綿製品をめぐるアルファベット軍団の活躍(暗躍)はすごい。
はじめて知りました。
あれが,自由貿易の国のもう一つの側面なのですね。
多面的・多角的にものをみることの重要性を思い知らされる一冊でした。 



新井明先生の意見が朝日新聞(1/28)に掲載 投稿者:TM 投稿日:2007/01/28(Sun) 17:12 No.28

皆様:
1月28日(日)付『朝日新聞』の「消費者パワー6」で、金融教育の日米比較が載っており、そこで米国では金融機関などがスポンサーとなって高校レベルで将来の金融マンを育てる教育が盛んであることが説明されています。しかし、そのような金融教育のあり方に対して、それはむしろ「社会を行き抜く力をつけさせるため」にあるべきとして、批判的な新井明先生の意見も掲載されています。
なお、本文は以下のURLでも読むことができます:
http://www.asahi.com/paper/business.html



授業で役立つ本 第二回 投稿者:新井 明 投稿日:2007/01/23(Tue) 00:02 No.27

ご無沙汰しています。このページが良いかどうかわかりませんが、中学や高校で授業を作ってゆくのに役立つと思われる本(おもに新刊の新書)を定期的(週1くらいのペース)に紹介してゆきたいと思います。私の主観が混じっていますからそうじゃないぞというご意見の方は投稿していただけるとありがたく思います。

さて、今回は、中島隆信『これも経済学だ!』ちくま新書。

中島さんは、慶応大学商学部の先生。実は、我が家の娘がそこの学生だったことがあり、中島先生(慶応では君)の話は時々でていました。おもしろい講義だといっていましたが、本書のあとがきにあるように、経済学部ならぬ商学部で経済学を教える難しさを突破しなければならない事情があってこそだということがよくわかります。

本書は、5章構成をとっています。1章と5章に経済学的思考とはなにかが簡潔にまとめられています。結論は、経済学は人間が人間らしく生きるために欲望をうまく活用する方法を見つけ出す思考のツールということにまとめられます。社会現象をモラルや法だけで判断したり、見える部分だけで判断して因果関係を逆転させたりせずに、「それはなぜなんだろう」ということをきちんとしたツールを使って考えることが大事だと著者は力説します。高校までの社会科教育のなかで決定的にかけているのが、この「なぜ」を考える教科だとも指摘しています。現場の人間としては耳が痛い指摘です。だから、社会科は暗記科目になってしまうのでしょうね。

1章では機会費用などを紹介しながら、様々な事例を通して経済的思考の応用範囲の広さを印象つけます。

2章以下は、著者がすでに刊行している単行本、『大相撲の経済学』『お寺の経済学』『障害者の経済学』の三部シリーズをもとにして、伝統文化、宗教、弱者を取り扱っています。特に、4章での弱者問題は、当事者としての体験を踏まえた弱者論でもあり、目からうろこの指摘が随所にあります。やさしい書き方ですが、内容的には深いものが提起されています。

最終章の5章では、欲望と経済学が再論されますが、そのなかで経済学では、善悪でレッテルをはらないで、人間の弱さも含めてその行動の背景や原因を探る懐の深い学問であることが強調されます。

この本は、なぜ経済を教えなければならないのかという根本で迷っている先生方、なかなか興味をしめしてくれない生徒にいかに経済は面白いか、役立つ勉強かを印象つけたいと思っている先生方にきっと参考になると思います。

この本で取り上げられている事例を教室で紹介して、生徒の興味をひきつけて授業の本論に入るもよし、論争的問題(身近では、シルバーシートの是非、高度な問題では障害者自立法の是非など)をとりあげてみるもよし、事例をもとに生徒に分析をさせるもよし、いろいろな利用の仕方ができる本だと思います。

私の現在の関心から言えば、この本の1章ででてくる「経済学的思考」が高校までの学習のなかで自然にそだってくるようなカリキュラム(学習指導要領)を作ることができるかどうか、試されているなと感じています。



経済教育インタビューの要旨 投稿者:TM 投稿日:2006/12/07(Thu) 23:25 No.17

皆様
経済教育に関する市川博也上智大学教授(経済学博士)のインタビューの要旨が以下のブログにアップされましたので、ご参考までにお知らせいたします。
http://blog.so-net.ne.jp/miyao-blog
その主要部分は以下の通りです。
『まず、経済学を学ぶことが何の役に立つか分からないことが基本的な問題である。単なる知識の断片的な記憶や理解ではなく、経済社会に生きる自分自身の問題として考えるような教え方・学び方が必要。
したがって、自分の人生設計として、キャリア開発と職業選択、所得と消費、貯蓄と投資、ライフサイクルと年金などのテーマを具体的に考えるための資料や分析方法を提供するように工夫すべきである。それらを数値例などで実感できるような教え方をすれば、生徒は現実の経済に興味を示すとともに、日本の経済の制度や政策の問題点も分かるようになり、経済的な思考が深まる一方で政策的な問題意識も高まるであろう。
次の問題として、よく教科書に見られるように「企業は利潤を追求するため環境に配慮しない」といったような短絡的な企業批判や市場批判は決して現実への理解に役立たない。むしろ特に日本では環境保護が企業にとって最重要課題になっており、官民挙げて環境問題に取り組んでいる現実を生徒にも知らせることが、経済社会と自然環境の関係をより現実的により深く理解させるためにも必要であろう。』
この後にいくつか参考になるウェブページのURLがリストされていますのでぜひブログをご覧ください。
なお、この英語版の部分は、本ホームページの「English」にアップされました。
以上、ご参考までに。



Re: 経済教育インタビューの要旨 TM - 2006/12/21(Thu) 23:51 No.19

皆様
経済教育に関するインタビューの第2弾として、野口旭専修大学経済学部教授のインタビュー要旨が以下のブログにアップされましたので、ご参考までにお知らせいたします。
http://blog.so-net.ne.jp/miyao-blog
その主要部分は以下の通りです。
『野口旭氏は、これまで数多くの一般向けの経済学入門書を書かれているが、その関係もあってここ数年、「首都大学東京」で推薦入学の一環として各学校から推薦された受験生が受講する「東京未来塾」というプログラムで経済に関するセミナーを行っている。
そのセミナーは非常に教えがいがあり、また満足する結果が得られているとのことである。もちろん推薦の対象になった優秀な生徒が入学に必要なので熱心に参加することもあるが、それと並んで教える方法に以下のような特徴がある点も大きいと思われる。
(1)最初に一通りの講義をするが、その際に野口教授の著書『ゼロからわかる経済の基本』(講談社現代新書、2002年)などの生徒が経済に興味を持つような内容の教科書を使う。
(2)生徒をグループ分けして、それぞれ自分たちの興味を持つ経済のテーマ(例えば、政府の役割、社会福祉と税、財政金融政策、デフレなど)を選び研究した結果をグループごとにプレゼンさせる。
(3)高校で教えた経験があり高校生の特性をよく知っているアシスタントが指導や支援を適切に行う。
これらのことは、選抜されたモチベーションの高い生徒にかぎらず、一般の高校生に経済学を教える上でも参考になるであろう。しかしそれでも経済に興味を持っていない生徒を教えるのは容易ではない。一案としては、身近な税金などの問題から入って、財政や年金の問題などといった一般市民として知っておくべき経済問題を取り上げていけばいいのではないかというのが野口氏のサジェスチョンであった。』
参考文献:
野口旭『ゼロからわかる経済の基本』(講談社現代新書、2002年)
http://www.bk1.co.jp/product/2260210
なお、この英語版の部分は、本ホームページの「English」にアップされました。
以上、ご参考までに。



日本金融学会での議論 投稿者:栗原 久 投稿日:2006/12/01(Fri) 09:47 No.11

 11月11日・12日のワークショップの際,弘前大学の猪瀬先生が,「日本金融学会で,金融教育のあり方が議論されていた。金融政策に関する教科書記述に誤りがあるとの指摘が,日銀関係者からあった」との趣旨の発言をされました。
 この件,http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsme/kinyu/prog05s.htmlから確認できます。
 ご存知の方も多いと思いますが,ご参考までに。
  



Re: 日本金融学会での議論 TM - 2006/12/01(Fri) 11:32 No.12

栗原先生、お知らせありがとうございました。
どこにあるかしばらく探したところ、以下に該当の箇所を見つけました。

5.パネル  〈14:30〜17:00〉
(1)日本銀行から見た現状 報告者 日本銀行 湯本 崇雄 氏
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsme/kinyu/pdf/05s/05s116-yumoto.pdf

なお、別件ですが、本日(12月1日)付日経新聞朝刊第ニ部のA25面「私と日経」の欄に、大竹文雄先生が「子供向け記事大切」というコメントを寄せられており、「子ども向けの記事やコラムが他紙に比べてやや手薄ではないか」という注文を付けられています。
以上、ご参考までに。



Re: 日本金融学会での議論 TI - 2006/12/01(Fri) 12:37 No.13

スタッフC

これに関して、一橋大学の小西先生が、パネラーの一人として報告されました。氏いわく「私自身は金融教育に特別な関心を持っているわけではないのですが、教育方法学に関心を持っていることからパネラーを依頼され」とおっしゃっております。教科書や現場の調査も含めて、失礼ながら、専門科学からの指摘。敬服する次第です



Re: 日本金融学会での議論 新井 明 - 2006/12/01(Fri) 18:13 No.14

忙しさにかまけて、書き込みが遅れて申しわけありません。

日本金融学会での湯元さんの発表はこれではじめて知りました。

実は、現在、金融広報中央委員会が『金融教育の実践事例集』を編集中です。それに、高等学校の「政治・経済」の事例で、日銀の金融政策をテーマに書きました。現在の金融政策が、オープンマーケットオペレーションになっていることを中心に授業案を作ったのですが、これが難航しました。

問題になった論点は二つでした。

一つは、信用創造の部分です。最初の私の授業案では、信用創造をロールプレイをさせながら、実感的に理解させようとしたのですが、信用創造の例のプロセスは現実的でないし、それを教えることは誤解をまねくという意見が入り、結局その部分はカットになりました。

もう一つは、金融調節の方法の部分です。ハイパワードマネーを通してのマネーサプライのコントロールという認識で構成したのですが、それは違うということで、湯本さんのレクチャーを二度受けました。直接いろいろ教えていただいて、貴重な体験でした。

その中で協調されていたのは、日銀では、コール市場の金利誘導を通して、中期、長期金利に間接的に影響を与えているのが現在の金融調節であり、大事なのはマネーサプライの量ではなく、金利であるという点を生徒に伝える授業を構成してほしいということでした。

コール市場の様子など、学校現場の人間にとってはなかなか実感をもってわかりにくく、苦戦しましたが、何とか授業案をつくりました。

とっても難しいものになり、3年生に実験しましたが、やはりコール市場での金利の決まり方の部分はわからなかったといわれてしまいました。11月21日に公開授業をしましたが、その部分は抜かして、前半部分をなんとか1年生に考えさせました。

冊子のほうは、来年3月までには完成するはずです。たぶん、私のところだけが異様に難しくなっているのではと心配しています。とにかく、金融は難しいというのが実感です。政策委員の岩田先生は、この授業をうけて将来セントラルバンカーが出るかもしれないと、おっしゃったといわれたそうですが、生活実感とかけ離れすぎているのかな、教育としてはどうなんだろうと少々考え込んでしまいました。

その意味で、日銀、研究者、教師が三位一体で取り組むべきテーマではと改めて感じました。

以上、遅ればせながらの報告です。



Re: 日本金融学会での議論 新井 明 - 2006/12/01(Fri) 18:17 No.15

新井です。すみません。岩田一政さんは、副総裁です。訂正してください。



Re: 日本金融学会での議論 鹿野嘉昭 - 2006/12/16(Sat) 22:18 No.18

 初めまして、同志社大学の鹿野です。遅ればせながら、この問題について私なりの意見を述べさせていただきます。日銀・湯元さんのご指摘のとおり、現実の日本銀行による金融政策運営と中学・高校の社会科の教科書での説明との間には大きなギャップがあります。この事実に対しては、高校の先生方からも時々ご指摘があります。実際、証券広報センターでは毎夏、中学・高校の社会科の先生向けに集中セミナーを開催していますが、2003年のセミナーでは、そういった先生方からの要請を受け、日本銀行の金融政策運営に関する講義を設け、私に講義依頼が来たことがあります。

 それはまた、ある意味で当然の結果ともいえます。といいますのも、日本銀行による金融政策運営は1990年代半ば以降大きく変化しましたが、この点に関する詳細な説明は、大学の金融論のテキストはもとより、日本銀行からもとくにありません。残念ながら、これが金融政策をめぐる経済教育の実態です。「時事問題の解説」で最初に公定歩合や準備預金制度等を取り上げ、その変遷と現在における役割と意義について説明した背景には、そういった事情が横たわっていたのです。

 ここからは、やや我田引水の議論になるかもしれませんが、ご容赦ください。私としましても、そういった事態は早急に改善する必要があると思い、横浜市立大学の酒井先生と共同で執筆した金融政策のテキスト「金融政策」(有斐閣、アルマシリーズ)を2004年に改訂した際には、日本銀行による金融政策手段の変遷や金融調節の実際について詳細に説明しました。その後、時代遅れとなった説明もありますが、日本の現実に即して金融政策を論じた教科書としてみた場合、現時点では、この本の右に出るものはないと思っております。何がしかの参考にしていただければ、幸いです。



経済教育で役立つ本 その1 投稿者:新井 明 投稿日:2006/11/13(Mon) 00:50 No.3

11月11日・12日のワークショップで質問された本を中心に、経済教育をすすめる上で役立つ本を、さしあたり何冊か上げておきます。参考にしてください。ただし、これらの本は経済の考え方を中心とした本で、日本経済や世界経済の動向を押さえた本ではありません。それはまた別の機会に紹介します。また、あくまでも私の観点から評価ですから、いろいろな角度から評価してゆくことが必要と思っています。

1 『レモンをお金に変える法』河出書房新社 1680円 ご存知、佐和隆光先生が翻訳をしたロングセラーの絵本です。ミクロの世界がこんなに自然に書かれている本はないと思います。
2 『続 レモンをお金に変える法』河出書房新社 1680円 マクロ編です。1970年代のスタグフレーションが下敷きなのでやや古いところがありますが、それでも使えます。
3 『世の中なんでも経済学』ワニブックス 1400円+税 NHK教育の番組を基にした本。ただし、きちんと考えて作られたのではないので、内容的にはちょっと不満。ビデオはNHKの学校放送局に問い合わせると、貸してもらえる可能性があります。
4 『経済学的思考のセンス』大竹文雄 中公新書 819円 「お金がない人を助けるとき、どうやって助けるのですか?」という疑問からはじまり、様々な事例を経済学的な思考で解いてゆく本です。ワークショップでの大竹先生のレクチャーを理解するにはこの本から。
5 『美しい経済学』小樽商大高大連携チーム編 日本経済評論社 1300円+税 川瀬先生の札幌旭丘高校などの高校生に大学の先生方が講義した内容を整理したものです。内容はかなり本格的な経済学入門となっています。ほかに、経営学、経営法学もあります。
6 『調べてみようお金の動き』泉美智子 岩波ジュニア新書 780円 小遣いからはじまり、国の財政までお金を切り口にして経済を調べます。総合学習などで参考になります。
7 『経済の考え方が分かる本』新井明他 岩波ジュニア新書 780円 子どもたちが参加したe-教室のやりとりから生まれた本です。機会費用などを噛み砕いて説明しているとともに、裁定取引や比較優位など経済を考える上で必要な概念や考え方を多くとりあげています。



Re: 経済教育で役立つ本 その1 TM - 2006/11/13(Mon) 05:13 No.4

スタッフB

新井先生
大変有益な資料の情報を有難うございました。
amazon.co.jpなどで検索すると、定価より安く手に入る可能性もあるようです。
以下が「レモンをお金に変える法」の例です。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/search-handle-url/index=books-jp%26field-keywords=%E3%83%AC%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%82%92%E3%81%8A%E9%87%91%E3%81%AB%E3%81%8B%E3%81%88%E3%82%8B%E6%B3%95%26results-process=default%26dispatch=search/ref=pd_sl_ov_tops-5_books-jp_9415213_1&results-process=default?tag2=jp-ja-overtur-22

なお、この週末に開催された「経済教育ワークショップ」のサマリーと写真は以下に掲載されています。
http://blog.so-net.ne.jp/miyao-blog



Re: 経済教育で役立つ本 その1 大竹 - 2006/11/15(Wed) 10:28 No.6

新井先生
私の本をご紹介頂き、ありがとうございました。
中高生向きの話題に特化したものも将来書きたいと思っています。



Re: 経済教育で役立つ本 その1 TM - 2006/11/21(Tue) 09:42 No.10

「お金がすべてではないのでは?」にも関連した参考文献:

新井明「金融教育の目標は実社会で『責任ある選択』のできる人間の育成である」
(小見出し:「株式学習ゲームを学んだ卒業生の声」:「金融教育は幅広い領域の教育を含んでいる」:「体験を通して学ぶ生徒たち」:「失敗をさせることこそが生きた金融教育」)
『日本の論点2007』の「投資とサービス:金融教育は必要か」(p. 336-9)に収録
http://www.bunshun.co.jp/book_db/html/5/03/06/4165030600.shtml

これはワークショップで新井明先生が言及された論文で、その一つ前の「金儲け教育は恥ずべき」といった支離滅裂な勢古論文との対比として掲載されている。
なお新井論文に続く編者の解説の中で、米国の経済・金融教育の基準となっているNCEE(米経済教育協議会)による「経済学習のスタンダード」の重要性が指摘されているが、それについては以下の文献が詳しい。

山根栄次『金融教育のマニフェスト』明治図書:2006
http://www.meijitosho.co.jp/shoseki/shosai.html?bango=4-18-419310-2
このウェブページには詳しい目次も出ているが、およその章立ては以下の通りで、この第3章の第1節で「NCEEの経済教育カリキュラム」が詳しく説明されている。
第1章 金融教育とは何か
第2章 日本の学校における金融教育の現状と課題
第3章 アメリカの学校における金融教育
第4章 イギリスの学校における金融教育
第5章 学校における金融教育の創造

以上、ご参考まで。



お金がすべてではないのでは? 投稿者:大竹 投稿日:2006/11/14(Tue) 19:09 No.5

経済教育ネットワークのワークショップで

「中学生に仕事と給料のことを話すと、
仕事をお金だけで考えてしまうようにならないだろうか」

という質問を受けました。

私の経験は逆でした。
スポーツ選手や歌手の中にはどうして巨額の年収を得る人がいるのか、
どうして仕事によって所得が違うのか、を中学生に説明したところ、

「給料がすべてではないのでは?」

という質問を受けました。

それに対する、私の答えです。

「もちろん、給料が全てではありません。

仕事は人々の生きがいでもありますから、
給料だけのために人々は仕事をしているわけ
ではありません。

世の中の役に立つ仕事、
格好いい仕事、
楽な仕事、
健康にいい仕事、
楽しい仕事、
生き甲斐になる仕事、
危険な仕事、
高い技術を必要とする仕事等
仕事には様々なものがあります。

誰も給料だけで仕事を選んでいるわけではありません。
好みもありますし、向き不向きもあります。

むしろ、給料以外の仕事の魅力と
給料の両方を考えながら仕事を
選んでいるというのが本当です。

給料の高さで人の本当の価値を測れる
わけではありません。

様々なことが給料の高さに影響を与えていますから、
給料の決まり方は単純ではありません。

給料の決まり方を論理的に考えて
整理するのが経済学です。」

仕事と給料の関係を考えてみることで
夢だけで仕事を考えてしまったり、
お金だけで仕事を考えてしまうということが
減るのではないでしょうか。



Re: お金がすべてではないのでは? TI - 2006/11/16(Thu) 18:14 No.8

スタッフC

大竹先生から、こうしたご意見がいただけるのは嬉しい限り。ただ、その思いと経済教育の「目標」を取り違えてはならないかもしれません。
「経済教育に逆風が吹いている」趣旨を、経済教育学会のニューズレター、明治図書『社会科教育』の連載で言及しました。「経済教育は金儲け教育であるから、学校教育で扱うことには問題がある」という「経済学者」のことばを暗に批判したものでした。経済教育は、金儲け教育であるはずがありませんし、不勉強のそしりを受けかねないものです。
そこでは、お金のこと、経済のことを考えることは、むしろ合理的に考えていく方法を学ぶことであることを展開しました。ブラインダーを引いたのも、稚拙ではあったかもしれませんが、経済「教育」の「目標」は、単なる経済的見方という道具の取得でも、経済合理性の訓練でもないはず。経済的市民性ということがその趣旨ですが、規範経済学・実証経済学という範疇のみならず、経済的価値を教育の視点からどのように扱うのか、ということも考えていただければと思います。「経済学は科学であるから、価値自由であり・・・」という教育にはおよそ縁遠い言説がまかり通るのではなく、「なぜ、なんのために、なにを、どのように」教えるのか。経済学者ではない、教育を考える人間からは、常に以上の問が沸き起こります。
ハイルブローナー、レスターサロー、ガルブレイスは、MITでの招待会議で、1984年版NCEEのカリキュラムに異議を唱えました。労働経済学や経済史の教員もしかりです。同様の議論が、沸き起こればよいと考えています。



Re: お金がすべてではないのでは? TI - 2006/11/16(Thu) 18:24 No.9

スタッフC

もう一つ、大切なことを忘れていました。
経済の内容、切り口を替えれば、子どもの「給料とお金」「仕事の悩み」は解消されるでしょうか?つまり、経済学習の内容や扱い方を充実させれば、「仕事と給料の関係を考え」ることができて、「夢だけで仕事を考えてしまったり、お金だけで仕事を考えてしまうということが減る」ことになるでしょうか?
つまり、キチンとした「経済の内容」を教えればよいのでしょうか。もしやすると、その範囲は「経済」を超えているのかもしれませんし、「給料の高さで人の価値を測ること」が出来ないことは、「経済の内容」でカバーすることではないかもしれません。

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